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31平均律ギターを大解剖!微分音大実践時代の到来に向けて

やあ、また会ったね??
というくらい、31平均律について記事を幾度と書いてきたけど・・・

31平均律はすでに協和や音律の特性が解明されてきており、今やマニアによって作曲されまくるという実践段階に入り始めています。

しかし、今後31平均律がポップな曲に進出していくためには、DAWとかプラグインの話に留まらず、実際の演奏面の話もということで・・・
今回の記事はポップスでよく使われる楽器「エレキギター」(6弦)にフィーチャーしようと思います。


ギターのフレットについて

理想的な弦の場合、弦の長さに対して周波数は反比例するため、12平均律の普通のギターは弦の長さが半分になるオクターブまでを12等比長で弦を短くしていけばいいだけですが、31平均律ではこれを31等比長にしてフレット間隔を細かくするだけなので、フレットがぐにゃぐにゃしたり、途切れたり、変な間隔になることはありません。
フレットを細かく打ったら、開放弦は31平均律上のE、B、G、D、A、Eにペグを回して調律すれば31平均律が演奏できるようになります。
当然ですが、オクターブ以外はフレットの位置が12平均律とは違いますので、既存のものから改造して作る場合はオクターブ以外全部引っ剝します!!

演奏できるのか?

バリトンギターの例

通常のストラトタイプ。ハイポジにはフレットがありません。

8弦ギターだと思われるもの。

・・・まあ大丈夫でしょ。てなわけで・・・

楽譜(TAB譜)の書き方

ふつうにTAB譜と音符を書けばいいですが。フレット番号は数字がご覧の通りでかすぎる。

コードに関する考察

音の配置

ギターの各フレットから出る音(白鍵の上下14音は表記省略)

結局開放弦からフレットの個数だけ高くなることは変わらないので、ごく普通のコードは特に変なところはありません。

基本的なコード

6弦ルートのコード

基本的なコードはそのまま。

6弦ルートでM7コードを弾くときは1弦はミュートする方がいいかもしれなかったりするのは普通のギターと同じです。
メジャーコードについては②と③④間で距離があるので、少々難しい場合は薬指で2本押さえるなど工夫しましょう。

ニュートラルコードはこんな感じ。

指は結構開く

中指と薬指の開きが足りないので、小指で弦を2本押さえるよう試行錯誤。

とはいえ、まあニュートラルコード自体普通に使ってると出現はレアです。
ただしmoshの音型を演奏するときはニュートラルセブンスとともに途端に重要になります。これについては後程詳しく書きます。

一応いける

特筆すべきコードとして、しばしばこのコードが出現する例があるので、その例についても掲載しておくと、短3度を下回るサブマイナーについてはバレーコードが機能不全になる模様。

5弦はふつう小指が届かないのでいっそのことミュート。

ハーモニックドミナントは、薬指で弦を2本押さえるアクロバティックな動きになります。

薬指は2本の弦をまとめて

慣れてないと2本の弦をうまく押さえられず、4弦に指が触れたり3弦の押さえが甘くて音詰まりが発生することがあるので気合で練習してください。

5弦ルートのコード

ここらへんは割と安直。

実は6弦ルートよりも安全な指使いに。

サブマイナーニュートラル7は5弦ルートでは意外と普通。

割と楽

ハーモニックドミナントの方も安直。

これは人差し指がハーフバレーになる

斜めバレーコード

コードによっては、バレーとして押さえるときにフレットをまたぐように押さえるといいものもあります。アコースティックやクラシックギターを弾く方なら耳にしたことがある方もいるかもしれません。

1弦に5度音を追加できるパターン

5弦ルートのm7(♭5)といった場合、大抵1弦はミュートされがちですが、斜めにバレーできるなら1弦で減5度音をとることができるようになります。
通常の12平均律ギターでも、このように、指先と付け根のみさえ弦に触れていればいい場合、指をフレットに対して斜めに押弦することが可能になります。

Ⅲ7の裏コードに当たる♭Ⅶ(♯6)の中で、メロディが中立3度音をとることになった場合に便利なコードですが、5度をとることができないため省略してとるほかありません。

キ11が重要

使用例としてはこうなるかと思います。

いやはや、31平均律ギターともなってくると、コードの種類の増加に伴ってちょっといろいろな小技が必要になってきます。

CAGEDシステム/セバッグフィード

31平均律のCAGEDシステム

通常のギターでも、コードの押さえ方には便宜的には5通りの方法があるというような話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
CAGEDシステムは、指板の構造的な規則性の整理を試みたものです。

ノーマルチューニングの場合、31平均律でもこのCAGEDシステムを構築できるため、コードのダイアグラムの丸暗記はやはり必要ありません。

この図で同じ色の部分を押さえると、すべてCとなります。

Cの押さえ方

音階の構造も同様で、ペンタトニックなどが演奏しやすいポジションも5通りあります。

CAGEDシステム

基本的にこのCAGEDシステムと呼ばれるものは、長音階や短音階など、ダイアトニックとそのParent MOSであるペンタトニックを演奏するのには適しています。しかし、中音階などのように、中立音程を含む音階であるmoshの音型を演奏するとなれば、また話は変わってきます。

また、コードフォームの実用性は、ほとんどの場合においてAフォームとEフォーム頼りで、"AEシステム"とでもいえるのが実態でしょう。

ニュートラルスケールと関連する音階

現状、邦訳があまり定まっていないのですが、ニュートラルスケールとはいわゆる長音階と短音階の3、6、7度の音をちょうど中立音程にした音階です。ここでは中音階とでも呼びましょう。この音階は5度圏ではなく完全5度を折半した音程、中立3度を数珠繋ぎにして"中立3度圏"を生成し、そこから連続する7音を拾い上げて構築することができ、31平均律上では、5, 4, 4, 5, 4, 5, 4という幅を持つ音階となります。隣接する音程は2種のみであるため、MOSスケールとよばれるものの一種です。 

Cニュートラルスケール

この音階の型もダイアトニックと合わせて取り入れて作曲された楽曲はまだまだ例は多いとは言い難いですが、Mike Battaglia氏のブルーノートやマカームなどに関連して、中立音程の使用は重要なものになりうるでしょう。

この動画では、西アフリカからの奴隷の最大30%がイスラム教徒であったと考えられていることから、ブルーノートの由来として中東・イスラム文化圏のマカームが関係しているという説を支持しています。
またインタビューでは、ゲイリー・クラークJr.のギター演奏においてベンド(チョーキング)が毎回同じように中立音程に到達しているように聞こえたというように、マイク氏が述べています。
いずれにせよ、ブルースにおいて中立音程を使用することが提唱されていたり、実際にブルーノートスケールなどでその試みも行われ始めています。

そのような背景のうえで、中音階をブルーノートや、マカームなどの中立音程を含む音階の基礎として位置づけ、これについて詳しく考察していくことができます。

中音階は、ダイアトニックと同様に転回することができ、やはり7種類の音階があります。

7つの音階

したがって31平均律上では2個の音階型とその中の14個の音階が重要になります。

1,ダイアトニック
 ①リディアン
 ②イオニアン(長音階)
 ③ミクソリディアン
 ④ドリアン
 ⑤エオリアン(短音階)
 ⑥フリジアン
 ⑦ロクリアン
2,モッシュ
 ⑧ドリル
 ⑨ジル
 ⑩クリース(中音階)
 ⑪ビッシュ
 ⑫フィッシュ
 ⑬ジュル
 ⑭レッド

これらは24平均律とも共通です。

モッシュの型の場合はペンタトニックはParent MOSから作ることはできません。(そのため優先度の高い音階とは言い難いです。)
代わりにParent MOSはテトラトニック(4音音階)となり、9, 9, 9, 4の幅を持っています。音階の構成音をすべて拾っていくと、ルートからニュートラルセブンスコードを構築する音列として、一応ここでは目印としておきます。

テトラトニック

また、中立3度圏は、続けていくと10音目でも音階の隣接幅が2種類となる音階ができ、モッシュとはdaughter MOSという関係があります。
これは、4,1,4,4,1,4,4,1,4,4という音の幅をもったデカトニック(10音音階)となるので、こちらも目印とします。
(dicoidという型の一つの旋法です。)

デカトニック

中立3度の連続からなるMOSスケールを整理すると、このようになります。

3種類の音階例

CeBAGFeED(セバッグフィード)

ここまで中立音程や中音階を筆頭に中3度圏が関係する音階について少し説明しましたが、これらの音階からCAGEDシステムに似たような指板の構造上の規則性を整理していきます。

早速ですが、コードを議論する前にひとまず指板上のどこかしらで音階の配置を確認してみましょう。

ノーマルチューニングのナット付近
(キー:キCニュートラル)

ここで注目すべきことですが、テトラトニックにはルートから4度の音がありません。したがって、ほぼ4度堆積である弦に対し、テトラトニックは多少煩雑に配置されています。テトラトニックと4度調弦の相性の悪さがうかがえます。
さらに、2弦、3弦間が(中3度圏で見たら少々遠い音程である)長3度でとられている弊害で、中音階は集団から1フレット分前にはぐれる状態となっています。

1列分はぐれる

とはいえ、セプタトニック、デカトニックともにおおよそ近いフレット位置に集団を形成して配置されるため、一旦セプタトニックを基準に見ていきます。

3度とれば移弦するため、3ブロックずつ取る

このように構成音が集合しているフレットを3ブロックずつ取って移動すると、7音音階を基準にしたために7か所にボックスが見つかります。また、2弦・3弦間は3度のため、ここでは音に重複が生じます。

これらのは次のような7種類のニュートラルコードの押さえ方に重ね合わせることができますが、これらの押さえ方のいくつかはあまりにもいびつな形を要求するものばかりですので、開放弦で弾く以外は形式的なものとして考えておくといいかもしれません。
コードの押さえ方としては、バレーコードを使ってなお実用的なのがやはりAnフォームとEnフォームなので、"AEシステム"は健在となるでしょう。

左から
1段目:キCnフォーム
2段目:Bnフォーム
3段目:Anフォーム
1段目:Gnフォーム
2段目:キFnフォーム
3段目:Enフォーム
1段目:Dnフォーム

これらのフォームをボックスに当てはめて呼ぶこととします。

フォームをボックスに当てはめた場合

7音音階としてキC、B、A、G、キF、E、Dという一応形式的に"押さえられそう"なコードのルートの名前をそのまま(ただしキはeに置き換えざるを得ず)並べて、この構造上の規則性の整理を「CeBAGFeED」(セバッグフィード)と現状は呼ぶことにします。

以上のように、31平均律ギターの場合は、ダイアトニックを把握するCAGEDシステムとモッシュを把握するCeBAGFeEDの2種類の盤面を知っておくと、よりこれらの音階を弾きやすくなるでしょう。

実際に手に入れてみた

31平均律 57フレットギター

Red House Guitars様にてネックを特注してみました。

設計

スケール(弦長)は規格品の25.5インチですので、あとはフレット位置を計算するだけでした。
そのため設計はGoogleのスプレッドシートを使用して、フレット位置の計算をしたため、1分で終了しました。

フレット位置

ポジションマークの位置は、通常のギターが
3, 5, 7, 9, 12, 15, 17, 19, 21
にあるため、幅がそれぞれ
短3, 長2, 長2, 長2, 短3, 短3, 長2, 長2, 長2,
となります。これを31平均律に読み替えて
8, 13, 18, 23, 31, 39, 44, 49, 54
に打ってもらいました。

ポジションマーク

インレイは諦めるか、めっちゃ細くするかしておきましょう。

製作過程

製作中の写真をいただいたので掲載。


溝切りがおわったネック
この時点でなかなかの見栄え・・・
ポジションマークはこの時点で入っています。

こちらはフレットうち後。

やはり細かい。
まるで洗濯板。

この後塗装され、立派に完成しました。

圧巻の見た目です。

弾き心地

基本的なところは上記のとおりですが、ハイフレットの狭さが気になるところだと思います。
しかし、これは音がちゃんと出ますので、気合いで弾きましょう。

チョーキングは指の引っ掛かりが少なく、弦が滑るため、高々4ステップ程度が限界でした。

そして、何より・・・
やはり実際に触ってみると難しいものです。

チューニング方法

チューナーの値を覚えるか、なくてもできます。

チューナーの値(ノーマル)

① E -12.9¢
② B -16.1¢
③ G -3.2¢
④ D -6.5¢
⑤ A -9.7¢
⑥ E -12.9¢

音叉を使用する方法

音叉を特注するか、電子音叉アプリをスマホに入れましょう。
Chrome拡張機能の音叉も便利です。

目安の周波数

C4=261.6255653Hz
E4=327.1799110Hz
A4=437.5473070Hz

C4=261.6255653Hz基準の場合の弦のチューニング方法を示します。
①次のいずれかの方法で次の弦を合わせます。
 (1) 327.18Hzの音叉を用意し、1弦開放を合わせます。
 (2) 437.55Hzの音叉を用意し、1弦13フレットを合わせます。
 (3) 261.63Hzの音叉を用意し、2弦3フレットを合わせます。
②2弦3フレットと1弦開放をうなりが消えるよう4:5に合わせます。
③2弦開放と3弦開放をうなりが消えるよう4:5に合わせます。
④4弦3フレットと3弦開放をうなりが消えるよう4:5に合わせます。
⑤5弦3フレットと4弦開放をうなりが消えるよう4:5に合わせます。
⑥6弦3フレットと5弦開放をうなりが消えるよう4:5に合わせます。
⑦6弦開放と1弦開放に2オクターブ差でうなりがないことを確認します。


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中井三十一/原井玉葱郎
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