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不得手は転じて武器になる

はじめに

デザイナーという職業は「得意を仕事に」タイプなので「なんでもできる」と思われがちですが、そんなことないですよね。。それぞれ不得手な領域はあると思いますが、不得手とは言いづらい…。とはいえ、プロとして対価をいただいている以上「不得手だけど仕方ないからこれでいいや…」というわけにもいきません。

学習や経験を通して克服できることもありますが、プロとして基準を満たす成果物をあげるべく、不得手をクリアする手段を探り、使い、助けてもらうこと。そうすれば、むしろ不得手をカバーする武器にもなるはずです。

僕はせいぜい「クラスに一人いるマンガ描くのが好きな少年」ぐらいのレベル。デザインの学校を出てこの業界に入ったわけではありません。苦手というよりも、何もできない。コンプレックスの塊。そんな状態からのスタートでした。デザイナーという職についてから自分の「苦手」とどう向き合ったか、不得手を自覚し、そこで陥りがちな苦手意識の思考をどう改め、意識的に不得手を取り除いたり避けたりする思考に切り替えていったか、自分の経験を書いてみたいと思います。

武器にまでなったかどうかは…わかりませんが…。


絵や字が下手

絵心がない(あるとしても、素人レベル)、字が下手、だからデザイナーとしての力はそもそもないだろう。と思っていましたが、それは勘違いであることはすぐわかりました。それに早く気づけたのはよかったです。おそらく絵の上手下手=写実的なスキル、と考えていたからで、写実的スキルとデザインスキルは共通点はあるものの、別物と考えていいと思います。なぜ美しいのかを学ぶことが大事。人が「美しい」と感じるには一定のルールがあります。配置、余白、配色、そういったルールを学べば、良いデザインへの道は開けます。

絵心がない、字が下手だからデザイナーに向いてない、ということは決してないと思います。「美しく見せるルール」を身につけることが、デザイナーとしての「基本的な武器」になるはずです。

・デザインの原則を学ぶ
・美しいものをたくさん見る
・なぜ美しいかを学ぶ

これらを常に意識し、なんとなくではなく、ルールをもって自分の意志でデザインすることで、余計な苦手意識を払しょくすることができました。

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なお、手描きが苦手でも手描き風に仕上げる方法はいくらでもあります。苦手なものはツールやほかのアイデアで代用できないか?と探してみるとよいです。二つほど事例を。

手描きが苦手な人のTips①

イラストやアイコンを手描き風に仕上げたいとき。

①パスの線で輪郭を描く
②プリントし、スマホアプリ「AdobeCapture」で撮影して瞬時にパス化→イラレ転送
③塗りで仕上げる

ざらざらとした仕上がりになります。手描き自信ない人でもできます。

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手描きが苦手な人のTips②

コピー機を使った、アナログデザイン表現

①小さめに文字を打ってプリントする
②2~3回コピー機を通して、文字のディテールをつぶす
③「AdobeCapture」でアウトラインデータ化

コピー機を通した紙をスキャナで取り込むのでもいいのですが、Adobe Captureを使うと撮影した画像を瞬時にベクターシェイプに変換してくれます。文字だけでなく、線やオブジェクトもよいです。

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配色が苦手

はじめてデザインソフトに出会ったとき、カラーパレットはとても新鮮に映りました。色ってこんなにあるのか…!と。でも、配色を何も学んでいない僕は、ただそこにあるカラーパレットをさまよい、適当に色を拾って「なんとなくいいかな」ぐらいの感じで色選びをしていました。そんな使い方できれいな配色ができるわけありません。こんなに色がいっぱいあるのに!と、途端に苦手意識が生まれました(この場合は苦手というより単なる勉強不足なのですが)。

配色に慣れていないと、色相、かつ彩度の高い色(またはアプリのデフォルトのスウォッチ)だけで選びがち。ハッキリとした色だから“決まった”感がすぐに得られますが、そこから抜け出さないと、常に同じ配色しかできないようになってしまいます。

配色できないと、こんな理不尽な要求にもまともな答え返せないので気をつけましょう…苦笑

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明度や彩度を組み合わせて印象や世界観を作っていく「トーン」を学ぶことは大切。あらかじめトーン別にカラーパレットを用意し、そこから選ぶようにすると配色感覚が身につくのかなと思い、実践しました。これらを用いて最初に「色彩計画」を立てることで、ずいぶんと配色しやすくなりました。

大前提はやはり学びなのですが、色に関する習得方法やアイデアはいろいろあります。以前書いた「配色の視点を増やす思考&Tips」は、配色が苦手な僕が普段取り組んでいることや気づいたことなどをまとめています。よろしければこちらもどうぞ。


話すのが苦手

プレゼンテーションもデザイナーとして大事な仕事ですが、もともと(一人っ子だからか?)人と話さずに自分の中だけで消化・完結してきたので、自分で決めたり言語化したりはできても、それを人に話す、人前で話すというのがずっと苦手でした。

とはいえ、立場上プレゼンや登壇する機会はそれなりにあるので、その苦手をカバーするための一つの方法として、プレゼン資料やドキュメントをしっかり作ろうと心がけています。デザイナーですから、こちらは得意。伝えたいことを丁寧にドキュメントに落とすことで、伝えたいことの輪郭がより鮮明になってくるから、結果的に不得手な部分をフォローしてくれるのです。

話すスキルのほうはいまだに苦労していますが、まずは自分の得意な部分でカバーしてみる。話すことが苦手でも、伝えることはできます。伝わったかどうか、そこをしっかり目指したいものです。

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こうはならない…。


センスがない

以前は「部屋のレイアウトとかセンスなくて苦手だなぁ」と思っていました。でも、あれこれ調べて知識を得たり研究する量がそもそも全く足りてなかった、ということに気づかされたのが、水野学さんの『センスは知識からはじまる』。ここでは「センスは知識で身につけるスキルである」と定義されていて、先天的なものではなく、身につけられるものであるということ。「センスがない」などと自分に言い訳がましく甘えてはいけないな…という気持ちにさせられます。

この本の中にでてくる「ふつうを知る」「流行を知る」「共通項を探す」を明確に意識することは、センスを身につける近道であると理解できました。以来、なにかにチャレンジするときは徹底的に調べる癖をつけました。繰り返しますが、知識を得て、研究する。これ大事。歳をとったらついつい言ってしまいそうな「歳をとると、若い人にセンスで負ける」などとは言わないようにしよう(苦笑)。むしろ逆ですね。


飲み込みが遅い

僕は基本的に何でも飲み込みが遅く、点と点を線につなげていく思考が苦手です。なんですぐ覚えられないんだ?身につかないんだ?と焦りともどかしい気持ちになることがよくあります。せっかちなのも、いけないのですが。そこで、新しいこと、未知の領域に取り組むときは時間かかってもいいから自分のものにしよう、と心がけています。

・すぐ取りかかる
・量をこなす
・平易な本から読む→専門性の高い本を読む
・内容をまとめる(記録)、アウトプットする

そのうえで引き算できる方法を探っていきます。時間はかかりますが定着力は強くなるので、その引き算モードに入ったら、かかった分は取り返す自信はあります。


自分で全てやらなければいけない、という錯覚

「得意を仕事」という性質上、少なからずそれらの成功体験があるがゆえに、自分は得意なんだから何でもできるはずだ、という錯覚も起こりがち。

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実は苦手に気づいていない、または苦手と感じたときにショックが大きい、といったこともあります。なんでもできると思ってしまうのは危険。苦手なことは無理に克服しようとせずに、誰かに頼るということも大事です。

僕自身は幸い、苦手は苦手!と割り切っているので、チームのメンバーにはずいぶん助けてもらっています。

最近、メンバーが自身のスキルマップ公開していたのを見て、自分もやってみました。こうしてみるとだいぶ偏っていますね。

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うちはチームでやっているので、チーム全員でスキルマップ作り、得手不得手をシェアしたらいいのかなと。苦手な分野は誰かにカバーしてもらえばいいのです。

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※参考にさせていただいた記事はこちら。スキルマップのテンプレートも使わせていただきました。


おわりに

まずは、不得手を認めることから。

冒頭でも触れましたが、「絵を描くのが得意(好き)だから」がきっかけでデザイナーになった人は多いと思います。「得意なものを仕事にした」「得意を売りにしている」タイプの職業なので、得意をアピールするのは当たり前だけど、不得手はなかなか言いづらいという側面があります。

そんな万能な人はなかなかいないと思います。無理して不得手なことに対して何にも頼らずに進めるよりも、何かに頼って解決するのも必要なこと。そのためには、まずは「認める」ことは大事です。自覚することで、気づけることがあります。それは、客観的な基準を持っているということでもあります。そして、不得手をカバーする方法、武器に変える方法を考えるようになるのです。


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ハラヒロシ @harahiroshi


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