昭和三年、辰年。
今年は辰年。十年以上前に鬼籍に入った父のことを思い出す。
父は昭和三年(1928年)辰年の生まれである。
"親子ほど年の離れた"という表現になぞらえれば、祖父と孫ほど年の離れた親子であった。それぞれが思う当たり前の期待値が離れすぎて、それが元に行き違いや衝突もあった。父は従順で素直な子を、子は友達のような関係を結べる父を、期待していたように思う。どちらもそれぞれの時代で良しとされる、家族内の役割像である。
うちには異母姉妹がいて、父は酔うとその姉を引き合いにだし「お前に比べて、もっと素直ないい子だった」「成績も随分良かった」と言った。父から見れば自分と離れて暮らすことになった姉に対する申し訳なさもあり、肩入れしている可能性もあったのだと思う。
姉とは暮らしたことがなく、酷な比較であった。"素直でいい子""成績の良い"姉像は、無意識のうちにライバル像として膨らんで行ったように思う。この環境がわたしを負けず嫌いに、また「どうせ自分は愛されないのが初期値」というような、多少捻くれた人格に育てたように思う。
昭和初期の時代に対する渇望感、そしてその時代の空気感をリアルに感じ取れるようになることを知らず知らず大命題にしてしまっているのは、やはり父に振り向いてもらいたいという気持ちの表れなんだと思う。
(画像はDALLEで描いた、昭和初期の日本)
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