燈の歩みをたどる
こんにちは。MyGOの記事を書くのは二回目になります。Haraと申します。今回は、「燈の歩みを振り返る」と題して、アニメにおける燈の成長や心情の変化について整理しながら振り返ります。
(画像引用元:https://www.youtube.com/watch?v=QkG7tIGYgSw より撮影)
私がこの記事を書こうと考えたきっかけは、12thライブのセトリについて考えていた際に、「あれ、これ燈の心情知らんと結論でなくないか?」と思ったことです。燈の感情の多くは歌詞中で語られています。しかし、より深い感情について知るには、感情が発生した原因、言い換えればアニメでの燈の心情を追う必要があるなと考えました。しかし、アニメでは他のキャラに焦点が当たる機会が多く、燈自身について語られることが少ないもしくは断片的で、全体像を掴むのは厳しいなとも考えました。そこで、この記事ではそれらを一つの線でつなぐことを試み、最終的な燈の変化を結論づけることを目標として、燈の歩みを振り返っていこうと思います。
「CRYCHIC」結成から解散まで
燈の歩みは、学校のまわりの人間と自分自身が違いすぎる、という悩みを書いたノートを祥子が見ることで、バンド活動がスタートするところから始まります。このときの燈の精神状態を一言で表すと、「世界に自分自身の居場所が欲しい」ことです。
これは、「人間になりたいうた」の中で切実に語られています。燈は、学校の他の人間と趣味嗜好や性格が全く異なり、集団の中で強い疎外感を感じていること、そんな自分の気持ちを言葉にして伝えられないことを嘆き、まるで自分が人間ではないみたいだと歌っているのです。
祥子がこの詩を歌にします。ここで燈は初めて世界に自分自身を表現する手段を見つけることになり、燈の運命を大きく変えることになります。またもう一つの重要な側面として、人間になりたかった、疎外感を感じていた燈が自分を理解してくれる存在である祥子と出会えたことです。ここから、燈自身始めてのバンドである「CRYCHIC」の結成に繋がります。CRYCHICでは現在のMyGOのメンバーである立希、そよに出会います。特に立希は第二の理解者であり、燈の味方となってくれる存在でした。また、そよもこの時点ではメンバーの一人として接していました。しかし、祥子の離反により、このバンドは崩壊に向かいます。
春日影の歌詞には温かい存在を求めていた燈をCRYCHICが救ってくれたこと、そしてその繋がりをなくしたくないという思いが綴られていました。このみんなが大事で、無くしたくない。だからこそ、この出来事は燈のこころにトラウマを残しました。一言で言えば、幸せなバンドという場所を失いたくない。どうせ失うならもうバンドをやりたくない。というものでした。燈の希望はここで断たれてしまい、また彼女の世界はノートの中に移っていくのです。
ここまでをまとめてみましょう。
燈はずっと疎外感と孤独を感じていたが、渇望していた居場所と大事な仲間を手に入れた
自分自身を表現する「歌」という手段を知った
居場所は崩壊し、仲間は離散し、燈の心に深い傷を残した
愛音との出会いから再びの崩壊へ
千早愛音との出会いは燈の運命は大きく変わります。愛音と燈は偶然の出会いで親密になりました。また、偶然が重なり、旧CRYCHICメンバーが愛音をきっかけにして集まることとなります。このあたりの細かい流れは省略しますが、ここで燈はバンド活動を再び行うチャンスを再び手にします。しかし、トラウマを引きずっている燈はバンド活動に消極的です。終わってしまうのが怖い、と。しかし、そんな燈に、「また頑張ればいいじゃん」と言葉をかけます。この言葉は燈にとっては非常に重要な意味を持ちます。この言葉によって燈を過去ではなく、未来へと、前へと進める覚悟を持つことができたのです。また、燈自身が主体性を獲得するきっかけでもあります。CRYCHIC結成時は受け身でした。偶然の出会いから流れるようにバンド結成が行われ、バンドが解散してしまいました。燈自身には何もできることはありませんでした。愛音の存在により、燈は前に進めたのです。
成長した燈は今度は愛音を救うことになります。愛音は、自分がバンドから逃げたこと、そして、留学の失敗によって落ち込んでいました。そんな愛音に「迷いながらも、前に進んで頑張ろうとしている」ということ、そして、「燈と愛音はともに迷子であるということ」を伝え、愛音にバンド活動を続けることを決心させます。
燈の大きな成長がここで垣間見えます。迷ってても、前に進みたい。自分自身が前に進めるようにきっかけをくれた愛音が迷っているときに、言葉で自分自身の気持ちを伝えることが出来たのです。燈の言葉は愛音の気持ちと行動を変えたのです。しかし、燈の言葉の力について、燈自身は気がついていませんでした。この力については、後の話で回収されることになります。燈自身にとってこの場面で最も重要なのは、燈と愛音、二人は迷子であり、前に進みたいという気持ちに対して強く共感しあえたということです。燈にとって、気持ちを共感できる愛音という存在ができたことは、大きな救いであるのです。CRYCHICが解散し、ノートの世界に戻っていった自分自身にできた、初めて共感しあえる存在である愛音。彼女の存在は燈にとって大きな支えとなるのです。これは言い換えれば、「人間でありたい」燈にとって、同じ悩みを抱える愛音は、自分自身も周りと変わらない存在であることの証明になるといえるでしょう。
5話で披露される「碧天伴走」は愛音に向けた曲です。自分の感情にしか向けられることが無かった燈の言葉が、初めて他人に向けられるのがこの曲なのです。
決意を貫き、さらにバンド活動に対する熱を高めていく燈は、楽奈の加入もありながら、ついにライブを迎えます。バンドメンバーもギクシャクしながらも信頼関係を深めていき、ついに7話でライブが行われていきます。順調なまま進みますが、その全ては「春日影」によって崩壊します。
メンバーの一人であるそよは、CRYCHICの再結成のためにこのバンドで活動していました。そのために、バンド活動についてはあまり気合を入れず、ライブ当日になってもチューニングが外れていたほどでした。しかし、ライブで祥子がいなくなってしまったこと、そして何よりも、「春日影」を現メンバーで演奏したことで、CRYCHICが二度と再結成されないことを悟ります。そよはライブ後に激怒し、練習に来なくなってしまいます。そよの考えについて知った燈は、再び解散することが頭をよぎります。大事なメンバーにつらい思いをしてほしくない、自分が悪かったのかな、そんな様子で悩んでいました。そんな燈に、「結局自分はCRYCHICを結成するための踏み台にしか過ぎなかった」と理解した愛音は、何かを悟った表情とともにその場を去ります。愛音にとっては燈の裏切りに感じられたでしょう。一緒に進んでいくと誓った燈は仲間ではなかったと感じている愛音の姿は本当に不憫でした。去っていく愛音をみて泣きながら、「もうバンドなんてやりたくない」と声を絞り出す燈は、再び絶望を感じ、バンドは崩壊に向かいます。
※この章では立希の存在についてあまり触れていませんが、燈の成長に焦点をするとどうしても立希の記述が少なくなってしまいます。自分は立希推しなので、もう一度アニメを見直すなりして、この項目を後に加筆したいとも思っています。
この章をまとめてみましょう。
愛音の言葉によって、前に進むことを決心するとともに主体性を獲得する
初めて共感しあえる存在(愛音)ができたことにより、自らを肯定する
再びのバンド解散により絶望へと向かう
「MyGO!!!!!」の結成
再び解散してしまったバンド。自問自答を繰り返す燈。教室では会話をかわさない愛音。すべてが降り出しに戻ってしまったように思えます。しかし、燈は大きく成長していました。もう何も出来ない過去の燈ではありません。燈はまず、仲間にまだ何も伝えていないことに気づきます。前に進む気持ちだけは失わなかった燈。しかし、再結成に必要な手段はわかりませんでした。その時偶然初華と出会ったことでメンバーへの伝え方を思いつくのです。それは、詩で伝えることです。詩で伝えることが、失いたかった全員を取り戻せる唯一の手段であることを悟り、燈は行動を開始します。
そんな燈をサポートしてくれる人が現れました。楽奈です。楽奈は燈とある意味対照となる存在です。燈が「詩」で伝える存在ならば、楽奈は「音」で伝える存在です。楽奈に関しては、「無路矢」で多くを知ることができるでしょう。「無路矢」の歌詞は、メインボーカルの燈が「言葉」で、そしてサブボーカルの楽奈が「音」を利用して自分自身を伝えようと試みているような内容になっています。二人とも「みんな」と比べれば浮世離れしている存在。その二人の心の叫びを読み取ることができます。燈が居場所を探しているのならば、楽奈も居場所を探していました。言い換えれば、迷子になっていました。そのことは、彼女がSPACEのオーナーの孫という事実から読み取ることが出来ます。SPACEが閉店してしまった後、居場所がなくなった楽奈は燈に出会い、彼女の詩とともにバンドをやりたいと考えてバンドに加入するのです。そんな似ている二人が再びバンドを再興する狼煙になるのです。楽奈については後ほどまるまる一記事割いて考察したいなと思っています。
次に現れたのは立希です。燈の歌詞に一番惹きつけられたのは立希で、燈になにかあるたびに燈を心配し、庇っていましたが、二人の心にはズレがあるようでした。立希は燈と楽奈が二人でライブを開いていることを知ります。そして間もなく、楽奈からライブに誘われて参加することになります。
立希はライブ後の階段で、初めて燈自身に寄り添うことになります。燈のことを考えていなかった。燈のためのことを思っていたが実は出来ていなかったことを語るのです。立希も迷子だったのです。
さて、残りの問題を解決しましょう。
燈はまず愛音を取り返すことにします。愛音は燈にとってバンドを再び行うきっかけになり、前に進むきっかけをくれた大切な人です。その愛音と再びバンドをするために、燈は教室で大胆な行動に出ます。愛音の手を握り、「愛音ちゃん要るよ」と話し、屋上まで追いかけ回し、ついに愛音を取り返すことに成功するのです。愛音と他のバンドメンバーの間には大きな違いがあります。それは、愛音のみ音や詩を通すことなく、燈の口からでた言葉で向き合っていることです。これは5話で築かれた信頼関係が元になっています。愛音は燈にとって一番深い関係を築いたメンバーであり、絶対に失いたくない仲間でした。
最後にそよです。そよはCRYCHICを忘れられず、愛音が家に訪れたときもその姿勢を崩しませんでした。そよも迷子でした。しかし、絶対に仲間を取り戻したい燈は、ライブ会場に来たそよを壇上に引っ張り上げて、演奏させるのです。そしてメンバー全員に燈が伝えられなかった言葉を、「詩超絆」で伝えます。絶対に失いたくない。一緒にやっていきたいメンバーたちに向けて、観客の方を向かずに伝える燈の言葉、そしてみんなで作り上げる音を聞いて、皆涙を流します。
この瞬間、燈はすべてを伝えきり、二つのトラウマを乗り越えました。最初は一人で何も出来なかった燈が、前に進む決意をし、再び解散してしまったバンドを詩の力で取り戻したのです。ライブ終了後はメンバーはわけも分からず泣いていましたが、それは燈の気持ちが完全に伝わった証と言えるでしょう。
五人全員が迷子だったこと、それを詩を通して共有したこと。その経験があって、バンド名は「MyGO!!!!!」となります。改めて見ると、迷子であっても五人で前に進むという決意がバンド名に端的に現れていると言えるでしょう。
この章をまとめます。
燈は詩という手段で仲間に伝える方法を思いつき実行、最終的にメンバー全員を取り戻すことに成功し、トラウマを克服する
メンバー全員が迷子でも進んでいくと決意する
まとめ
燈の成長に焦点を当てて執筆していますが、考察するまでは5話のシーンの重要性についてあまり理解していませんでした。10話以降の衝撃が強すぎて、忘れかけていたからかもしれません。しかし、燈の成長があるのは愛音との出会いがあったからこそだと、今はっきりと認識できています。そのシーンがあったからこそ、教室のシーンで愛音をバンドに取り戻せたということを考えると、二人はともに補完しながら成長しているなとも思っています。碧天伴走大好きになりました。
次は無路矢を絡めた楽奈の考察か12thのセトリの考察でもしてみたいなと思っています。特に、12thのセトリは今回の考察を踏まえるとかなり深いところまで考えられそうなので、近いうちにまた投稿したいなと思っています。
最後に、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。