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ニューノーマル時代のスポーツまちづくり

まちづくりとは? 

 まちづくりとは、「ヒト、モノ、自然環境、歴史・文化的資産などの地域資源の発掘を行い、これらの活用可能な資源を活かしながら、施設を整備し、産業を育成し、イベント・広報活動を行う、まち(地域)の活性化事業」(岡本包治「まちづくりと文化・芸術の振興」ぎょうせい、1994年)と定義されますが、その方法は産業によるもの、環境づくりによるもの、街並づくりによるもの、青少年育成によるもの、芸術・文化によるもの、そしてスポーツによるものといった具合に多彩です。

 スポーツの場合、スポーツイベントを誘致・開催して地域の活性化を目指したり、自転車専用道を整備して住民のアクティブライフの水準を向上させたり、後述する地域スポーツコミッションを設置して、インナーとアウターの政策を同時展開するなど、様々な方法があります。

 過去には、自治体が重視している地域課題を提示し、それに対して積極的に取組む姿勢をアピールするために「スポーツ都市宣言」を行うケース(例えば逗子市:1984年、熊本市:2009年、赤穂市:2012年など)も散見されましたが、都市宣言自体に法的な拘束力はなく、議会での決議も必要ないため、都市のイメージづくりや話題づくりが主な目的となっていました。

 宣言都市の中には、住民のライフスタイルを変え、健康的でアクティブな地域づくりを目指すためのキャンペーン活動を展開する自治体はあっても、スポーツ都市の実現に向けて、包括的かつ創造的なまちづくり計画を実行に移したケースは見当たりません。

ニューノーマルが常態化した社会

 ニューノーマルが常態化した社会では、感染防止に向けた様々なルールや行為が社会規範として遵守されることになります。そのような規範意識(道徳、倫理、法律等の社会のルールを守ろうとする意識)が高まるにつれ、都市の過密を避け、地方の生活を見直す動きが強まり、在宅勤務に必要な、健康でアクティブな生活を維持するために、近隣の公園や道路の価値が再評価される可能性が高まるでしょう。

 となれば、スポーツまちづくりの視点も、サッカーやラグビーといった組織的・制度的なスポーツよりもむしろ、日常生活圏で手軽にできるウォーキングやサイクリングといったアクティビティに焦点を当てるべきでしょう。

 スポーツまちづくりにおいては、ナッジによって、人々の行動をより健康的な方向に向ける装置が日常生活空間に(それとなく)備えられていることが望ましいのです。経済学者の伊藤元重は、公園に設置された運動器具(健康遊具)も、人々を健康的な運動に誘うナッジの役割を果たす健康装置のひとつであると指摘し、「公園でも道路でも、公共の場に人々の健康活動を増進するような仕掛けをもっと増やすことができないだろうか」と提案しています。

 実際、ストレッチ、ツイスト、ジャンプ、屈伸などができる大人用の「健康遊具」の数は増えています。国土交通省による2013年度の調査結果によると、都道府県などが管理する全国約14万6000か所の公園で、子ども向け遊具全体の数が3年前と比較してほぼ変わらないのに対し、健康遊具の数は28.1%も増加しているのです。

銭湯とランニングステーションの結合

 さらに、まちが抱える課題を解決しつつ、住民をアクティブにするアイデアもあります。そのひとつが、銭湯をランニングステーションとして活用する「銭湯ラン」です。例えば東京都内の銭湯は、2006年には963ありましたが、2019年には520に半減するなど需要が低迷しています。しかし、その中の100程度が銭湯ランで利用可能なのです。従来の銭湯の機能に、「浴場付き更衣室」という機能を結合させたサービスによって新しい利用層を呼び込む銭湯ランは、減少する銭湯の救世主とでも言うべき優れたアイデアであり、まちのアクティブライフを支えるインフラとしても注目すべきでしょう。

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