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誰かに言いたいけど誰にも言えない体験をした話  過払い金請求の相談をした結果、猛烈に思ったこと(後編)

これまでのあらすじ
今過払い金請求を弁護士事務所で相談しているよ

 さて、質問票だが、個人の氏名から始まり、家族構成、車を所持しているか?していれば年式、と細かい。正直、嫌である。
 しかし、僕は知っている。これは何らかの必要性がある項目なのである。必要でなければそもそも聞かない。
 個人情報は保存しているだけでリスクなのであり、まともな所ほど極力必要のない情報は書かせたくない。長々としたお客の語りが始まる可能性だってある。保管場所だって気を使う。保管した情報だってパソコンに入れて、保存と更新を繰り返すこともあり、情報って実はかなりのお荷物なんである。
 しかもあなたが受付だった場合、毎回毎回「なんで書かなくちゃいけないんですか?」と言う不満をなだめすかしながら丁寧に答えなければならない。
そんなことやりたいですか?
 個人情報を含む手続きはホントはやはり本人の承諾から始まってとても手間がかかるのである。(今回は省略するが、後で説明されやはりすべて必要な項目であったと納得できた。)お電話1 本すべて完結と言うのは絶対に無理だと僕は思う。

 僕はサラサラとすべての項目に迷いなく記入し、パンフレットを読みながら受付の方を待った。
 遠くから密かな声が聞こえるか聞こえないかだけで、僕の話はまぁ漏れないであろうとさらに安心した。
5分後くらいで、「電話が鳴るので取ってください。オペレーターと繋がっておりますので、その方と詳細を整理して下さい。」と受付者は質問票を持っていった。
 ここで質問票を流し、東京かどこかに集約されたオペレーターに詳細を確認させるのであろう。
 果たして、予測どおりに話ほ進み、僕は電話でペラペラと詳細を語った。
 借金の記録についてはすべての書類を破棄してしまった上にカードも解約してしまって、おぼろげな記憶しかなく、思い出したくもないが、その記録を取り寄せるための手続きなので無問題である。

 記録も整理し終わり、「弁護士先生に引き継ぎますね」とオペレーター。いよいよである。スマホを裏にし、熱心にパンフレットを読むふりをする。「66000円+22% 足りない場合は費用負担もなし」かぁ、固定費がデカいが、んん〜。返ってきて数千円?くらいなのかな、もしかして。全く想像がつかん。まあ、やらないよりはやった方がいいよね…少しでも返ってくるなら。多分。

 しばらくして、先の受付の方が戻ってきた。
「あ、僕はこういう者です。」
 受付の方は名刺を差し出した。やはり、弁護士先生本人であった。田舎のプライドだけは高いジイさんに揉まれ、バアさんのお話をウンウンと聞かされた世代。先生なのに腰が低っくい!!今までの苦心がその背中に滲んでくるようである。圧がなく、話しやすい。
 先生はパンフレットを元に説明してくれ、僕は先生の名刺とパンフレットを見ながらフムフムと聞く。つい、クセで先生の名前の読みが気になってしまうのである。下の名前は何と読むのだろう。ルビが振っていない。メールアドレスにヒントはないだろうか…気になる。

 では正式に仕事の依頼契約を結びましょうと相成って、先生は契約書をさささと出した。
 ここで僕の目は釘付けになる。
「1社につき、66000+22%」
1社につき? 1社〜??1件でなく??
慌ててパンフレットを読み直すと、確かに1社につきとあるではないか!!
 と言うことは僕の場合3社を掛け持ちで回していたので、MAX198000円を払ってさらに22%を引かれて、はみ出た残りがやっと戻ってくるということである!

 はぁぁぁ〜!僕は勘違いをしていた。1件=自分だと思っており、自分1人で66000円を支払ってその後は割合で返ってくると思っていたが、実は一社から請求するごとに66000円!!ひい〜!自分の費用負担がないことは伺ったが、これってカード会社から弁護士(目の前の方)にお金を移すだけ??意味あんの?

 なら、自分で計算やるか?と思うとできない。過払い金の日割り計算のノウハウがなく、分かったとしても非常に細かい計算をしなければならない。計算の基準日だってあろうが、そのルールがわからない。1日ズレただけで計算は異なってしまうほど細かいし、明らかにするには、やっぱり依頼するしかないのである。はぁぁ〜ヤラレタ。僕は頭が真っ白になった。ただ、僕は恥を晒して人から人にお金を移動する装置になったのである。

 ……まぁ、国家資格の弁護士先生に頼むにはこれくらいの費用は必要なのである。国の難関資格を持ち、ノウハウを蓄積しに、事務所の維持費も払う?むしろ先生の生活だって大変であろう。
 地方すぎてカモな客も少ないと思われるし、がんばって計算しても「過払い金はなかった」というハズレだってある。料金で驚いた挙げ句、話を聞いて計算したのに、依頼されないこともあるだろう。

 はぁぁ〜そっかそいうことが。世の中甘くはないな…。

 僕は一気にしょぼくれた。
「先生、これ、僕には過払い金もらえる可能性、ないですよね?」と聞いた。
「……まぁ、カード会社もホワイトですし、難しいとは思いますが、知らないよりスッキリさせたいですよね?」と気弱な笑みを向ける。
「それはそうですね…まぁスッキリしましょう。やってみます。うん…。
 それはそれと先生、先生の下のお名前はどのように読むのでしょうか?」

 先生は黙り込んだ。
「あの…原田クン」
「え…」
「原田クン。ボクたち高校で一緒。というか、席隣だった、よね?」
「高橋…クン?
 ……えええええええええ!!イヤーーーー!!!」

僕は乙女のように叫び声をあげ、名刺を見た。その時、失われた黒歴史が走馬灯のように駆け巡ったのである。あああ、いたな高橋クン!!
うわーーまさかこんなところで会おうとは。うわぁぁぁぁ!!

 匿名どころか、同級生!ああ〜恥!!この世から消えてしまいたい。こんな確率って、あるの??万に1つレベルでしょ、これ!!

 僕の魂は抜けた。
 ここで政治家メンタルなら「なーはっはっはっ!!これは好都合。僕の不貞、不実、不祥事!!全て真っ白にしてくれたまえ、高橋センセ!!こりゃ〜百万力ですなぁ!グッシッシ」と思えるのだろうが、僕にはあとの説明を聞く気力もなく、はにわのような顔で高橋クンを見つめるだけだった。
 高橋クンは
「あ、ごめんね。今のは忘れて!聞かなかったことにして。原田さん、これから頑張りましょうね」と心なしか寂しそうにオトナの対応をしてくれたのである。

 帰り道僕は考えた。
 まず、手続きは始まったばかりなのである。また、高橋クンと会わなくてはならないだろう。そして、少しでも過払い金があったら「いいよ、事務所費に当てて」と自分は言うんだろうな。
 そして、僕の高校は頭がいい。地元に残った奴らは資格がなければ公務員、あれば弁護士や税理士、医者など、人生の赤っ恥の時であればあるほど、お世話になる職種にいる可能性が高いのだ。 
 出たい。もう、田舎は嫌だ…。

 僕が過払い請求を申請手続きをした感想は、まさかの「だから田舎は嫌だ!!」ということであったのだ。


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