一般システム理論に基づくバイステックのケースワークの７原則の考察
バイステックのケースワークの7原則（個別化、意図的な感情表出の許容、統制された情緒的関与、受容、非審判的態度、自己決定、秘密保持）を 一般システム理論（General Systems Theory, GST） の視点から考察すると、以下のような関連性が見出せます。
1. 個別化（Individualization）とシステムの独自性
一般システム理論では、各システム（クライアントや家族、地域社会など）は独自の特性を持ち、環境との相互作用の中で適応していくと考えられます。
クライアントは一つの独立したシステムとして尊重されるべきであり、一律の対応ではなく、その人の状況や背景に応じたアプローチが求められる。
2. 意図的な感情表出の許容（Purposeful Expression of Feelings）とフィードバック
システムには入力（インプット）、変換（スループット）、出力（アウトプット）のプロセスがある。感情表出はクライアントの内部システムにおける情報処理の一部として機能する。
クライアントの感情を適切に受け止め、フィードバックを行うことで、ケースワーカーとの相互作用が適切に調整され、より良い支援が可能になる。
3. 統制された情緒的関与（Controlled Emotional Involvement）とシステムの安定性
ケースワーカーとクライアントの関係は開放系のシステムであり、適切な距離感を保ちながらも相互作用が求められる。
過度な関与はシステムの不安定化を招く一方、適切な関与がバランスを保ち、システムの適応力を高める。
4. 受容（Acceptance）とオープンシステム
一般システム理論では、オープンシステム（開かれたシステム）は外部環境との相互作用を通じて発展する。
クライアントをそのまま受け入れることで、安心感を与え、ケースワーカーとの関係が強化される。これはクライアントシステムが新たな適応を促進するプロセスと捉えられる。
5. 非審判的態度（Non-judgmental Attitude）と恒常性（ホメオスタシス）
システムは一定のバランス（ホメオスタシス）を維持しようとする傾向があるが、外部からの否定的な評価はそのバランスを崩し、システムの適応力を低下させる。
非審判的態度によって、クライアントシステムが自己調整しながら変化する余地を持つことができる。
6. 自己決定（Self-determination）と自己組織化
一般システム理論では、システムは外部からの強制的な指示ではなく、自らの内部プロセスによって秩序を作る「自己組織化（self-organization）」の力を持つ。
クライアントが主体的に問題を解決できるよう支援することは、システムの適応力と成長を促進する。
7. 秘密保持（Confidentiality）と境界の維持
システムには境界（boundaries）があり、それを適切に維持することが安定性に重要である。
秘密保持はクライアントシステムと外部環境との境界を適切に守り、信頼関係を維持するための重要な要素となる。
結論
バイステックの7原則は、ケースワークにおいてクライアントという「システム」の適応、成長、バランスを維持するための原則と考えることができます。一般システム理論の視点から見ると、クライアントとケースワーカーの関係は 相互作用する開放系 であり、適切なフィードバック、境界の設定、自己組織化の促進が支援の鍵となるといえます。