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盤面管理入門

はじめに

本記事はzyf氏によるan intro to map controlの日本語訳になります。翻訳にあたり掲載許可はいただいております。
日本のユーザーの反応も楽しみにしているとのことなのでコメント・Twitterなどで感想を頂けますと幸いです。
原文最終更新:2023年11月18日

前回の記事

シリーズ目次
 
0 :より賢くプレイする:戦術的思考を改善するためのガイド
→1a:盤面管理入門

 1b:物々交換、1対0、そしてリソース管理の技術
 1c:キーエリア、ボックス、その他:ポジションの取り方
 2a:ゲームの状態のフローチャート:試合の流れのメンタルモデル
 2b:フローチャートを使ってゲーム内で考える
 3 :フィードバックのループ:実験、Vodレビュー、習慣作り


盤面管理が重要な理由

なぜ盤面管理にこだわるのか?
私にとって、これは「どうやってゲームに勝つべきか?」について考える上で最初の興味深い段階だ。
まず、基本的な目標が「勝つこと」だとすると、次の目標は「敵よりも多くカウントを進める」ことになる。これは当然のことだ。しかし、どうやって多くカウントを進めるのかが、少し分かりにくい部分だ。

ここで主張したいのは、カウントを進めるため、あるいは相手のカウント進行を防ぐためには、自分たちが特定のポジションを取る必要があり、敵がそのポジションに入るのを防ぐ必要がある。
ガチエリアの場合は簡単だ。エリアを確保するためにはエリアの近くにいる必要があり、敵をエリアに近づけないことでエリアを維持できる。他のルールではもっと複雑だが、基本的には、タワーやホコ、ガチアサリなどを前進させるために道を切り開く必要がある。どのルールでも、前進するためには安全を確保しなければならない。そして、相手が上手いプレイヤーであるなら、ただまっすぐに突撃するだけでは上手くいかない。

つまり、要約すると、私たちが盤面管理にこだわるのは、それによって自分たちがカウントを進め、相手のカウントを防ぐことができるからだ。 これは勝つための最も基本的な要素だ。
キルやスペシャルなどは盤面管理のためにあるべきで、盤面管理はオブジェクトのためにある。
だからこそ、最終的に「なぜそれをしたのか?」という問いに対する答えは、常に盤面管理に行き着くことになる。


優位性を得るための仕組みとしてマップをどう見るか

なぜ有利な状況に重点を置くのか?

では、盤面管理をどう理解すればいいのか。
まず、優位な状況の重要性について証明したい。

目標が勝つことなら、自分たちの行動が成功する確率をできるだけ高く保ちたい。例えばガチホコバトルなら、ホコを進める際には成功する確信をできるだけ持ちたいし、敵がホコを持っているなら止める確率をできるだけ高くしたいと考えるのは当然のことだ。

この成功率を高めるための重要な方法の一つは、自分たちが有利な状況でプレイすることだ。つまり、自分たちがやろうとしていることに対して、敵よりも有利な状況を作り出すことだ。「正々堂々戦いたい」という奇妙で抽象的な考え方があるなら、正直、この話は向いていないかもしれない。
しかし、できるだけ多く勝ちたいのなら、自分達が有利になるような流れに持っていくのは直感的に正しい選択だ。

これを踏まえ、次に主張したいのは、「マップのデザインそのものが、どのポジションでの行動が有利であり、どのポジションが不利かを定義している」ということだ

これは具体的にどういうことだろうか?
幸いにも、各マップにおける有利不利を理解するための指針となる原則は限られている。そして、これらの原則をもとに、マップがどう活用されるべきかについて多くのことを語ることができる。
その内容については、以下のセクションで詳しく説明する。

1:高台>低所

まず一般的に、低所から高台への戦いは不利になりやすく、高台での戦いは有利になりやすい。
これにはいくつかの理由がある:

  • (a) 視界と情報の優位性:高台にいる方が視界が広くなるため、敵やマップ全体の状況を把握しやすくなる。単純に言えば、より多くの情報を得られるため、有利な判断を下しやすくなる。

  • (b) 高台からは有効射程が伸びる:高台にいることで、実際に攻撃できる距離が長くなる。ただし、これはその有効射程を正しく活用できた場合のみの話だ。例えば、ローラーが高台のすぐそばにいるのに、その端に立てば、射程に入ってしまい簡単に倒されてしまう。距離を活かしてこそ意味がある。

  • (c)高台にいる方が戦闘で選択肢が多い:高台にいる側は、低所にいる敵に対して自分のタイミングで降りて攻撃できる。一方、低所にいる側は、高台に上がる手段が無いか、限られており、壁を登ったり、狭い坂を登らなければならないため、動きが敵に読まれやすい。

これは当然、2つ目の原則につながる:

2a: 選択肢を制限するのは悪手、射程が重要

次の原則を簡単に説明すると、「選択肢が限られている場所、あるいは自分の動きが相手に読まれやすい場所で戦うこと、さらにはそこにとどまること自体が、特に射程が短い場合には不利になる」ということだ。もっと一般的に言えば、射程は戦闘の流れを決める非常に重要な要素である (これが、特に近距離武器においてサブやスペシャルが重要な理由の1つだ - 有効射程を伸ばすのだから)。

この点を証明するために、理想化された理論的状況を考えてみよう:

図1:狭い通路

この状況では、青と緑のプレイヤーが狭い通路に立っており、青のプレイヤーがより長い射程を持っている。
両者とも、前後に移動するしか選択肢がない。
つまり、緑が何をしようと、青はただ射撃を続けるだけで、緑は必ずこの戦闘に負けてしまう。
緑は回避する手段がなく、もし前進しようとしても、青は後退しながら距離を維持できるため、緑は常に不利な状況に立たされる。

しかし、このような状況はこれだけではない:

図2:壁/段差

今度は視点を少し変えて、上からではなく横から見てみよう。
とにかく、青が(塗れる)壁や段差の上にいて、青がまだ射程に優れていると仮定しよう。
青の武器がバカではない限り、緑が近づこうとすると、どこかで壁を登るかジャンプをしなければならない。 致命的なのは、段差の角を越えるときに一瞬、動きが完全に止まることだ。
動きが止まった瞬間、青は容易に射撃を当てることができる。さらに、青が正しく距離を取っていれば、緑は射程の差で反撃できない。 つまり、またしても緑はお手上げなのだ。

このような基本的な状況がもう一つある:

図3:ジャンプ

繰り返すが、ここでも横からの視点で、青がより長い射程を持っていると仮定しよう。
先ほどの段差の例と同様に(場合によってはさらに顕著に)、緑が接近しようとすると動きが制限され、その瞬間に青の射撃に対して非常に脆弱になる。緑はもうダメだ。

2b: 選択肢を制限するのは悪手、これは常に当てはまる

面白いことに、この例を少し変えることで、次のようなもっと一般的な結論に話を広げることができる。すなわち、「自分の選択肢が限られていたり、動きが相手に読まれやすい場所で戦うことは、(相手が同じ制限を受けていない限り)ほぼ常に不利である」ということだ。この原則は、射程に関わらず成り立つ。

このケースを考えてみよう:

図4:開かれた領域への通路

青はまだ射程距離が長いが、実際には青の方が緑に近づくことが出来ない。 青が廊下に立っている限り、実際に撃てるのは彼らのまっすぐ前方/廊下のまっすぐ外側の細い部分だけである。
したがって、緑がその範囲外に立っていれば、それに対抗するために青はかなり前に出る必要がある。しかしその時には青は緑の射程内に入ってしまい、さらに青とは異なり、緑ははるかに自由な範囲で動くことが出来る。
このため、緑には青の射撃を回避するチャンスが生まれる。一方で、青は緑の自由な動きに対処するのが難しく、緑の集中砲火を受けてしまう可能性が高い。なぜなら、緑は青のように狙いを細かく調整する必要がほとんどないからだ。

これは他の2つのケースにも当てはまる。垂直の壁を登る場合は少し複雑だが、基本的には、壁を登っているプレイヤーは後退することができないし、壁を登り切った最初の動き同様に、その瞬間は動けないから反応しやすい。 つまり、繰り返しになるが、この試合は本質的に最初から緑に不利なのだ。
なお、ここでの重要な前提のひとつは、両方のプレイヤーがお互いの存在を認識しているということだ。これについては後ほど説明する。


Splatoonのマップはチョークポイントの連続だ

では、これらの抽象的な例が盤面管理と何の関係があるのだろうか?
廊下や壁、ジャンプが必要な場所などを、一括して「チョークポイント」と呼ぶことができる。つまり、チョークポイント=選択肢が限られ、動きが相手に読まれやすく、攻撃を受けやすい場所ということだ。

少なくとも私の盤面管理の概念では、スプラトゥーンのマップはチョークポイントで区切られた一連の開けた領域で構成されている。
特に注目すべきは、高台にあるポジションである。 なぜなら、その高台からアクセス可能な領域での戦いにおいて、直接的な優位性を発揮するからだ。
なお、注意すべき点は「アクセス可能」 かどうかは自分の武器の射程によって変わるということだ。例えば、リッターだと、「アクセス可能」というのは時々『敵陣のほとんど全部』を意味することもある。本当にばかげている。

この盤面管理の概念は、スプラトゥーン開発チームのマップデザイン選択の副産物のようなものであることに注意してほしい。 理論的には、ただの平坦な四角形のマップにランダムに障害物を配置することもできる(例:新しいマヒマヒの中央エリアのように)。そういった広い開けた領域がある場合、盤面管理の流れは「どこに立っているか」「どれだけの射程を持っているか」「どれだけスムーズに移動できるか」などに大きく依存する。
とはいえスプラトゥーンのほとんどのマップでは、エリアは近くのチョークポイントによってある程度囲まれているので、このモデルはかなりうまく機能する。

知識の活用法

この基本的な理解だけでも、盤面管理を意識してどのように立ち回るべきかについて、かなり強力なヒントを与えてくれるはずだ。

  • (i)重要な場所は高台のポジション:オブジェクトに対して最も重要な場所は、アクセスしやすい高台である。 地面が同じ高さであれば、戦いはより公平になるが、近くの高台から戦えば、オブジェクトに関するすべての戦いが楽になる。 同様に、敵がオブジェクト近くの高台を取ってしまうと、こちらがオブジェクトを動かそうとしても一方的にやられてしまうし、ガチエリアを確保しようとしても塗り返され続けることになる。つまり、マップの反対側から自由にヤグラを狙えるリッターがいるなら、それを無視してヤグラに乗るべきではない。まずそのリッターを追い出すか、倒す必要がある。また、敵陣の高台にいるN-ZAPがずっとエリアを塗り続けている場合、そのままではエリアを維持できないので、何とかして対処する必要がある。

  • (ii) 戦闘の際の注意点:敵とお互いに存在を認識している状態で戦うとき、チョークポイントを無防備に突っ切ったり、低い位置から戦ったりするようなバカになってはいけない。廊下に突っ立ってるような状況は避けるべきだし、下に立って空からの攻撃を待っているだけの状態も危険だ。やみくもに壁を登って勝利を期待しないことだ。

    • 逆に、相手がそのような愚策を取った時は、自分の方が戦闘で選択肢が多いことを活かしてちゃんと咎めるべきだ。その利点を実際に活用するのだ。相手のペースに乗って高台から即座に降りて、降りたと同時にやられるようなことはするな。塗りで閉じ込めたり、ボムなどで相手を追い詰めたりしろ。廊下のようなチョークポイントにいる敵に対しては、その場に留まって好き放題に撃たせるのではなく、相手の位置を見極めて有利なポジションから攻撃しよう。

ここまで、やってはいけないことや、必ずやるべきことをたくさん話してきたが、具体的にどうやって状況を逆転させるかについてはまだ言っていない。 当然ながら、誰もチョークポイントを越えなければ、何も起こらないのだ。


キル/スペシャル/情報の重要性

そして、最後のパズルのピースにたどり着く:
なぜキル、スペシャル、情報が重要なのかということだ。
スペシャルが重要なのは、敵が持っているポジションの優位性を無効化したり、敵をその場所から完全に追い出すことができるからだ(無理矢理移動させるか、倒すことで)。
キルが重要なのは、敵チームの人数が十分に減れば、彼らはエリアを守るためのすべての選択肢をカバーできなくなり、その隙を突いてエリアに強引に入り込むことができるからだ。
左にチョークポイントがあって、右にもあり、正面にもあるとしても、敵が2人しかいなければ、それらすべてを簡単にカバーすることはできない。特に、こちらのチームが複数でプッシュしている場合にはなおさらだ。

情報が重要なのは、チョークポイントを通らずに敵の裏をかければ、戦況が完全に変わるからだ。
また、チョークポイントの外にいることで『追加される選択肢』のひとつは、チョークポイントを通ってくる相手を潜伏して待ち伏せしたり、相手の位置を追跡して、いつでも瞬時に奇襲をかけることができることだ。自分は相手の位置を把握しているが、相手は自分の位置を正確に把握していないという優位性がある。

一部のスペシャルは、自分専用のチョークポイントを作り出すことができる点でも面白い。例えば、ジェットパックは瞬時に高台を作り出せるし、グレートバリアを使った時、その中に敵がいないことを確認できれば、バリアの端が円形のチョークポイントとして機能する。
また、スペシャルを使ってチョークポイントを完全に封鎖することもできる。狭い廊下の向こうにウルトラショットが待ち構えていたら、誰もそこを通り抜けることはできないだろう。

結論

正直、ここから先は非常に複雑な選択肢の話になる。リソースをどう使い、いつ使うのか、そして何が何に勝つのか、他にも色々だ。
しかし、今回の初歩的な説明で、少なくともゲームの考え方や、立ち位置の決め方、スペシャルを使うタイミング、戦闘の挑み方についての基礎は理解してもらえたはずだ。

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