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古材鑑定士4:古民家によく使われる木材図鑑
はじめに…
古材鑑定について、古材鑑定の基礎知識をできるだけわかりやすく解説します。木材の基礎知識、古材の強度、古民家再生などを学ぶことで、古材の価値を正しく理解し、古材鑑定士の知識を得ることができます。伝統建築の魅力を再発見し、未来へと継承するための知識を身につけていきましょう。
今回は、一番気になる木材についてです。
古民家によく使われる木材図鑑
1.梁や桁、小屋組には「松」が多い。全国的に、松は油分が多く粘るがあり、曲げに対して強いため、梁や桁、屋根を支える小屋組など、地面に対して水平方向の部材で一番多く使われている。
2.柱に使われるのは「檜」や「杉」が多く、一部「欅」(けやき)や「桜」などの広葉樹も使用される。
3.「檜」と「杉」は、針葉樹で木目が真っ直ぐな、柔らかい木材なので、加工しやすく柱や内部の化粧材に幅広く使われる。
4.大黒柱や内部の直接目にふれる部分は、「欅」や「桜」などの広葉樹が使われる。広葉樹は木目が美しく、床の間の板やフローリング、家具などにも幅広く使われる。地域によっては、「楢」(なら)も使われる。
5.水に強い木材として、「栗」や「ヒバ」がある。
古民家に使われている木材の90%以上は、松、檜、杉、欅、桜である。木材の見分け方は、使われている部分、木肌・質感で見分けるが、古材の場合には表面が変色しており見分けがつきにくいため、長年の経験を重ねる必要がある。
<< 主な木材図鑑 >>
■針葉樹
1.松
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油分が多く含まれ粘りがあり、梁などに使われる。磨くと艶が出て輝くことから、床材などにも使われるが、シロアリなど虫害には弱い。
古民家に使われる松は、輸入材である米松ではなく、「地松」(じまつ)と言われる「アカマツ」「クロマツ」である。松は本州の北部から四国、九州、屋久島にまで広く分布しており、「アカマツ」は、一般的に海辺から離れた場所に多く、対して「クロマツ」は海辺に近い処で見られ、海岸の防風林として広く造林されていた。
また、両者の間の雑種「アイグロマツ」と呼ばれるものもある。
また、「カラマツ」と呼ばれる冬に葉が落ちる松で、海抜が1000㍍を超えるような場所に生息するものもある。樹形はやわらかいイメージだが、木材は褐色で硬質な感じである。
北海道に生息しているもので「エゾマツ」「トドマツ」がある。
「エゾマツ」は木肌は桃色だが、空気に触れているとだんだん色が濃くなる。匂いのない木で、ヤニも少ないため、バイオリンやピアノなどの楽器につかれる。
2.杉
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日本中で伐採され、住宅に一番多く使われる。柔らかく、吸放湿率が高いたね、湿度管理に優れた木材。赤身は腐朽しにくく、土台にも使われ、柱・桁・板材など住宅に適したオールマイティな木材。屋久杉や秋田杉、吉野杉などの有名な産地も多く、柾目だけでなく、板目や杢目などの美しい様々な表情を見せてくれ、和菓子の箱や割り箸などにも使われる。
3.檜
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香りが良く年輪が均一ではっきりしない。キメが細かく加工性が良いため、住宅の柱に多く使われる木材。水に強く腐朽しにくいため、柱材だけでなく土台にも使われる。白い木目は寺社仏閣に良く似合い、多様されたことから高級なイメージがついた。仏像や浴槽などにも使われ、鉋(かんな)で削ると美しい光沢が出てくる。
4.ヒバ
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ヒノキチオールが豊富にあり抗菌作用が強く、独特の香りがある。土台や浴槽などに使われ、将棋盤にも使われる。ヒバは能登の方では「アテ」とも呼ばれる。よく似たものにアスナロがある。※ヒバの芳香成分はヒノキチオール。 その名から、ヒノキに含まれていると思われがちですが、ヒバにはヒノキのより多く含まれています。
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5.栂(つが)
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キメが細かく木目が美しいため、柱などにも使われる高級木材。針葉樹としては強度があるのが特徴。
:その他
6.一位(イチイ)
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古くは宮廷で高い地位のある人が用いる笏(しゃく、コツ)(衣冠束帯に着飾った人が手にする細長い板)の材料。
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7.銀杏(いちょう)
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葉が幅広いため広葉樹と間違われるが針葉樹。年輪がはっきりしない、やや黄色みががった白色の木材で、木目が精密で加工しやすいため、まな板や漆器などに使われる。
8.サワラ
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限られた地域にしかない珍しい木のひとつ。サワラに似た木材として、北アメリカから輸入されている「米松」(ベイマツ)があり、サワラの中の「トガサワラ」と見た目の違いがわかりにくい。
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9.イヌマキ
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イヌマキは温かい地方に多い木で、静岡では茶畑の垣根などとして植えられている。年輪はよく見ないとわからないぐらいぼんやりとした薄い褐色をしており、シロアリに強い木材なので、シロアリの害に悩まされている沖縄などでは貴重。
10.ネズコ
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本州北部から四国、九州までに分布しており、天井の板などに使われる。最近の住宅でよく耳にする「米杉」(ベイスギ)がこれに近い。
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■広葉樹
11.栗
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北海道南部から本州、四国、九州に分布。水に強く、硬くて強度があり、しかも耐久性が高い。防虫や防腐の効果のあるタンニンを多く含み、土台や柱などの構造材に用いられるほか、杭や枕木にも利用される。
12.欅(けやき)
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北海道を除く全国に分布しており、年輪の境に大きい道管が環状に配列しているため、年輪がはっきりと見える。肌目が荒く、杢(もく)は美しく高級感があり、家を支える象徴として、大黒柱などに多く利用される。床板(とこいた)などにも使われる。成長が良いと年輪幅が広く、比重は高く重硬になり、木材の表面は光沢が目立つようになる。成長が悪いと木材は軽軟になり、光沢が少なくなる。大径になった欅には瘤(こぶ)が出たりするため、木材の中の繊維の配列が不規則になり、いろいろな形の杢が現れる。需要が多いため、輸入材が「南洋ケヤキ」という商品名などで販売されていたりする。
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13.桜
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欅に並ぶ高級感のある木。欅と比較するとおとなしく上品。ヤマザクラ、ウワズミザクラなど多くの種類があり、大黒柱や床板(とこいた)、テーブルなどの家具にも使われる。ただ、「カバザクラ」、「ミズメザクラ」などの材種は桜ではなく、カンバ類の木材であるため注意が必要。
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カバザクラと呼ばれるバーチ材は、家具や建築材としてよく利用される木材の一種です。シンプルな木目・色味が定評で、しかも十分な硬さがあるためフローリングの適材としても知られています。バーチ材は硬くて床材に適した木材ではありますが、傷がつきやすいデメリットがあります。
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14.楢(ナラ)、ミズナラ
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広葉樹では、日本で最も普及している木材。木目が美しく重厚で固いことから、床材や家具にも持ちいられる。また、木目の美しさから、薄くスライスして化粧合板の表面にも使用される。
:その他
15.桐(キリ)
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野生のものはなく、北海道南部から南の各地に植栽されている。有名な産地としては福島の会津桐、岩手の南部桐や新潟、茨城など。桐は高い寸法安定性があり、家具などによく使われる。成長は早く、短期間で木材が得られる樹種。
16.桂
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軽軟で、加工がしやすいため、家具用材、特に引き出しの側板として定評がある。しかし、最近生産量が減り、需要が追いつかなくなってきたため、値段の安い南洋材の中から材質が比較的似ているものを「ナンヨウカツラ」という名前で代用することが多い。
17.楡(ニレ)、ハルニレ(アカダモ)
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一般に言うニレはニレ科の樹木の総称で、ハルニレ、アキニレ、オヒョウニレなどが含まれる。かつては、欅やタモの代用とされていた。
材はやや重硬で、表面仕上げにはやや難がある。木理はほぼ通直でタモと風合いが似ているため「アカダモ」とも呼ばれる。北海道のイメージを表すときに「エルム」という名でこの木が使われる。同じ仲間には、このハルニレのほかにアキニレとオヒョウニレがある。幹に瘤(こぶ)のあるような場合には、美しい杢が材面にあらわれ、化粧的な価格が高くなり、その杢の現れ方によって色々な名前が付けられている。
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18.ブナ
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北海道南部から本州、四国、九州に分布しており、かつてブナ類は良質材とはされていなかったが、蓄積が多く、利用技術の開発が精力的に進められた結果、広く使われるようになった。板目面では、ゴマのような濃い色の点となり、柾目面では帯状の虎斑(とらふ)となる。保存性が低く、伐採後直ぐに薬剤処理をしないと、変色や腐朽を起こしやすいのが難点。曲木家具の代表的な樹種。(曲木家具:およそ180年前にミハエル・トーネットが考え出した、木を蒸して曲げる表現技法を使った家具)
■古材鑑定士4のポイント
木にはそれぞれの特性があり、特性を活かして古民家には様々な木材が使用されている。構造部分で多く使われるのは、木目が狭くて均一な針葉樹である。柔らかく、加工しやすいのが特徴。広葉樹は木目が広く、なめらかで粘り強い。堅く、傷がつきにくいのが特徴。古民家は地産地消のため、地域により使用する木材は様々。どんな木材があるのかチェックしよう。
■最後に…
木材の種類を覚えるのは大変だか、これからは、木材を見る目がかわるはずだ。特に古材は、変色していたり、木肌がよくわからなかったり、特定が難しいと思う。使用している場所なども考慮しながら、棟梁の気持ちになって類推していくことに、楽しみも感じる。
■次回は、 木材の乾燥方法
(財)日本木材総合情報センター WEBサイト参照
古民家の調査と再築:一般社団法人住まい教育推進協会
古民家鑑士は誰でも受験できますが、この本を購入することが必要です。
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