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古材鑑定士2:木材の強度
はじめに…
古材鑑定について、古材鑑定の基礎知識をできるだけわかりやすく解説します。木材の基礎知識、古材の強度、古民家再生などを学ぶことで、古材の価値を正しく理解し、古材鑑定士の知識を得ることができます。伝統建築の魅力を再発見し、未来へと継承するための知識を身につけていきましょう。
今回は、基本的なことだけおさえましょう。
■木材の強度
■ヤング係数
「ヤング係数」は、材料の強度や弾性を表す指標のひとつです。大きいほうが強い。
木材の梁などに均等に軸圧縮力を加えると、軸圧縮力に比例した縦ひずみを生じる。圧縮力に応じた縦ひずみに対する比。この比例定数のことを「ヤング定数」といいます。材料によって決まります。
※ヤング係数:ベイマツ10KN/mm2、ひのき9KN/mm2、すぎ7KN/mm2
木材に力を加えると、下図のように一定のところまではひずみと力が比例関係となり、その後、破断します。この時の関係式は、フックの法則でσ=E×εとなります。(応力度σ:シグマ、ひずみε:イプシロン)
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ヤング係数は、材料によって一定の値があり、例えば同じ寸法なら、鋼材を使ったほうが、木材より「たわみ量」が1/10~1/30ほど小さくなる。
「たわみ量」を少なくするには、材料の断面を大きくする必要があり、その方法として、厚み(梁成)を増す、幅を広げることが考えられるが、厚み(梁成)を増すほうが効果的。
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例えば、幅を2倍にしても「たわみ量」は1/2にしかならないが、厚みを2倍にすれば「たわみ量」は1/8になる。住宅の梁などが、縦長の長方形をしているのはこの理由による。
※たわみ量は、梁幅bに反比例し、梁成hの3乗に反比例します。
■2つの支点間に木材の梁を置いて中央に力をかけたときに働く曲げ応力は図のようになります。
上から加重Pがかかると、梁は下に曲げられ、上半分には圧縮力、下半分には引張力が作用します。それによって、曲げモーメントMが発生し、梁内部に応力σが発生します。
:曲げモーメントM:部材を曲げる力M=PL/4
:断面係数Z:曲げる力に対する強さ抵抗力を表す断面性能
:b:梁幅、h:梁成、L:梁の長さ
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1.中央点での「曲げモーメントM」が最大となりM=PL/4
2.断面性能を表す「断面係数Z」は、断面形状と寸法で決まり、梁幅に比例し、梁成の2乗に比例します。※梁幅を大きくするより、梁成を増し縦長にする方が、断面性能が上がります。
3.たわみ量は、梁幅bに反比例し、梁成hの3乗に反比例します。
■比重と強度の関係
比重の大きなものほど強度及び「弾性係数」は大きくなり、繊維方向に圧縮したものの比強度は、檜47N/㎜2で、鋼材(SS400)の比強度52KN/㎜2に近く、含水率15%前後における含水率1%の増減に対し、圧縮強度の増減は約6%。
■欠点と強度
木材の欠点と考えられる 節、丸身、繊維の傾斜(目切れなど)のうち、節による影響は最も大きく、無欠点木材によるに対し、強度が低下する。上記以外の欠点には、割れ、曲がり、ねじれ、入皮(材中に樹皮が入り込んだもの)、あて(色が濃く繊維素が少ない異常成長部分)、かなすじ(材中に鉱物性結晶が沈積したもの)などがある。
■古材鑑定士2のポイント
木材の許容応力度は設計に用いる場合、「ヤング係数」という指針を用いる。ヤング係数とは、木材の力学的性質を示し、木質構造物の設計をする上で、最も重要な情報である。二点間に渡した薄い板の上に乗ると、板がたわむ。この曲がり量は「たわみ量」と呼ばれ、建築物の設計では、この「たわみ量」を制限し、それを越えないように設計しなければならない。
「たわみ」を解決するには、梁成を増すのが効果的。
(補足※たわみδ(デルタ)は1/300以内かつ2cm以内として設計します)
でも、古材鑑定士が「たわみ」を計算するなど、あるとは思えません。一応、本の内容に添って解説しましたが、古材鑑定士の試験に計算問題が出るわけでもなく、基本的なことだけ確認すれば良いと思います。
■最後に…
余談ですが、杉材(E=700KN/cm^2)で、梁幅b=12cm、梁成h=30cm、長さ360cmの梁の中央に、80Kg(0.8N)の人が乗った場合、真ん中で何センチたわむのかを、上記の式:たわみδ=P*L^3/(48*E*I)で、計算すると、0.04cmとなります。ほぼたわみません。1/300以内(3600/300=1.2cm以内)かつ2cm以内も十分満足しています。たわみの場合は、cmに単位を揃えて計算するのがコツです。
■次回は、腐朽と防腐方法
古民家の調査と再築:一般社団法人住まい教育推進協会
古民家鑑士は誰でも受験できますが、この本を購入することが必要です。
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