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古材鑑定士3:腐朽と防腐方法、害虫と防蟻対策  <閲覧注意>


はじめに…
古材鑑定について、古材鑑定の基礎知識をできるだけわかりやすく解説します。木材の基礎知識、古材の強度、古民家再生などを学ぶことで、古材の価値を正しく理解し、古材鑑定士の知識を得ることができます。伝統建築の魅力を再発見し、未来へと継承するための知識を身につけていきましょう。

今回は、幼虫の写真が含まれます。苦手な方は要注意。


■腐朽と防腐方法

腐朽菌の繁殖条件

※下記の4つのうちどれかが欠落すると木材は腐朽しない
1.適当な温度(20℃~30℃、25℃前後が最適)
2.高い湿気(相対湿度は高いほどよい。木材の含水率は28%以上、50~100%が繁殖に最適)
3.空気(酸素)の供給
4.栄養(木材自身)

腐朽の進行は木材表面にデンプン質や糖質などを栄養源とするきびの胞子などが繁殖し、難分解性分のリグニン、セルロース、ヘミセルロースを分解する能力を持つ、担子菌子のう菌、不完全菌である「木材腐朽菌」が繁殖し、木材基質(きしつ:酸素によって化学反応を触媒される物質)を分解することによりおこなわれる。リグニン、セルロース、ヘミセルロースの分解生成物は、最終的にバクテリアにより無機化される。

木材腐朽菌の中で、木材を白く変色させるものを「白色腐朽菌」、木材を褐色に変色させるものを「褐色腐朽菌」、白色腐朽菌や褐色腐朽菌が腐朽できないような、高含水率の木材の表面に軟化現象を起こさせるものを「難腐朽菌」という。

腐朽により外見や強度が劣化し、木材の乾燥重量が腐朽により健全な状態の50%以下になると、木材の強度はみこめないため交換が必要になる。

木材の劣化防止には、生育条件である水分、音頭、酸素、栄養分の要因を取り除くか、「防腐処理」をおこなう必要がある。その中で、温度及び酸素については取り除くことが困難で、腐朽防止には、湿度及び木材含水率の水分管理で乾燥状態を保つことが重要であり、一般的には木材含水率30%以下の乾燥した状態とすることや、特に建物においては、被害を受けやすい床下部分の換気をおこなうため、床下換気口の設置などが有効。また、木材腐朽菌の栄養分となりやすい木屑や紙片などを床下に放置しないようにする。

建物での腐朽しやすい部位

1.床下、水回りなど一度湿ると乾きにくい部分
2.日照、通風の悪い廊下、建物の北側
3.雨露(うろ)にさらされる外壁下部
4.常時水を利用する水回り
5.結露しやすい外壁内部、水道管の通る部位

具体的な腐朽対策

1.耐久性のある材料を使用する。
:腐朽しやすい部分には、檜、ヒバなどの耐水性の高い材料や杉の芯持ち材などを使用する
2.防腐措置を講じる
:モルタル塗りの外壁など水が入りやすい場所は下地に防水紙などを使用する:湿気がこもりにくい真壁構造の壁になどすると共に、メンテナンスが容易な構造とする。
3.換気が促進されるような構造とする。
:基礎の高さを高くし、床下の通気を促す。
:小屋裏などには、換気のための換気口を設ける

■虫害と防蟻対策

ヤマトシロアリ

日本全国に分布し、土台など湿材の辺材部分の表面に木くずを積み重ねたトンネルをつくりながら移動し食害するが、広い面積を食害することは少ない

■巣を破壊しないとだめ。イエシロアリは被害が甚大。頭が黒いのは兵隊蟻。

イエシロアリ

地中の巣に女王がおり、この巣を中心にしてトンネルをあちこちに掘る。建物に食害が及ぶ場合には大きな被害が出る。巣を発見し、摘出することで被害の進行をある程度止めることができるが、根絶は非常に難しい厄介者

タイワンシロアリ
南西諸島だは、地下に巣を作りオオシロアリタケというキノコと共存関係にある
タカサゴシロアリ
樹上にスイカほどもある大きな巣を作る
オオシロアリ
日本最大のシロアリで、鹿児島以南に生息し、2cm程度の大きさに成長する

シロアリ以外での木材の害虫と言えば、

乾燥した木材を加害。  針葉樹材を食害しない。(栄養分が少ない、抽出成分が阻害)  辺材はでんぷんが多く食害される。

ヒラタキクイムシ

壁の板やフローリングなどを食害する。夜に活動する体長が3~8㎜の茶褐色で細長い昆虫。1年に1回程度発生し、成虫になってからの寿命は3~5週間程度。成虫が木から出るときに木粉や糞を虫孔から排出するため、食害にあった木材の下に盛り上がった白い粉を見つけて被害に気がつくことが多い

アフリカヒラタキクイムシ:ヒラタキクイムシより繁殖力が旺盛で、年に数回発生し、日中に飛翔する
アメリカヒラタキクイムシ:主に関西地方で発生
ケヤキヒラタキクイムシ、ナラヒラタキクイムシ
などの広葉樹の木材を加害していた種類は、暖房の効いた部屋よりも、外気温に近い環境を好むため、最近の住宅での被害は減っている

その他にも(この教材には記載がないので、参考までに)

■シバンムシ科  お墓、古材、文化材害虫:生態がわかっていない。

<<虫害を見つけるには直径2㎜程度の孔が木材の表面に空いていないかを探し、穴に殺虫剤を噴射して駆除する。木材表面に殺虫剤を噴出しても穴の中の虫を駆除することは出来ないが、新たな産卵を避ける効果はある>>

シロアリの防蟻対策

早期発見が重要。定期的に検査し被害が少ないうちに駆除する必要がある。
気を付けるべきことは、予防の方法としてシロアリ駆除の薬剤を床下に散布することが多いが、この薬剤は農薬であり劇薬で人体に悪影響があるということを理解しておく。
防蟻対策の基本は、直接的にはシロアリの建物への侵入であるが、シロアリは腐朽とセットで被害が発生する。腐朽対策と同じく、木材を湿気させないことが最も大切な予防策となる。

シロアリの駆除対策

残念ながら、シロアリの蟻害が発生した場合には、食害部分を取り除き、巣を駆除する必要がある。食害を受けて損傷した部分は新しい木材に交換する。

その他の防蟻対策として、

1.床下と外壁外周の地盤に対して、防蟻剤で土壌改良する。処理方法として、散布法、混合法、加圧注入法などがある。
2.床下にコンクリートを打ち、防湿をはかると共に、地中からのシロアリ侵入を防ぐ。
3.基礎と土台の間に、防蟻板を設けるなど。

品確法に定められている高耐久の樹種

針葉樹では、檜、ヒバ、米杉、米ヒバ、タイワン檜
広葉樹では、欅と栗の心材
、が指定されている。

■古材鑑定士3のポイント

1.木材が腐るのは「木材腐朽菌」と呼ばれる微生物が糸状の菌糸を木材の細胞内孔(さいぼうないこう)に多数伸ばして、木材のリグニン、セルロース、ヘミセルロースなどの難分解性分を分解することで発生する。木材部球菌は、種類により分解機能も腐朽の外観も異なる。
木材腐朽菌には、木材を白く変色させる「白色腐朽菌」、木材を褐色に変色させる「褐色腐朽菌」、軟化させるもの「軟腐朽菌」がある。
2.建物を食害するシロアリは、自然界では枯れ木の中に巣穴を作って生活している「ヤマトシロアリ」と、地中に穴を掘り、木くずや土で固められた大きな巣を作る「イエシロアリ」の2種が有名。また、「ヒラタキクイムシ」も要注意。

■最後に…

この本には掲載されていなかったが、最近猛威を振るっているシロアリ。輸入材が増えてきたので、中にいたのでは。

アメリカカンザイシロアリ

■原則、土の中に住んでいる。死んだ木の根っこが好き

建築医の観点では、

■シロアリは、乾燥しているところにも、陽の当たるところにもいる。湿気たところにいるのではなく、暖かい南側も好き。水分とはあまり関係がない。と言います。参考までに。

シロアリの侵入パターン

■1.1㎜の隙間があればシロアリが侵入する。断熱材の中を掘って侵入することもある。わずかな隙間を上がる。
■コンクリートの気泡からも入る。
■基礎の化粧モルタルからも入る。
■べた基礎であっても隙間から入る。
■床下を防蟻処理していないOMソーラーも入る。
■土台と基礎の隙間。玄関枠も多い。
■断熱している配管からも上がる。
■防蟻タイプの断熱材は食べられないが隙間を上がる。
■空中蟻道h羽蟻の出口。後ろの羽が大きく飛ぶのが苦手、グライダーのように飛ぶ。
■雨漏れがあれば上まで上がる。鉄骨も上がる。マンションにも出る。
■基礎外断熱から上がる。壁の断熱材のなかを通り3階軒裏まで上がる。断熱材の中は水を運べる。
■床下換気扇や床下調湿材や石も意味がない。防蟻シートも小さな穴が開けば入る。
■新しい檜は精油成分がきらいなので効果あるが古くなれば意味がない。
■柿渋も中を食べるのであまり意味がない。研究データは良い結果が得られるような試験をするので信用できない。
■ホウ酸はホウ酸を塗ったところは食べられないが、
■炭もあまり効果がない。
■イエシロアリは食べるスピードが速く、2万~3万匹の大群になる。巣は1mから1.8mくらいあることも。
■床暖房している場合、2年くらいの点検を怠らない。出れば少量の薬剤で処理。

■次回は、古民家によく使われる木材の種類




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