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古材鑑定士6:古材の強度

はじめに…
古材鑑定について、古材鑑定の基礎知識をできるだけわかりやすく解説します。木材の基礎知識、古材の強度、古民家再生などを学ぶことで、古材の価値を正しく理解し、古材鑑定士の知識を得ることができます。伝統建築の魅力を再発見し、未来へと継承するための知識を身につけていきましょう。

<< 古材の強度 >>

■経年変化による古材の強度の増大

千葉大学名誉教授の小原二郎氏が書かれたNHKブックスの「木の文化をさぐる」の中に、法隆寺古材は心材より強いとして、

「なぜなら木は、伐り倒されてから200~300年までの間は、圧縮強さや剛性がじわじわとまして、2,3割も上昇し、その時期を過ぎて後、緩やかに下降しはじめるが、その下りカーブのところに法隆寺材が位置していて、新材よりもなおⅠ割くらい強いからである。バイオリンは古くなると音が冴えるというが、これはこの材質の変化で説明できる」と書かれている。

一般に、鉄やプラスティックなどの材料は、新しい時が一番強く、古くなるにつれて弱くなってしまうが、逆に、

木材は、時間とともにどんどん強度を増していく。樹齢100年の檜の場合、伐採されてから100年後に最も引っ張り強度・圧縮強度が増している。木材の強度は200~300年は変わらず、木材の強度が落ちるのは伐採後800~1200年という途方もない未来の話

であり、古民家は最近の住宅とは比較にならない良質な木材が贅沢に使われた耐久年数の長い住宅である。

特定非営利活動法人 活木活木森ネットワーク|きづかい.com より

少子高齢化で新築の着工戸数も減少傾向であり、また古民家が持つ風合いや自然素材を使った住宅などの流行で、古民家にも注目が集まり、近年は地球環境破壊問題で、エコに関する意識の高まりから、古民家の持続可能性ひいては持続可能な社会への関心と期待が高まっている

現存する古民家の多くは非常に長い耐久性を証明しており、それは構造材=骨組みの堅牢さ故である。構造材が堅牢であればそれを再活用することで環境負荷の軽減に役立つ。持続可能な住居を考えるならまず古民家の構造材に目を向けて学ぶ必要がある。

■古材活用の歴史

昔、戦国時代が終わり、「平和な江戸時代」が訪れると都市部を中心に建築ラッシュが起きた。また「ケンカと火事は江戸の華」と言われるように家と家が密着した江戸の長屋造りは火事になると多くの家が焼失した。こうした中で、木材の需要が増加し、各地で森林が荒廃するようになり、洪水や崖くずれが頻繁に発生した。

そこで、幕府や各地の諸藩は木材の切り出しを制限し、森林の保全に乗り出した。結果、材木の価格は高くなり、材木をリユースする動きが活発化し、一度使われた建築構造材が古材として、再度建築に活用することが定着した。これが、古民家において木材再利用技術が発展した背景であり、現在いわれる持続可能な住宅の基礎は「江戸時代」の日本に存在していた。

昭和に入り、戦後の高度経済成長期には、大量生産・大量消費が推奨され、住宅も使い捨てのような時代になった。欧米の住宅の耐用年数が70年以上と言われる中、日本の住宅の耐用年数は約30年と言われている。30年程度持てばいいので住宅に使われるものは安価でそこそこの耐久性さえあればよく、手間をかけてリユースすることもなく使い捨てにされてきた。また、住宅の工業化が進み、自然素材などの規格化しにくい物は敬遠され、また工事期間が長くなる湿式工事と呼ぶ左官工事も敬遠され、持ってきて取り付ければ終わりという建築材料=「新建材」が重宝がられた。

しかし、不幸にもこういった「新建材」には、人体に悪影響を及ぼす物質が含まれており、「シックハウス」という新たな社会問題を引き起こした.人々は安全な住宅を求め、自然素材、左官の壁など、昔の民家では当たり前であったものをまた取り入れようとしている。

時代は繰り返すというが、今まさに時代は循環型社会への構造改革が必要とされている。

持続可能な社会とはそもそも何か、経済学者のハーマン・E・デイリーは3原則を示している。
1.再生可能な資源は供給源の再生速度を超えることなく利用する。
2.再生不可能な資源の利用速度は再生可能な資源に転換する速度を超えないように利用する。
3.汚染物質の排出速度は環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を超えないように「しなければならない。

江戸時代はほぼ国内の資源で自給し、上記の三つを満たした持続可能な社会であった。いまさら江戸時代に戻ることはできないが、先人たちの知恵を学び活かすことは大切なことである。

■低炭素化社会への貢献

地球温暖化が世界規模の深刻な問題となっている現在、家造りの観点でも二酸化炭素の削減を促すべく、日本の住宅政策は「良いものをつくって、きちんと手入れして、長く使う」という考え方へ移行している。

この考え方は、住宅の耐用年数を延ばし、建て替えのサイクルが長くなれば、無駄な二酸化炭素を減らすことができる。定期的なメンテナンスをおこなえば、無駄なエネルギーロスも減らせ、生活の中での二酸化炭素削減にも繋がる。

世界の住まいの平均寿命を見ると、日本の約30年は極端に短命で、さらに立て替える度に貴重な資源を消費し、大量の廃棄物を生み出している。そういう観点で建物を見直すと、ことさら建物の耐久性を決定づける構造部分の性能について重視する必要がある。

現在、日本では、木材が最も円熟する前の段階で捨てられている。民家・町家の多くは解体され、その多くの価値ある古材は廃棄されている。

廃棄されるということは、最終的に焼却処分がおこなわれ、

焼却することにより、大気中に二酸化炭素を排出することになる。なぜなら、木材の重量の約43%は炭素であるからである。

■古材鑑定士6のポイント

古民家鑑定は、建物全体の現在のコンディションを調査し、コンディションの明確化と価値を提示する。古民家のトータルインスペクション。
古材鑑定は、古民家の構造部材を調査する。骨組みについてのインスペクション調査となる。

■最後に…

萩城跡にある「花江茶亭」は、安政の初め(約1854年頃)、萩城の三の丸内に位置し、橋本川沿いにあった別邸「花江御殿」(川手御殿・常盤江御殿)内に造られた茶室です。その後、明治22年(1889年頃)に、品川弥二郎らの主導で買い取られ、現在の萩城跡指月公園内へ移築されました。
このように、現在残る文化財の建物は、移築されたものが多い。再利用しやすい構造であったことと、建物を大切に扱っていたのだと感じます。

■次回は、古材に含まれる炭素量

特定非営利活動法人 活木活木森ネットワーク|きづかい.com
古民家の調査と再築:一般社団法人住まい教育推進協会
古民家鑑士は誰でも受験できますが、この本を購入することが必要です。

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