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古材鑑定士8:古材の定義
はじめに…
古材鑑定について、古材鑑定の基礎知識をできるだけわかりやすく解説します。木材の基礎知識、古材の強度、古民家再生などを学ぶことで、古材の価値を正しく理解し、古材鑑定士の知識を得ることができます。伝統建築の魅力を再発見し、未来へと継承するための知識を身につけていきましょう。
<< 古材とは >>
■古材の定義
世界最古の現存する木造建築は「法隆寺」で、その築年数は約1300年。
日本の木造建築はそれだけ歴史があり、耐久性も高いものである。≒1300年の」年月が流れたにもかかわらず、柱である檜の木にカンナをかけると、真新しい檜と同じ爽やかな香りがしてくると言われている。戦前までは、このような重要文化財に指定されるような建築物だけではなく、日本の豊富な森林資源を利用した古民家や町家にも良質の木材が使われていた。先人は、建築物について「材木をリサイクルする」という考えを持っており、時間と共に強度を増す木材は新築、建て増しなどの」リフォームなどに使い回しされることが普通で、経年変化により強度が落ちる鉄やコンクリートとは異なる。木材は、時間経過により引っ張り強度・圧縮強度が増す再利用に向く資材である。
古民家などに使われるリサイクルできる木材を「古材」と定義する。50年以上経過した建物に使用された木材であり、国産自然乾燥材でもある。
■再利用できる古材とは
古材として産出される樹種は、伝統的に地域で建築に使われていた樹種で、再利用できないものはない。現在、一般的に広く流通している樹種としては、杉、檜、松などである。その他の樹種は地域性があり、また、欅、栗、桜、トガ、赤杉、ヒバ、アスナロ、クス、カバ、ブナなどは価値も高く、小屋裏にある煤竹(すすたけ)なども再利用できる。
■部材については、以下の傾向がある。
1.再利用の際、重視されるのが柱・差物・梁といった主要な構造材である。○
2.土台は、腐朽・虫害などにより良好な状態が保たれていない場合が多く、再利用しにくい。△
3.外壁の板材は取り出しに手間がかかるが、商業施設などへの再活用の要望は高い。○
4.板物などの造作物は加工を施して再利用できる。○
■部材の寸法については下記の傾向がある
1.材の寸法が大きければ大きいほど製材などにより利用範囲は広くなる。ただ、大径材は入手しにくくなっており、太い大黒柱、せいのある差物は特に希少価値がある。
2.小径材は構造体としてでなく、ほかの用途に再利用できる。
■再利用にあたっての問題点
古材を再活用するにあたりいくつかの注意点があり、伝統構法住宅から産出されたものより、在来工法から産出されたものが、より問題を多く含んでいる。これは、工法上の違いによるものである。
1.金物の使用
一般に金物と木材の相性はよくなく、金物を使用した部材は、古材再利用の観点から注意が必要で、再利用には適さない。
→金物と木材の表面温度が異なり、壁体内の場合、表面温度の低い金物に結露が発生し、木材を腐朽させる原因となる。
→金物を使っている構造体は、部材断面が比較的小さい。
2.接着剤の使用
接着剤を使用した部材は、古材利用の観点から以下のような点が指摘でき、再利用には適さない。
→再利用を目的とした解体の際、接着剤を使用した部材を良好な状態に保ちながら解体することは容易ではない。
→小径材・部材寸法の小さいものを接着して使っているため、材に希少性が無く、使用用途が少ない。
3.断面の欠損
断面欠損がある部材は、古材利用の観点から以下のような点が指摘でき、再利用には適さない。
→断面欠損のある部材は、必要に応じて補修などをおこなう必要がある。
→構造体に再利用する際は、十分な構造的補強を検討する必要がある。
→構造体に再利用する柱の断面欠損の目安は、1/3が限度とされており、それ以上は補強が必要となる。
4.腐朽・虫害による損傷
腐朽・虫害による損傷がある部材は、古材利用の観点から以下のような点が指摘でき、再利用には適さない。
→腐朽・虫害の部分は、切削をおこない、除去し、必要に応じて埋木などの補修を施す。
→構造体に再利用する際は、十分な構造的補強をおこなう必要がある。
■長持ちする木材とは
住宅に使われる木材は時代とともに変化している。木材需要の約4割、国産材の需要の55%が建築関係で消費されるが、輸入木材の増加により、国産材の自給率は27.9%にまで下がっている。
日本の高温多湿の気候風土の中で生育した国産木材の方が湿気の少ない海外からの輸入木材より、長持ちする。湿気の多い日本では、湿気を吸いきれずに腐りやすいと推測される。
一般的な住宅(在来工法)の場合、0.2立米/㎡の木材が使用されており、柱については、国産材(製材・集成材)のシェアは約6割、集成材がその半分を占める。対し、梁・桁などの横架材は米松を中心とする輸入材(製材・集成材)が9割以上であり、土台についても、輸入材(製材・集成材)が6割を占める。
戦前は、国産材使用が主流で、品質も高かったが、戦後から1960年代前半は国産材の比率は高いものの品質が低く、1960年代前半以降、輸入木材が増え、1965年以降は、輸入木材が非常に増加した。
輸入木材増加の原因は、国産材に比べ安価で、大きな材料が取れること。
木造住宅の建設費に占める木材費用の割合は15%以下。日本の住宅平均耐用年数30年を、欧米並みの70年以上にするためにも、地元の国産材に目を向けるべき。
古材は国産材であり、気候風土にあっていて、乾燥が進み強度が上がっているため、長持ちする木材という点で、再利用に最適である。
■古材鑑定士8のポイント
「古材の定義」は、築50年以上の伝統構法、並びに在来工法の建築に用いられた国産の自然乾燥材と定義する。
■最後に…
山口県産材木造建築検証会に参加して(事例)現在の森林の様子
山口県の7割を占める森林。そのうち4割以上が木材生産のために造林された人工林。戦後の高度成長期に一斉植林された木が半世紀過ぎた今、伐採適齢期を迎えている。昔から、地元の木材を建築物に使うと、同じ気候風土で育っているため長持ちすると言われている。又、伐採されてからも育ってきた年数以上の耐久性を持つという。
地域の森林資源を守る上でも、今後も国産材を使用していくべきだと考えます。
■次回は、仕口と継手
古民家の調査と再築:一般社団法人住まい教育推進協会
古民家鑑士は誰でも受験できますが、この本を購入することが必要です。
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