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【MTG】ブラフを楽しもう!
ある日のこと。私はdiscordで友人がMTGアリーナで青黒のパーミッションデッキ(どちらかと言えばコントロールよりのデッキ)を回しているのを拝見していた。彼の手札の枚数は多いが、重めのスペルを唱える相手のデッキに有効なカードは少ない状況。少なくとも彼の手札には打ち消しは無く、マナを立てて構える意味は特段ない状況だった。
ここで私は「カウンター持ってるブラフでマナを立ててターンを返すプランも有り」と口出しをする。先述したとおりこちらの手札の枚数は多いので、カウンターを匂わせるには十分な状況が揃っており、相手目線で高マナのカードを唱えることにリスクを与え、動いてもらわないということに賭けるべきだと考えた。そうして警戒させているうちに、いつかは本物のカウンター、あるいはそれを探すドロソを引き当てられるとも思ったからだ。
しかし、友人は「いや〜、私、ブラフ嫌いなんで」と言い、そのまま手札の小粒なクリーチャーを展開。土地が寝ることで、カウンターが唱えられないことを確認した相手は高マナのクリーチャーを展開し、盤面は厳しくなった。
このエピソードを引き合いに出したのは、「ほれ見たことか、俺の言うとおりブラフした方が良かったろ?」と言いたい訳ではない。もちろん、ブラフをかけたところで相手がカウンターを警戒せずに高マナのクリーチャーを展開し、彼がやったとおり小粒なクリーチャーを展開した方がマシだった可能性はもちろんある。私が引っかかったのは「ブラフ嫌いなんで」という言葉であった。
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カード「ゲーム」である以上、勝とうが負けようが、その人の好きなプレイ、楽しめるプレイをすべきだと私は考える。であれば、ブラフが嫌いである以上、ブラフをするようなプレイングを押し付けることはない。ただ、ゲームであるからこそ、ブラフはゲームを楽しむスパイスであり、食わず嫌いはしないで欲しいということを私は声を大にして言いたいのだ。
そこで、本稿では私なりにブラフの楽しさ、奥深さについて完全主観で記載していく。ブラフのテクニックについては舌を噛みかねないので、本稿で一切語る予定は無いが、ブラフテクニックの指南を期待されていた方向けに、国内最大手ショップにスポンサードされたプロの記事を以下に紹介させていただくのでご容赦いただきたい。
1.漫画から見るブラフの楽しさ
カードゲームを嗜むみなさんは9割方少年漫画が好きだと勝手に思っている(女性を含めて)。少年漫画の花と言えば、やはりバトル漫画。そして、このバトル漫画にはブラフを活用する場面が多く存在し、そのブラフの巧妙なテクニックに読書の我々は心踊らされてきたであろう。
国民的人気を博した漫画、「鬼滅の刃」においても主人公である竈門炭治郎が1話目からいきなりブラフアタックを噛ましてくる。
その場面をこちらから試し読みできるのでご存知ない方は、ぜひご覧いただきたい。このリンク誘導によりシーモアさんから何か貰えたら嬉しいけど自分にはそのスキルが無い!くやしい!。
作中の味方最強クラス格である冨岡義勇と対決する主人公の炭治郎。当然のように勝つ見込みは無いが、炭治郎は自分が格下であるということを自認した上でそれを逆手に取った攻撃をしかけ、あわや冨岡義勇の脳天に斧をぶっ刺しかける。格下のキャラがあの手この手を尽くして格上のキャラに勝とうとする心意気やそのギミックに読者の我々は高揚感を覚えたに違いない。
バトル漫画では無いが、アメリカンフットボールのスポーツ漫画、「アイシールド21」でも作中随一の人気キャラである蛭魔妖一が様々な奇襲(≒ブラフ)をしかけ試合展開を盛り上げる。
そんな彼の名言は以下のとおり
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アイシールド21-稲垣理一郎/村田雄介
この勝ちへの執念。カードゲームを楽しむ諸君にも響くものがあるのではなかろうか。「先手が取れなかった」「引きが悪い」「相手のブン回りがすごい」、どうしようも無い場面は多々ある。その中で最強の戦い方を探る、そのひとつとしてブラフもあるものだと考える。
このように少年漫画の様々な場面でブラフが行われ、私たちを楽しませてくれるが、あなたは私生活でブラフをする機会があるだろうか?
学生なら学業で、社会人なら仕事でブラフをすることなんてないだろう。「ここの答えは鎌倉幕府だが、先生の虚を突いて室町幕府と回答しよう」、「見積書100万円だが、0ひとつ足してやろう」なんてことある訳ない。普通に生きていればブラフをすることなんてないのだ。
(ちなみに筆者のような悪い社会人は、「わかりやすいミスをワザと1つやることで大きなミスを隠す」というブラフ的な仕事テクは知ってる、え?やってはないよ?)
先のアイシールド21のように趣味のスポーツでブラフのようなことをするチャンスもあるであろうが、チーム戦でもあると1個人がブラフを単独決行するには勇気がいるであろう。
その点で言えばカードゲームというフィールドは漫画世界で繰り広げられる憧れのブラフを仕掛けられる稀有な界隈と言っても過言では無いであろう。ブラフをしかけるかどうかの責任は全て自分自身で負いながら、所詮ゲームなので失敗したところで実生活までに損失が発生するわけではない。そのような機会を与えられている中でブラフを仕掛ける当事者となる楽しみを味合わないでいるのは勿体ないではないか。
2.ブラフは悪か?
「でもブラフって相手を騙してるみたいで、心苦しいんです…」という聖人カードゲーマーのあなた。素晴らしい心意気です。しかし、それでも私はブラフというものは相手の力量をリスペクトした上で成り立つテクニックであると考える。
昨日のリミテ神の名シーン
— 山辺カフカ@MTGリミテッド (@yamabekafka) August 25, 2024
土地詰まりの状況で盤面で仕事していないドロー蛙やルーティング蛙を戻すかちゃんと一旦(嘘でも)悩んでから《島》を戻して出し直すことで、疑似的に《下支え》を手札に創出したの老獪すぎる pic.twitter.com/cPgVm1mzNX
MTGのブルームバロウを使った某店舗の大型大会「リミテ神」の神(優勝者)決定戦で繰り広げられたブラフの一例である。詳しい解説や状況はポスト元の激強リミテッダー女子大生、山辺カフカ女史に委ねるとして、このブラフが成り立った背景について焦点をあてたい。
ブラフをしかけた側である鈴木選手は現在のリミテ神。その意味がよくわからない方へ向けてもう少し説明すると、「~~神」という称号はボクシングのチャンピオンのようなもの考えてもらって差し支えない。つまりこれは彼にとって防衛戦となる一戦であり、敗退すれば彼の「リミテ神」という称号は失われてしまう。
対するブラフをしかけられた側の佐藤選手は挑戦者ながら、MTGのプロ大会常連者であり、公式が主催するプロリーグに選抜されたほどの強豪。語弊を恐れず言えば、ネームバリューは佐藤選手の方があり、現神である鈴木選手にとっては「最強格」の対戦者であったことに間違いない。
その佐藤選手との一戦。もちろん舐めたプレイは一切許されない。そのような状況で鈴木選手が繰り出したブラフプレイだった。
このプレイが行われた状況を解説してくれた先のカフカ女史の言葉を借りれば「上手いプレイヤーほど確率・期待値を考えてプレイをするからこそ生まれた、とても参考になるブラフ」である。逆に言えば、相手が佐藤選手ほど優れたプレイヤーでなければ、鈴木選手もこのプレイを選択しなかった可能性が高い。最高の相手としてリスペクトをしたうえで最高の舞台(神決定戦)で生まれた最高のプレイと言っても過言ではないであろう。
単なる個人的な趣味として始まったゲームが、興行的な意味合いを持ち始め「e-sports」と呼ばれだした昨今。ネットで出回る攻略情報をもとに漫然とゲームを続けたっていずれは飽きる。この定石からは逸脱したクリエイティブなブラフプレイはゲームを盛り上げるスパイスとなり、事実このプレイには大きな反響があった。
なお、鈴木選手に大変に似ている(?)「鶴木メイ」という美少女がMTGに関するブラフアタックについて述べたnoteもあるので興味のある方はぜひご一読いただきたい。
冒頭で引用した記事よりもかなり具体的なもので参考になると思われる。
3.いとをかしブラフ
ふざけた小見出しをつけて本稿の締めとする。
カードゲームの醍醐味の一つとして「会話」があると考えている。これは「そのカード強いっすね~」や「良いサプライ使ってますね」というようなプレイヤー間の会話ではなく、ましてや「いや~、カウンター持っていなくてきついっすわ~(本当は持っている)」という「口三味線」と言われるようなものではない。ここでの「会話」はプレイヤーを通して行われるカードゲームそのものを指している。
もう少し具体的に説明しよう。お互いのデッキがわからない状態から先手のプレイヤーからカードを差し出す。この時点でカードを差し出された相手はどのようなデッキか推測し始めるであろう。その推測をもとに今後もカードをプレイし…というやり取りが互いに延々と行われていく。具体的な言語を使わなくてもプレイを通すことで互いの意思が透けていく様をここでは「会話」と定義づける。
第二百九十一話#カードゲームうさぎ #エピソード・ライ太 pic.twitter.com/nl86vCtPYc
— ワタル (@urwataru) February 6, 2024
言葉で説明するには限界があるので、架空のカードゲームを題材にしたワタルさんの漫画を参考としてご覧いただきたい。ここでも「会話」という表現が出てくる。交わしている言葉は限定的ながら、ゲームを通して互いの思考を読みあっていく。
しかし、この「会話」が完全無欠に行われていく際に行き着く先は勝敗を決するタイミングとなる。もちろん実際のゲームは様々な運要素により如何様にも傾きかけるが、運とはまた別軸でゲームを動かす(楽しむ)要素としてブラフが肯定されても良いのではないだろうか。私はボードゲーム(カードゲームも内包される)の本質はコミュニケーションにあると考えており、上記の「会話」はコミュニケーションの一つであると考えている。何遍も同じ展開を続ける単調なコミュニケーションを交わすのではなく、ブラフを加えていくことでゲームに一層の趣を与えてくれるものと考える。
最後に本稿をお読みいただき、ブラフに興味をお持ちいただいたプレイヤー向けに注意喚起をしたい。結局のところ、ブラフは失敗した時のリスクが大きく、生半可なテクニックで繰り出すには損失が生じる可能性がある。あくまで一般的な定石を抑えられているかという大前提があってのことであるため、まずはそこを抑えるべきであろう。いたずらにブラフを多用しても上手くいかず自身が不快な思いをしかねない。何度か申し上げたとおりブラフはスパイスでしかないため用法・用量は適切にする必要がある。その味に自身が慣れていくという意味でも無理なく楽しんでいただけるとこを願っている。