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Happy Women's Map 東京都千代田区神田 女団十郎 市川 九女八 女史 / Onna-Danjurou, Ms. Kumehachi Ichikawa
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「踊になって可けず、踊を知らなければならず」
"One cannot simply dance; one must understand the art of dancing."
市川 九女八(本名 横田 桂) 女史
Ms. kumehachi Ichikawa
1847 - 1913
東京都千代田区神田 生誕
Born in Kanda Chiyoda-ku, Tokyo
市川 九女八 女史は最期の女役者で女性歌舞伎役者。「女団十郎」「女団州」と呼ばれる市川團十郎 (9代目)の唯一の女弟子。
Ms. Kumehachi Ichikawa is the last female Kabuki actors. She was the only female disciple of Ichikawa Danjuro (9th generation), also known as "Onna Danjuro" or "Onna Danshu."
「出窓の格子」
お桂は江戸神田で、父・横田彦八、母・なかのもとに神田豊島に生まれます。両親は旧一橋家の株を買って3人扶持となって牛込赤城城下に移住します。お桂は踊りを好み、赤城神社内の踊りの稽古場を出窓の格子につかまって毎日覗きます。そのうち板東三津江の弟子・三枝八に月謝をゆるされて舞踊また芝居の手ほどきを受けるようになります。12歳で父が急逝すると、13歳で名取りとなって板東桂八と名乗り、母と2人で牛込町に移って近所の子供に踊りの手ほどきを始めます。それから容貌のよい母は、牛込神楽坂の隠居旗本と再婚。お桂は義父の甥を押し付けられて男児を出産しますが、家を再興しようと16歳でお狂言師・板東三津江の弟子となり、一緒に加賀の前田家また讃岐の松平家また安芸の浅野家など大名家はじめ宮家の奥向きへ上がるようになります。
「菰張小屋」
まもなく明治維新の廃藩置県の騒ぎで出入りする屋敷がなくなり、お狂言師どころでなくなります。その頃、両国の菰張小屋で演じられ始めた女芝居が人気を呼び、桂八も連日通いつめて研究します。やがてお狂言師上がりの松賀慈藏一座に加わり、外神田の薩摩座へ出演。ライバルの女役者らに水銀を盛られるほど沢山のファンが詰めかけます。中でも熱心な大商人・上総屋千作の若旦那・守住新作にほだされて桂八は結婚しますが、桂八のために財産を注ぎ込んだ夫の商家は没落。桂八はこどもを養子に出し、芝居道に入った夫を狂言方・藤基介と名乗らせ、一座を連れて旅役者となります。麒麟児と呼ばれる美貌の女形・3代目沢村田之助、4代目市川小團次、9代目市川団十郎の身振りや声色をまねて、「京鹿子娘道成寺」「勧進帳」を演じ分ける艶麗な舞台姿で見物人を魅了しながら旅から旅へと稼いで歩きます。
「女団十郎」
旅から戻った桂八は、四谷の桐座・本所の寿座を根城に大奮闘。新富座で団十郎がやって評判の出し物を、桂八はすぐ翌月に演じます。場所代が安いこともあって大入りの大好評。今度は「高橋お伝夜叉譚」でお桂の演じた新しい演目を、新富座の菊五郎在団次で上演されます。当時一流の劇評家の幸堂得知ならびに依田学海らも新聞に最高の劇評を載せて「女団十郎」「女団州」と大騒ぎになります。すると木挽町に歌舞伎座を開場した福地桜痴の斡旋で、桂八は市川団十郎の直接の来訪を受けて門弟となることに。八・九代目市川團十郎や四代目市川小團次そして五代目尾上菊五郎の女房役をつとめて活躍する名女形の八代目岩井半四郎に入門。40歳で岩井粂八の名をもらって女歌舞伎役者となり、43歳で新富座の末席に市川升之丞の名を出し、成田屋一門として一座を結成。小劇場から団十郎との共演を目指します。
「月華」
ところが市川升之丞となってすぐ、新潟で「勧進帳」を家元に無断で上演した廉で、破門の上に門弟状を取り上げられてしまいます。それでも新聞などで劇評家らに「月にも華にも譬えられない美しさ」と称えられる升之丞は、守住月華の名で川上音二郎一座はじめ新派、新演劇、文士劇で「オセロ」「ハムレット」「オセロの商人」「金色夜叉」などに出演。岩井粂八の名で神田の三崎座で女座頭を務める中、ようやく50歳で、団十郎後援会・三升会幹事を務める落語家・談州楼燕枝の仲介で團十郎門下に復帰します。市川九女八と改名して、京都南座で歌舞伎を演じます。まもなく団十郎の危篤に駆けつけると付きっきりで看病し、葬式では雨に濡れながら棺桶について歩きます。そして団十郎追悼公演の「高塒」安達の老婆・諸の役で、58歳にして初めて歌舞伎座の舞台に並びます。しだいに衰える女芝居を復興させようと奮闘する中、浅草のみくに座で「山姥」「蛍狩」「保名」へ出演中急逝。享年68歳。
-『歌舞伎 (159)』(歌舞伎編輯所 編 / 歌舞伎発行所1913年)
-『名家演芸ひかへ帳』(熊谷為蝶 編 / 東雲堂1910年)
-『演芸名家の面影』(川尻清潭 著 / 宇宙堂年1920年)
明43.11
-『実践文学 (42)』(実践文学会1971年)
-『自画像』(中村千世 著 / 中村千世舞踊同人会1938年)
-『女優鑑』(井口政治 編 / 演芸画報社1912年)
-『人物日本の女性史 第9巻 (芸の道ひとすじに)』(集英社1977年)
-『物語近代日本女優史』(戸板康二 著 / 中央公論社1980年)
-『明治の女優展 : 特別展』(博物館明治村 編 / 名古屋鉄道1986年)
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