田中樹が持つ歌声とコミュ力がSixTONESの土台|「ABARERO」レビュー
SixTONESが、SixTONESであり続けることを証明した一曲が届いた。
2023年4月12日、9枚目のシングル「ABARERO」がリリースされた。
「超攻撃型HIPHOPチューン」と名付けられた最新曲は、SixTONESにとって「原点回帰」であり「現在地」であり「未来への展望」でもあるシングルとなっている。
オフィシャルウェブサイトの書きっぷりから、彼らがどれほどの思いでこの作品を作り上げたかが手に取るようにわかる。
今回は本楽曲において、かなりの割合で着色を担っている田中樹に特にフォーカスをあててSixTONESを紐解いていく。
ABAREROを操る田中樹
本楽曲において、田中の歌声は土台となっている。
常に他5人の合間を這うように声が入り込んできて、蛇のように曲全体に絡まり至る所で存在感を示す。
引きずりこむダミ声
Aメロ開始直後、まずはジェシーで一発、ぶち上げる。
相変わらずの表現力で高揚感に包まれる。
その後、森本・京本・高地・松村と登場し、最後にゆっくり現れたのが…。
そう、田中樹。
まるで前の5人を前座扱いするような主張、迫力、存在感。
その歌声に圧倒されているといつのまにかPartyに招待されている。
田中の「Are you ready Monstars?」が聞こえたときにはもう私たちは地下のパーティーでSixTONESに包囲されていてアバレルしかないのだ…。
主導権を奪う煽りテクニック
ここまで激しい曲を歌いきるには相当なスキルが必要。
歌のスキルはもちろんのこと、楽曲のパワーに負けない煽りスキル。
例えば、ジャニーズJr.が先輩のカッコいい曲を歌ったときの未熟感や手持ち無沙汰感のように、歌唱スキルが楽曲に負ける可能性も十分にあり得る。
しかしさらっと歌い上げるのが田中樹。
楽曲中盤。
楽曲のエネルギーを超えるパワーで田中の声で叩きつけてくるリリックたち。
聞いていて、強張ってしまったら、体を揺らしてしまったら、脳が高揚してしまったら、もうそれは樹の手の中にいる証拠なのだ。
彼に本領を発揮させたが最後、もうこちらに自分の感情を制御する権利すらない。主導権は田中樹に移っているのだ。
細やかなフェイク職人
いつも丁寧な仕事をする人だなぁと思っていた。
例えば、アルバム曲でありながらSNS上では彼らの代表曲に昇華されつつある「WHIP‐THAT」冒頭、合いの手のような一声。
例えば、彼らの1年目のアルバム収録曲でもあり、ライブ定番曲の「S.I.X」冒頭、息つく間も許されないような追いこみ。
譜面や歌詞には反映されないが、曲をより心地よく聞かせる効果を持つフェイク。
田中はこのフェイクを必要なときに必要な分だけ足してくれる。
まるで職人のように無駄がない。
レコーディングの際から計算されていることを含めても、田中の音楽的なセンスあってのこと。
田中は「ずっと音楽を聴いている」と自身もメンバーも語るように音楽をこよなく愛し、摂取している。努力とも思っていないだろうが、日々の鍛錬が彼のセンスを磨いている気がする。
今回のABAREROでも冒頭、ジェシーの開幕宣言に合わせた田中の「Ayy」が効いている。ライブパフォーマンスでの変化も楽しみだ。
SixTONESの隠れたバランサー・田中樹
今回は書ききれないが、田中は上述のスキル以外にも、高音のハモリなどでもSixTONESの楽曲をさりげなく支えてきた。
そしてSixTONESという組織においてもさりげなく影響を与えていることが多くある。
スタッフとのコミュニケーション
彼らはSixTONESに関わる全ての人をTeamSixTONESと呼び、仲間として巻き込んでいる。中でも田中はスタッフとコミュニケーションを取っている様子を多く見かける。
彼らのレギュラーラジオ番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」では田中はスタッフのことをあだ名で呼んでラジオに参加させている。
その中の一人、「青ソニ」はソニーミュージックでSixTONESのA&R(アーティスト・アンド・レパートリー)としてファンの中でも知れている存在。
「ABARERO」発売に伴ってリリースされた記事はスタッフのインタビューながらもSNS上でファンを喜ばせた。
「ABARERO」のメイキングでも、撮影スタッフに自ら絡みに行く姿が何度も映っていたり、「リップミスっても怒らないって約束してください」と冗談交じりにコミュニケーションを撮る姿が映っている。
SixTONESに関する心理的安全性は数作に渡って執筆してきたが、田中はその影響をSixTONES内部だけでなく、周りのスタッフにも波及させていく人格だ。
【参考】SixTONESと心理的安全性についての記事
「ABARERO」の行方
「シングルで攻めたい」
メンバーがABAREROに関して何度も口にしていた言葉。
一楽曲として見たときの「SixTONESらしさ」に加えて、
これが9枚目のシングルということが今後じわじわと響いてくる気もする。
これまでSixTONESがリリースしてきた楽曲、そしてこれからリリースする楽曲。その中にこの「ABARERO」がいることで、SixTONESの作品の平均値がぐっと「SixTONESらしい」に近づく。
数年後、シングルをラインナップとして見たときに『「ABARERO」があったからSixTONESらしさを失わなかったのかも』なんて、彼らの戦略に改めてひれ伏すところまでセットで「ABARERO」なのかもしれない。
相変わらず、私たちはSixTONESの掌の上で転がされているのだ。
そしてそれが何より楽しいのだ。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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海瑠‐uru‐ | フリーランスライター・インタビュアー
日本のドラマ・映画を中心としたエンタメ記事を執筆。
ヒトやモノのこだわりを見つけ出す・聞き出す記事を書いています。