第10ステージ
いよいよ、レースはピレネー山脈へやってきた。
30分しかない放送時間で、始まって5分の時点で、ゴールまで後25㎞の場面になっていた。全部で160㎞のコースなのに。
それだけ、ゴール間際のレース展開に注目すべし、ということなのだろう。
ツールでは、山岳賞ポイントが与えられる地点は、難易度によって5段階のレベルがある。
1-4級と、最高難易度の超級。
今回のステージ、ゴール地点が超級だった。
160㎞も走ってきて、最後にとんでもない傾斜の山道が10㎞以上続くのだ。ひどすぎる仕打ち。
しかし、そんな苛酷なステージに、クライマーたちが果敢に挑んでいた。今回の大会でBIG4と呼ばれる優勝候補が、フルーム、キンタナ、コンタドール、ニバリ。いずれ劣らぬ実力者たち。四人とも、山にも強い。
そうでなければツールは勝てない。
それでも、最後の山道で、ニバリがまず遅れ、次にはコンタドールが遅れた。
フルーム、キンタナの二人でトップ争いをする展開に。
そして、フルームがアタックした。その絶好調の走りに、キンタナは付いていけなかった。
フルームはそのままゴールまで、力強く駆け抜けた。
2位に大差をつけての圧勝に、フルームは満面の笑顔でゴールしたのだった。
強い!カッコイイ!!
これぞ、クライマー。これぞ、マイヨジョーヌ。
結局キンタナは、フルームのアシスト役だったリッチー・ポートにも抜かれ、3位になった。
ポートは、素晴らしい走りだった。でも彼は、他のチームへの移籍が決まっているらしい。チームスカイでのエースへの献身的なサポートを見てきただけに、彼がいなくなるのは、とても残念。
しかし、新天地で、彼自身がエースとなり、フルームと闘う姿を見られるなら、それもまた実に楽しみだ。
フルーム圧勝で始まった、今年のツール山岳ステージ。
なんて気持ちいいんだろう!
フルームがマイヨジョーヌを着たまま、ピレネー、そしてアルプスを走り抜けるのか。それとも果たして、彼の独走を阻む選手が現れるのか。
ああ、楽しみすぎる。