4月④世界一キライなあなたに
me before you
が原題。この、よくありがちなラブコメにしか思えない邦題はまったく損だ。
ルックスも運動神経も家柄も、仕事での成功も、美しい彼女も、すべてを持っていた男ウィルが、バイクに轢かれて脊椎を損傷し、四肢麻痺になる。回復する見込みもなく、心を閉ざした彼の介護人として雇われた女の子ルー。
徐々に2人は心を通わせるようになるが、ウィルは半年後には自殺幇助施設(スイスに実在するらしい)に行くことが決まっていた。ルーはなんとかその決意を翻そうと努力する。
このルーが、とても可愛らしい。明るく、おしゃべりで、個性的なファッションで、少しドジ。
最初偏屈になっていたウィルは、ルーに嫌がらせをして辞めさせようとするが、諦めない彼女の魅力に気づき、強く惹かれていく。
最後の旅行で、海辺で彼はルーに告白する。
「君が奇妙な服を着て、変な踊りをしてたりするのを見て、どれだけ君を抱きたくなったか。君には想像できないだろう。」
しかし、四肢麻痺のウィルには、抱きたくても、好きな女を抱くこともできない。
元々人生すべてが思い通りにいっていた男だ。耐えられない。だから、どんなにルーを愛していても、その絶望的な「生」を終わらせようという決意は固いのだ。
ルーは彼の決意を翻させることができなかったことにショックを受け、一度は彼の元を去るが、最終的にウィルの最期の時を共に過ごす。
ウィルはルーに財産を遺し、田舎町を出て自分の可能性を伸ばせ、というメッセージを送ってくれた。前向きに歩き出すルーの姿がラストシーンだ。
演出やセリフこそライトなラブコメティストだが、テーマはかなりヘビィである。
原題は、君と会う前の私、という意味だろう。お互いがあなたと会えて変われた、そんな貴重な出会い。やはり邦題はセンスなさすぎる。
もし、自分が、恋人が、配偶者が、ウィルと同じ境遇になった時、いっそ死にたい、とか死んでほしい、と思わないと言えるだろうか。いや、言えない。綺麗ごとではない。食事も排泄も着替えも1人でできないし、それどころか汗をかけなくて、体温調節ができないから、すぐ風邪や肺炎をこじらせて生死をさまよう。
愛している、だけでは乗り越えられない高すぎる壁。
ウィルが選んだ道は、障害を抱えて生きている人達にとって、安易で許せないものなのかもしれない。私などが簡単に言える問題でもない。
けれど、誰もが自分で選択する権利と自由がある。それを尊重するしかない。個人の選択を。
とても重い問題を考えさせられたけど、ルーの明るいキャラとファッションに救われた。
特に、ウィルがプレゼントしてくれたハチのような黄色と黒のシマシマ柄のタイツ!キュートすぎた!!
邦題、世界一ステキなタイツに、でも良かったんじゃない?…ないか。