エイプリルフールだった。

Sちゃんと一緒にランチしていて、Mくんの話になる。
「Mさんって上手に嘘ついて、相手を納得させちゃうんですよねー。あの口のうまさはホントにすごいです。見習いたいけど、私にはなかなか難しい。」

そうしみじみ話すSちゃんに、
「確かに彼は口ウマイよねー。なんでだろーねー。」
と笑って返すと、
「それは、今まで多くの女性に嘘をついてきたからですよ、絶対!」
と強めに断言された。

彼いわく、女性に対してついてきた嘘の実績が、Mくんの仕事上での巧みな交渉術に活かされている、らしい。

確かに、モテ男Mくんの過去の話の中には、女性に嘘をついたシーンが多く登場する。あんまり書けないけど、それはヒドイ!お前は鬼か!!と言いたくなるような嘘もある。もちろん、他人事だから爆笑しながら聞いているけど。
ただ、嘘をつかれた女性が、彼に騙された!と言って怒ったり、もめ事にはなったりしていないようだから、やはり、彼の嘘が相当上手いのだろう、と思う。

相手が真実を知らなければいい、というものでもないが、嘘って、時に必要なのではないだろうか。

たとえば、上司に、すでに知っている情報を得意気に話された時、
「えー、そうなんですか!全然知らなかったです!いや、さすがアンテナ高いですね。」
と言うくらい、サラリーマンなら誰でもついたことのある小さな嘘だろう。
そんなこと言うなんて媚びてる!とかいうやつは、組織に向いてない。運良く独立できても、顧客や取引先に気に入られないから、成功できない。もう、山で陶芸家になるくらいしかない。…言い過ぎか。

恋愛においても、有効な嘘は多い。
女子の「ここ初めて来たよ♪」とか「こんなの初めて。」はキラーフレーズだ。
実際、友達の昔の彼氏は、過去に他の男と行った場所へ行くのを嫌がり、旅行先もそれを確認してから決めていたそうだ。前述のフレーズを聞きたいがためだろうか。
ある程度は嘘でごまかせそうだけど、「サイゼリアなんて初めて!」とか「山手線初めて乗ったよー。」とか、白々しすぎる。いい年の男女が、一緒にする体験すべてを「初めて」にするなんて、土台無理な話だ。

一方で、男子は経験豊富でどんな場所でも堂々している、ことがもてはやされたりする。心中ではビクビクしつつも、その場に慣れてる雰囲気を醸し出す。そういう経験が多いのも、男子の方かもしれない。

男女では、全く逆の嘘が有効になっているようだ。不思議だ。突きつめるとジェンダー論まで飛躍してしまいそうなので、やめておく。

まぁとにかく、嘘はつくなら上手につきたい。
相手を傷つけるものでなく、いい気分にさせるものとして。その根底に、相手との関係を円滑にしたい、という気持ちがあればいいじゃないか。
むろん、これ以上付き合いたくない時の嘘も方便。

さて、この文章にも、嘘があったりなかったり。

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