自由に回遊できる9坪の家
一言でいうと、ダサい。
どこをどうとっても、褒めるポイントが見当たらない、というおうちが、ときどきある。今回はまさにソレ。
まずLDK。
どの家具も安っぽい。部屋の印象を左右するラグ、の決定的な安っぽさ。もう少し厚みのあるもので、深いモスグリーンだったらまだマシだったか。いや、でもダイニングテーブル、チェア、ソファ、テレビ台も変えないとダメか、ってほぼ全部じゃん。
あと、キッチンの水栓はこだわったようだけど、そこだけオシャレにしても無駄。無難なシステムキッチンの中で、ただ浮くだけ。
そして、トイレ。
ハイ、やっちゃいました。個室だから、自分の好きな色にしちゃいました、的奇抜カラーの壁。
落ち着かない、ああ落ち着かない、落ち着かない。
よっぽど好きなんでしょうねー、緑。
イタリアのメーカーに直接メールして取り寄せたと、自慢するくらいの洗面台。これも、このスペースの中で異常に浮いている。
私たちが家を建てた時、設計と照明や建具などのコーディネートをしてくれた女性の建築士は、とてもセンスが良かった。彼女が提案してくれたプランを見て、説明を受けた時、そのトータルバランスの良さに感動した。例えば、「この建具の色は、お客様の持っていらっしゃるダイニングチェアの色とも調和するオレンジが良いかと思いまして。」とか。「1階のよく見える所は、外国製でお値段高めだけど上質な生地のカーテンにしますが、2階のプライベートスペースはシンプルな国産の生地のもので充分だと思います。」とか。
プロはさすがである。
それぞれの照明や建具、水栓にはもっとおしゃれなものもあったかもしれない。けれど、手持ちの家具や値段なども全部踏まえて、トータルで最良になるものを選ぶ。そうすることで、家としての調和が生まれるのだ。
それを無視して、素人の浅はかなこだわりを貫いてしまうと、今回の家のように、トータルで見ると、ちぐはぐでセンスのない家になる。
餅は餅屋。
これに尽きる。