11月②ルーム
昔、デアゴスティーニか何かで、猟奇殺人をテーマにしたものがあった。姉が何号分か購入したので、私も読んだ覚えがある。
ピエロの扮装で子供に近づき、何人も殺した殺人鬼が、強烈な印象を残し、いまだ忘れられない。そのせいか、ピエロのお面をつけてバンド活動を行うような人間を、クソ悪趣味だとしか思えない。
今、「悪趣味」と言ったが、そもそも猟奇殺人の本を興味深く読む事だって、悪趣味ではないのか?
確かに、私はそういうものに昔から強い興味を持ってきた。羊たちの沈黙シリーズもXファイルも、好きで観ていた。なぜかは分からないけれど、つい惹かれてしまう。でも、デアゴスティーニで(?)出るくらいだから、同じような趣味の人間もある程度いるのだろう。
今回の「ルーム」は、高校生の時に男に誘拐され7年も監禁された上に、犯人の子供を産み育てた女性が、監禁部屋からの逃亡に成功する話。
殺人ではないが、もしかしたらそれ以上に卑劣な犯罪である監禁事件。これが冒頭に話したような特集本であれば、今まで通り興味深く読んでいたかもしれない。
ただ、この映画では、被害者の恐怖、怒り、絶望、希望、消えぬ傷、トラウマ、後遺症、それらがリアルに描かれていて、とても「興味深い」という一言では表せないものだった。
その痛みが伝わる時、もし自分にこんな事が起きていたら、と戦慄せずにはいられなかった。
そして、その痛みをより伝わりやすくしているのが、子供の視点で描かれているという点だ。
監禁された部屋で産まれ、5歳になった少年にとって、その部屋だけが世界全部であり、ママとテレビからしか知識を得ることができない。そんな異常な環境でも、子供らしく楽しく過ごそうとしていて、それがまた見ていてツライ。
ママが絶望に打ちひしがれ自分の殻にこもってしまう時には、ママが『からっぽのママ』になっている、と言い、我慢して1人で遊ぶ。
これまたツライ。
部屋から逃亡し、無事家族の元に戻った後も、トラウマから自殺未遂を起こしてしまうママに対しても、僕の髪がパワーの素だよ!と切った髪の束を祖母に託して、必死に励まそうとする。
健気すぎる。ツライ。
そうして胸に突き刺さるように伝わる地獄のような悲劇だが、最後にはこの少年こそが被害者女性の生きる希望になる。犯人に人生を台無しにされたが、産まれた子供には罪はない。彼女の恨みが息子に向かわなかったことは、唯一の救いだ。
今後、猟奇殺人や監禁事件を扱う書籍などを見る時は、この映画を思い出そう。
被害者の痛みを、きちんと、想像しよう。
そして、彼らに少しでも救いがあることを祈ろう。