見出し画像

天国みたいな中之条ガーデンズ

中之条ガーデンズは、群馬県中之条町にある町営の美しい庭だ。ちなみに中之条町はあの有名な草津温泉の隣町でもある。

この中之条ガーデンズは、2021年4月に約5年の準備期間を経てリニューアルオープンしたそうだ。今回、初めて訪れて、そのクオリティとコンセプトにとても感動したので、記録する。

7つのエリアの魅力

中之条ガーデンズは7つの異なる意匠の庭の集合体であるため、ガーデンズと複数形になっている。バラをメインとした華やかなローズガーデンから、野の花のような素朴で自由な草木が揺れるナチュラルガーデン、小さな滝が流れ込む鏡のような池を草木が縁取るエリア、木陰のベンチで寛げる癒しの森など、実に多様だ。それぞれ違った魅力があり、広大な敷地でありながら飽きることがない。さらに、この多様性は季節ごとに最盛期がずれることで、いつ訪れても楽しめる仕掛けにも繋がっている。

圧巻のローズガーデン

6月に最盛期を迎えていたのはローズガーデンだ。メインはバラの花だが、緑の樹木やあらゆる種類の草花が一体となり、見事なハーモニーを生み出していた。10メートル四方くらいのエリアごとにテーマカラーや意匠が変わり、都度、声をあげてしまうほど美しい。まるで印象派絵画の世界に紛れ込んだかのようだ。綿密に設計された庭であるはずだが、人工的な雰囲気は一切ない。全ての花々や草木が持ち場で輝きながら、一つの庭を作り上げていた。気合いの入った感じはしないのに、佇まいが素敵なお洒落上級者のコーディネートのような、真似しようと思っても簡単にはできないプロの仕事を感じさせる。

画像2
画像3
画像4

ローズガーデンを抜けると、ローズカフェというオープンカフェがある。吸い込まれるように座り、冷たいノンアルコールの白ワインを一口飲んだとき、あまりの幸せに一生ここにいたいと反射的に思ってしまった。コーヒーやお茶、ケーキに加えて、赤白のノンアルコールワインというセレクションが秀逸だ。ここで飲み始めちゃったら、長居したり周囲に影響するほど騒がしくなる人が出てくるかもしれない。だけど、ちょっと雰囲気出したいなのノンアルコールなのだ。バラに囲まれガーデンズの敷地と一体のようにつながる遠くの山々や青い空を眺めながら、思う存分カフェを楽しんだ。

町民花壇でつくる繋がり

中之条ガーデンズはプロが作り上げたクオリティの高い庭だが、それだけではない。町民花壇という取り組みこそが、この庭の真骨頂なのだ。

町民花壇は文字通り中之条町に暮らす町民の方々が作っている花壇だ。一坪程度に区切られた花壇が並び、割り当てられたそのエリアを有志のチームや個人が作り上げている。中之条町の役場の経理部や上下水道管理の部門、ママ友サークルや、仲の良い友人等、多様なチームが作り上げた花壇ががそこには並ぶ。花壇には必ずタイトルがつけられている。「新課長の元頑張ってます」というサブタイトルと共に町役場のある部署が作った「今やれ すぐやれ 早くやれ!」と題された現場感溢れる花壇、「友に捧ぐ」といった大切な誰かに向けられた祈りのような花壇、中之条の景観を再現した花壇など、あらゆる想いが一坪に表現されていた。プロが作ったものとは違うけど、誰かが構想から考えて、みんなで、時にはひとりで、その小さな花壇を作り上げたことを想像しながら眺めると、なんとも楽しく魅力的なのだ。小さな花壇はチームで行う箱庭療法のようでもあり、チームビルディングにも役に立ちそうだ。ぜひ、うちの会社でも取り入れてもらいたい。

画像4

癒しの森にある本当の癒し

最後に記録するのは癒しの森というエリアだ。順路に沿って進むと、だいぶ歩いてそろそろ座りたいなと思う頃に着く。そこには樹木が絶妙な間隔で植えられており、木陰に木製の1人用の椅子が一つか二つずつ配置されている。誰かと来たら並んで、一人で来ても周りと少し距離をとって、木陰で思う存分くつろぐことができる。すべすべとした木に包まれるような座り心地の椅子に深く腰掛ける。聞こえてくるのは木の葉が風にそよぐ音、鶯の鳴き声だけ。目の前に広がるのは緑と青い空。風に流れる雲を眺めながら、頬に当たる風を感じる。まさにそれは「今、ここ」を感じるマインドフルな時間となった。現代人の処方箋のごとく、多用される「癒し」だが、本当に癒されることは意外と少ないのが現実だ。でも、この中之条ガーデンの癒しの森では、久しぶりにただ、ただ、自然を感じ、何にも縛られない時間を過ごすことができた。

画像5

中之条ガーデンズは誰のために作られたのか

中之条ガーデンズが、なぜこんなにも素敵なのか考えてみた。ここは、中之条町に暮らす人、観光で遊びに来た人、みんなが楽しめることを意識して作られている。中之条町の人は無料で入場でき、季節ごとの美しいガーデンを楽しみ、希望すれば町民花壇で庭づくりに参加することもできる。一方で、入園料を支払っている観光客でも満足できる高いクオリティを維持している。

橋を渡った先にある謎の塔の鐘を鳴らす二番煎じの恋人たちの名所もどきや巨大なタコだかイカだかのオブジェなど、残念な観光施設も少なくない中、こんなにも訪れる人々のことを考えられた中之条ガーデンズは観光施設の希望の星だと思う。きっとみんなが喜ぶことを一生懸命考えて、誰かの笑顔を想像して計画されたはずだ。

また、違う季節に訪れ、この先も美しいガーデンズが維持されるよう、微力ながら貢献したいと強く思った。

画像6

草津温泉の帰りにもおすすめです。皆様、是非に!


いいなと思ったら応援しよう!