わが殿 ②

わが殿のテーマは2つあると思う。
ひとつは解説でも書かれた、「明日へゆかねばなりませぬ」これは主人公七郎右衛門が言った言葉。七郎右衛門が生きていた江戸時代末期~明治初期は恐らく変化の年であったであろう。そんな中、時代の変化についていけない人たちがいる。現代でもそうだ。私もそこそこ長く生きているが時代の変化を目の当たりにしてきた。自分は変化を好む人間なので、常に時代の変化を楽しんで生きているし、これからの変化も楽しみに「明日をいく」部類である。でも、昔も今も変化についていけない人はいる。「古きよき時代」と言う人もいる。それを否定するつもりは全くない。確かに「古きよき時代」はあった。でも、それは過ぎ去った過去である。今さら取り返すことはできない。やはり、前を進まなければいけないのである。そんな気持ちを畠中恵は伝えたかったのだろうか、、、
もうひとつは、江戸時代、小藩である大野藩が何故、黒字であったのか?これは畠中恵がこの小説を書く着眼となった点である。アイデア豊富で聡明なわが殿の政策が借金をかかえる藩だったのになぜそれが次々と実現できたのか?それは先立つもの(お金)を調達できる家臣、七郎右衛門がいたからこそできたことなのである。七郎右衛門は借金を返すだけでなく、更に藩のお金を増やす手段を考える才能があったのである。現在の日本では国の借金はどんどん増える一方である。更に物価高や景気の問題など様々な問題が山積みなのに、それを実現する術がなかなか生まれないのが現状だ。もし、今の時代に七郎右衛門が存在していたら、彼はどんな方法で日本の借金を減らしていくのであろうかと考えるとわくわくしてきます。そして、最近、海外の女性起業家たちのインタビューについて書かれた本を読んだのですが、彼女たちがよく発する言葉がお金の問題です。多くのアイデアをもつ人たちが直面する問題、アイデアがあっても、それを具現化する商品化する経済的な知恵、彼女らはそれを必要だったと考えています。人には得意、不得意があります。それを補える人物に出会い、行動することで、起業がおこなえるということを知り、この小説のわが殿と七郎右衛門の関係がまさにそのことを示しているのではないかと思いました。私は本を読むとき何かの答えを探して本を読むことが多いのですが、その答えが書かれたのがこの小説「わが殿」です。

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