21日から23日までのひとり旅(2日め)
目が覚めると、そこは全然知らない路肩で、車がぶんぶん走る音で気づいた。明らかに寝ていい場所じゃない。直射日光も半端じゃない。とにかく、朝ごはんを食べて、出発しなくては!
そう思って、最後のでか握り飯を口に放り込んでいた時であった。
「う〇こがしたい!」
それは、予断を許さない全身を突き上げるような衝動であった。
眠っていた体が朝ごはんで目を覚ますなんて、キャンプでもしてりゃ映えるんだろうけど、貧乏人のおばさんにはそれが魔女の一撃のように苦しみに変わった。
とにかくトイレを探さないと! そう思ったが、県立歴史民俗資料館が開くのは9時から。どうするんだよ! あたし! あ、そうだ! いいこと思いついた。博物館とかって、外におトイレがある時もあるじゃない? そこに賭けよう。ダメなら、博物館で野ぐそするしかない。
そんなときに、長宗我部元親像がいきなり現れたのであった。長曾我部元親の史跡を見ているうちに便意が逸らされてそのうち、博物館も開くかもしれない。そう思った時だ。
史跡の階段の横に、トイレがあったのである!!!!!!!!!
「念ずれば叶う」
その言葉が静かに心に満ちた。
お尻にのポケットに入れておいたスマホもトイレに落ちた。
ぎゃ━━━━━━━━(;´༎ຶД༎ຶ`)━━━━━━━━━っっ!!!
和式の水洗トイレじゃなかったら水没は免れなかっただろう。ラッキーなのか不幸なのかよくわからないけれど、博物館でうん〇を漏らすという失態から免れた安堵感で、私はウキウキと長宗我部元親の史跡に向かうことになったのである。
県立歴史民俗資料館の横にある岡豊の城壁たちは戦国時代の激しさを教えてくれていたし、史料館では、それまでの暴れ将軍的な印象もひっくり返ってなかなかに面白かった。河田小龍の作品「龍虎図衝立」もまるで生きているかのような邪悪な目玉が印象的であった。
「なんかもっと龍が見たい」
そう思った私は龍河洞に行くことにした。土御門天皇がここに来て、錦の龍に案内されて、歓迎を受けたという伝説の洞窟である。
ここでも道に迷ったが親切なガソリンスタンドのおじさんに助けられ、無事にたどり着くことができた。自然が作り出した奇跡の彫刻を前に言葉を失ったし、霊能力がない人でもはっきりパワースポットってわかるくらい、ものすごい水と石のパワーがすごい。禿の人がいたら毛が生えてくるんじゃないかなと思うくらいだ。
目的も達成し、じゃあ、そろそろ帰路につくかと思った私は、道を間違えて徳島方面に向かってしまうのである。走っても走っても山道。このまま国道に出られないんじゃないか?と思うくらい。それでも、目的のない旅もたまにはいいもんだ。荒々しい高知の自然と違って、徳島は自然が穏やかというか、癒し力が高めな気がする。
とにかく、日が沈む前に宍喰あたりに出て温泉に入るのを目標に、ガンガン走り続けた。その甲斐あって、サンセットタイムに海を見ながら温泉に入るという極上の時間をいただいた。
神様、ありがとうございます。死にたいとか馬鹿なこと言ってすみませんでした。これほど神から恵みを授かり、たった200円で人工ロボットがアヘオヘ顔になる最高に気持ちいいマッサージ機を堪能できるという世界なのに、死んでたまるか。
温泉に入って気持ちよくなり、コロナが怖いのでさっさと自分の車に戻ってシートを倒したベッドでサンセットビーチを背に酒を飲み始めた。ハッキリ言って家に帰りたくなさ過ぎて泣けてきた。
友達に電話をした。友達に長いこと後ろめたく思っていたことを謝った。友達はゲラゲラ笑って、「なんてことない。いまこうしてまた友達に戻ってるじゃん!」と言ってくれた。なんていい友達なんだろう。
友達のおかげで元気が出て、翌朝早朝に実家エリアに戻った。