ジャニヲタが10周年にしてSexy Zoneの沼を知る:菊池風磨編
私がこれまでSexy zoneにまったく興味が持てなかった理由として、ふまけん苦手意識があったことは前の記事で述べた。ここではかつて菊池風磨が苦手だったという人に向けて語りたい。自分も菊池風磨は大の苦手だった。デビュー当時はともかく、彼が大学に入った頃からは完全に忌避していた。
5年以上前だけれど、今でも印象的な出来事がある。
私の推しの記事が載ったとあるアイドル雑誌のこと。当時、彼らは既に雑誌のレギュラーを卒業しており(Jのドル誌30歳定年というやつです)、本屋で手に取ってパラパラとめくり、写真もインタビューの内容もいいし、久々に買おうかな、と逡巡した。雑誌を一度棚に戻し、表紙をもう一度見て、うーん・・・と考えて買うのをやめた。
なぜなら雑誌の表紙が、ヤマンバのような髪型をした水着姿の菊池風磨ソロショットだったから。
こんな表紙の雑誌を部屋に持ち込みたくない・・・。
完全にギャル男やん。Men's Eggの表紙かなんかと勘違いしてるんちゃうか、と悪態をついたような気もする。
当時の風磨くんは番組で不規則発言を繰り返し、MCやメンバーが困惑していてもお構いなし、パフォーマンスでも一人だけ妙にカッコつけたり、クセすご歌唱にアレンジしたりという典型的なイキリだった。特に慶應大に合格してからはそのイキリぶりがトップギアに入っていた。
アイドルにとって学歴はコアバリューになりえないのに、学歴マウンティングを取るしょうもないガキだと思っていた。(ちなみに私は理系大卒で、職場には旧帝大の院卒がゴロゴロ居る。)そして当時、私は強めのハロヲタでもあった。みなまで言わんが、うちの箱入り娘にちょっかい出しやがってこのクソガキ、という心情もなかったとはいえない。(事実は知らんが。)
そんな風磨くんをなぜここにきて好きになったか。理由はシンプル。彼が大人になったから。
最初にあれ?と思ったのは2017年ごろ、「吾輩の部屋である」の番宣で「月曜から夜更かし」にゲストで出演したとき。風磨くんがマツコさんの投げたボールを、1つ1つ端的に的確な言葉で返していくのに驚いた。
マツコさんは独特の言い回しで、本質的に聞きたいこと言いたいことは後出しすることも多い。語彙が豊富だし、話も飛びやすい。ヒナちゃんはマツコさんのコメントをストレートに受け取り、微妙に的外れな返しになることも少なくなかった。でも風磨くんは外さなかった。
学歴云々じゃなく、自頭が賢い子なんだと初めて知った。少クラで後輩をイジり倒し、乱暴なボケを連発する風磨くんには全く感じたことがなかったトークの才能を感じた。ジャニーズ事務所はこの子の育成の方向性間違ってるんじゃないか、と思った。
そこからバラエティでの風磨くんに注目するようになった。嵐の番組でのプレゼン、エピソードのまとまり具合、20代半ばのジャニーズアイドルとは思えない緻密なトークに舌を巻いた。
「相席食堂」で、道行く人に声をかけ、おじいさんとお風呂に入る風磨くんは、自分が認知していたアイドル菊池風磨のキャラクターとはまったく別の人に見えた。まともな成人した大人のタレントになっていた。
ジャニーズムラの中にいても、空気を読まずはしゃぐ姿は見られなくなった。グループでの活動では、メンバーのことを考え、全体に目を配っているのがわかる。不治の病と思われたイキリ癖は、ほんのすこしの拗らせを残し、すっかりなくなっていた。
意識をしてみると、風磨くんはジャニーズタレントからよく名前が出てくることに気づいた。先輩に礼を尽くし、付き合いがいい。後輩や年下メンバーの面倒見がいい。病床のジャニーさんを毎日同じ時間に見舞うなど、彼の人間力を表すエピソードの数々。
頭の回転が早くて、先輩に好かれて、後輩に慕われて、情に厚い、ってもうそれアイドル関係なく爆モテやん。
風磨くんは人一倍感受性の強い、所謂エモいひとだと思う。今思えば、10代後半の一番多感な時期に、トンチキな歌ばかりを歌わされたら自意識を拗らせるだろうし、大人は不条理なことばかり言ってくるし、優等生アイドルケンティーと比較されて叩かれるし、辛いことも多かったろう。自分探しに迷走し、やっと手にした「現役慶応大生」というメディアに強い肩書に勘違いしてイキるぐらい生暖かい目で見てあげるべきだった。
ジャニーさんは生前、一番大事なことは人間としての美しさだと話していた。
風磨くんが自分探しの旅を経て、社会人としての自覚を持ち、チームの大切さを知り、このチームで一流になるんだ、と自らチームマネジメントを模索する姿は、少年が大人になる過程の人間的成長とその美しさを体現している。
25歳にして、チームでエンターテイメントを作るということをこれだけ理解しているジャニーズタレントが、これまでどのくらい居ただろうか。あの中居正広でも、20代前半は自分のことばかりだった、と回顧している。Sexy Zoneの10年間はマネジメントサイドに振り回された時期も少なからずあった。風磨くんは悩み苦しみながらSMAP、嵐、山Pなど多くの先輩を頼り、金言を受け、成長したのだろう。
判官びいきの精神が強い日本では、アイドルが売れるためには苦労話が必要だ。スノストのようなパンチの効いた苦労ユニットに対抗するためには、これまでのSexy Zoneが見せなかったリアルなストーリーを見せていく必要がある。
ケンティーがアイドルとして常に偶像の煌めきをファンに与え続けるのとは対照的に、風磨くんはアイドルという過酷な世界のリアルをギリギリの線でさらけ出してくれる。
彼が自発的にSexy Zoneという物語のストーリーテラーになったと思ってしまうのは私の考えすぎなのだろうか。
40歳の脂の乗り切った大人の男になった彼の口から、25年間の彼らのストーリーを聞くことができますように。でもあの発言すらも彼の計算かもしれないな。彼はしたたかで逞しいSexy Zoneの参謀なのだから。
(しかし、40歳の風磨と41歳の健人ってめちゃくちゃダンディーでセクシーになっている姿しか想像できないな。)