小学校英語をどうやって教える? ~科学的に考えた効果的な教え方とは~ 第1回【日本人が英語が苦手なのはなぜ?】
英語科教諭として17年ほど勤めておりましたhappyowlです。(中学校が長いですが、小学校、高校も少し経験しました。)
小学校英語が2020年から導入されることになったけれども、「どう教えていいかわからないしゴールが明確に見えない・・・」と不安に思っておられる小学校の先生方のお力になればと思い、英語の効果的な指導方法についてまとめたいと思います。
まず私のバックグラウンドについて少しご紹介させていただきます。
英語科教諭として勤める中、20代はとりあえず生徒たちの力がつくものを・・と思い、書籍を購入したりセミナーに参加していたのですが、途中から「あれ?人によって効果的って言っている方法が違うし、生徒によってもうまくいったりいかなかったりするのはなんでだろう・・・」と疑問が生まれてきました。
そこで悩んでいる中、効果的に第二言語(外国語)を習得するための学問である「第二言語習得」という分野が存在することを知りました。第二言語習得とは、個人の経験などに制限されるものではなく、「学習者が実際にどう第二言語を習得するか」というデータを基に科学的に導きだされた外国語の学習理論です。
それから大学院にて第二言語習得を学ぶことのできるTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)コースの修士課程を取得し、どうやったら効果的に英語を教えることができるのかというメソッドを学びました。(TESOLとは英語が母国語ではない人々向けの英語教授法に関する資格のことで、世界で認知されている国際資格です。)
ここで学んだ第二言語習得の内容と、私の経験も併せて効果的と思われる指導方法についてご紹介していきたいと思います。
今回はまず「日本人が英語が苦手なのはなぜだろう?」ということについて論じてみたいと思います。
【日本人が英語が苦手なのはなぜ?】
①勉強の仕方が間違っていた
20年ほど前は「単語と文法がわかっていれば、それを組み合わせて英語が使えるようになる」前提としての授業が多かったように思います。また、文法訳読式の授業も多く行われていました。でも、それだけでは使えるようにならないんです!!!当時はまだ「第二言語習得」という学問分野の研究が進んでいなかったこともあるかもしれません。
テニスの上達のためにルールブックを暗記してもそれだけではうまくならないですよね。実際にラリーをして試合をするなど実践を通して上達しますよね。英語も同じで、実際の英語にふれることが大切です。そこでキーとなるのは「大量の理解できるインプット(聞く、読む)」です。日本の英語の授業では圧倒的にインプットが少なく、例文を習ったとしてもそれをどういう場面でどんな風に使ったらよいのかがわからないままにされるケースが多いです。英語の達人と言われる人はどこかで必ず大量のインプットを経験しています。
これは母語の形成と同じです。赤ちゃんもたくさん話しかけられてやり取りすることで言語を身につけますよね。
また、インプットだけでなく、アウトプットも必要である、という調査結果も出てきています。詳しくはまた次回以降に述べていきたいと思います。
②言語的に違いすぎる
大学生の頃に中国に留学しておりまして、中国語も学んでいました。そこで実体験として感じたことは「あれ?英語を学ぶよりも簡単かも?」ということです。同じように日本からの留学生も「英語は全くダメだけど中国語はペラペラ」という人が何人もいました。中国語の授業では欧米からの留学生が漢字に四苦八苦している中、日本人が難なく漢字を読み書きしている姿に「ずるい!」と言われたものです。中国語と日本語のように比較的似ている言語だと習得しやすいのは考えてみると当たり前のことですよね。
逆に英語はどうでしょうか。2002年にアメリカの国防総省外国語学校でアメリカ英語の母語話者にとっての言語の難易レベルを分けたリストがあります。一番簡単な言語がフランス語、イタリア語、スペイン語など、一番難しい言語がアラビア語、日本語、中国語、韓国語でした。つまり、言語の共通性が少ない言語の方が難しく、日本語と英語はそれぞれ学び合うのに一番難しいランクに入るくらい遠く離れた言語、ということです。
「英語ができない日本人」と揶揄されがちですが、ヨーロッパ圏の英語学習者と比べると前提条件から差がつけられていた、ということですね。
もし「韓国語」や「中国語」が必修言語だと日本人には学びやすいのになあ・・・なんて思ったりもします。
次回からは実際にどんな授業だと効果的に英語を身につけやすいのか、ということについて書いてみたいと思います!
読んで下さいましてありがとうございました。