今でも忘れないあの時のこと⑤
高校1年生といえば、
私にとっては辛い事の方が多くて、あまり思い出したくないのだが、
なぜか、ふと、
「あの時のことを書こう」と思い立った。
今だってしんどい事もたくさんあるけど、今が1番幸せだと思っていて、
それは、あの時、担任が私を引っ張り上げてくれたからだと、その感謝の気持ちを込めて…ということで書き始めたのだ。
S子についても、彼女のお陰で学校に戻れたけれど、モヤモヤがずっと心の片隅にのこっていて、それを解消すべくS子がしたことをもっと色々と書くつもりでいた。
S子がした事を思い出しながらつらつらと書いていて、
突然、はっと気付いた。
嘘をついたり人を利用したり…複雑な家庭環境で育ったS子は、そうやって自分を守りながら生きてきたのだと、それが彼女の生きるための術であり、悪気など一切なく、ごく自然なことだったのだと。(それに気付いて、S子がしたことについて書いていた文章を全部消した。)
そして、もう一つ、
あんなにどうしようもなく不真面目で、掃除もせず、遅刻や早退の常習犯の私なのに、誰も虐める人がいなかったということ。
そう、
何も言わずに私を見守っていてくれたのは、担任だけではなかったのだ。
担任がみんなに訳を話してくれたのだと思うが、それでも1人ぐらいは意地悪する人が出てきそうなものだが、
誰もそれをしなかった。
それどころか、
何か困ったことがあったら言ってと、急に声をかけてきてくれた子もいたりした。
わざわざ嫌なことを思い出して、この話を書いた意味がやっとわかった。
書かされていたとしか思えない。
このことに気付くために。
普通気付くやろ!とツッコミが入りそうだが、
そんな簡単なことに気付かないくらい、
私は自己中で、そして子供だったのだ。
色んな経験をして大人になっても、
ほとんど取り出すことのなかったその部分だけは、ずっと子供のままだったのだ。
気付いた瞬間、
涙があふれそうな、何とも言えない気持ちになって、
心の中にいたあの頃の私が、すーっと薄くなって消えたような気がした。
今でも忘れないあの時のことは、
辛い記憶から、優しい記憶へと変化して、
やっと私は、
大人になれたのかもしれない。
両親、担任のK先生、S子、名前も思い出せないクラスメイトたち、
今となってはもう、直接感謝を伝えることはできないけど、
どうかみんなが幸せでありますようにと、心から願っている。