今でも忘れないあの時のこと③
ある日、
「タバコ、持ってない?」
と、S子に言われた。
高校1年生、タバコなんて持ってるわけがない。
S子は、中学生の時に東京から私の住む地域に引っ越してきたらしいのだが、
どうやら東京にいる頃からタバコを吸っていたらしい。
S子が、何とかタバコが手に入らないかと私に言うので、
私は父のタバコを一箱、こっそり持ち出してS子に渡し、
S子に誘われるまま、通学途中の駅のトイレでタバコを吸った。
可愛い優等生のS子は、
慣れた手つきでタバコに火をつけ、
美味しそうに煙を吸い込んだ。
おそるおそる口にした初めてのタバコの味は、ただただ煙たくて、
その煙は、ドキドキ感や罪悪感と共に、うっすらと私の心にいつまでも残っていた。
④に続きます…