【将棋観戦】豊島将之さん vs 藤井聡太さん、炎の十二番勝負。※追記あり
東京オリンピックで、アスリートたちが熱い戦いを繰り広げておりますが、
真夏の将棋界も熱いです。
豊島将之 竜王 と 藤井聡太 二冠が、王位戦七番勝負と叡王戦五番勝負で激突。両方ともフルセットになれば十二番勝負となります。
ほとんどの棋士に勝ち越している 藤井聡太 二冠ですが、豊島将之 竜王に対しては苦戦しており、今回の十二番勝負が始まる前は1勝6敗。
さらに、6月30日に行われた王位戦第一局では、めずらしく藤井王位が持ち時間を残して投了。中盤の入口で形勢を損ね、そのまま完敗という内容でした。
あんなに強い藤井聡太さんが、なぜ豊島将之さんには負け越しているのか?
将棋のプロから記者・ファンに至るまで、さまざまな人たちが考察を述べておられます。
わたし程度の知性では、分かることは限られますが・・・
ひとつの仮説は「豊島将之さんの危機感」です。
藤井聡太さんは史上5人目の中学生棋士(プロ入り)ですが、豊島将之さんも16歳でプロ入りした俊英。同じ愛知県出身です。藤井聡太さんから見た豊島さんは、同郷の尊敬する先輩。豊島将之さんから見た藤井さんは、同郷の天才少年として、早くから存在を知っていたでしょう。
ここからは推測ですが、豊島さんは実績で先行していても、潜在能力では藤井さんが上回ると、イチ早く認めていたのではないでしょうか?
だからこそ、藤井さんがデビューして間もない時期から、豊島さんは入念な準備をして対局に臨み、実力や経験値の差で勝つ。藤井さんは負けが続くと焦りが生まれ、優勢な局面で逆転負けしたこともありました(他の棋士に対しては、なかなか見せない姿です)。
豊島将之さんは現在、31歳。対する藤井聡太さんは19歳。
豊島さんは「やがて来る藤井さんの全盛期に、自分も第一線で戦えるようでありたい」という意味の発言をされたこともありました。おそらく藤井さんの25歳は、今よりさらに強くなっていることでしょう。それでも豊島さんはタイトルを争う存在でありたい、という覚悟なのだと思います。
6月30日に行われた王位戦第一局に戻ると、先手の藤井王位は相掛かりという戦型を選び、後手の豊島竜王が受けて立つ展開。そしておそらく、ここ数ヶ月の傾向から、藤井王位が先手のときは相掛かりが多いと予測して、豊島竜王は入念に研究してきたのでしょう。中盤の入口で早くも優位をつかみ、そのまま隙を見せずに押し切ってしまいました。
ここまで、藤井聡太さんから見て、対豊島戦は1勝7敗。流れを変えないと、タイトル防衛も危うくなってしまいます。
その後、王位戦第二局と第三局、叡王戦第一局。なんと藤井さんが三連勝。
流れを変えたのは、7月14日に行われた王位戦第二局でした。
先手の豊島竜王は角換わり早繰り銀という戦型を選び、後手の藤井王位の意表をつく。豊島竜王のペースで局面が進んでいきますが、藤井王位もやや不利の形勢から差を広げられないよう食らいついていきます。豊島竜王にわずかなミスがあり、藤井王位が逆転勝ち。
藤井さんは、不利でも差を広げられず追走していく技術と、わずかなミスを見逃さない終盤の地力が光りました。
王位戦第三局と叡王戦第一局は、序盤・中盤はほぼ互角でも、終盤の入り口で豊島さんが最善手をわずかに逃し、藤井さんが抜き去る展開でした。
藤井さんも相当な研究と準備をして対局に臨んでいるはずですが、序盤は悪くならなければいい、ほぼ互角で終盤に入れば(どんな棋士相手でも)勝てる、と思っておられるのかもしれません。
そして本日8月3日、叡王戦第二局。先手の豊島叡王は、角換わり早繰り銀を選択。それに対して後手の藤井二冠は、豊島さんの作戦を狙い討ちにしたような対処を見せます。
序盤から藤井二冠のペースとなり、そのまま押し切るかと思われましたが、豊島叡王も6筋にいた玉将が1筋まで逃げのびて、強靭な粘りを見せます。
藤井二冠が決めきれず、豊島叡王の逆転勝ち。
豊島さんは序盤・中盤・終盤と精度が高いと誰もが認めています。
外見はほっそりしていますし、派手な言動もありません。
されど、不利な局面でも徹底的に粘る技術と、心の強さを持ち合わせているのです。
藤井聡太さんから見て、対豊島戦は通算4勝8敗となりました。十二番勝負としては、ここまで3勝2敗。
豊島将之さんと藤井聡太さんの熱い夏は、まだまだ続きます。
(さらに、藤井聡太 二冠は竜王戦トーナメントでも勝ち上がっており、今後の展開によっては、豊島竜王に藤井さんが挑戦するかもしれません)
※追記※
2021年9月13日に、叡王戦 第五局が行われ、藤井聡太 棋聖・王位が勝利。
三勝二敗でタイトル叡王を奪取しました。
王位戦は四勝一敗ですでに防衛。19歳1ヶ月にて早くも三冠保持となっております。
対豊島戦は十二番勝負としては7勝3敗と勝ち越し、通算でも8勝9敗と盛り返しました。もはや苦手意識は克服したと見てよいでしょう。
藤井聡太 三冠は竜王戦の挑戦者としても名乗りを上げており、豊島将之 竜王とさらに七番勝負を戦うことになります。藤井時代の幕開けとなるか、豊島さんが強靭な意志と技術で踏みとどまるのか。
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