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「お金を貰う」ことにちゃんと向き合った方がいい|ビジネスモデルの話

こんにちは!起業・創業コンサルタントのようしゅう|中小企業診断士です。

私が住んでいる地域では行政がスタートアップ創出に力を入れています。

先日、その一環として開催された「スタートアップピッチ」にお誘い頂いたので参加してきました。

集まったのは地域の金融機関。日本政策公庫、信用金庫、商工信用組合、信用保証協会などです。

スタートアップピッチなのにVC(ベンチャーキャピタル:出資者)がいない時点で違和感がありましたが、主催者いわく「VCにピッチする前の段階のお悩み相談」という位置づけらしいです。
 

要するに「金融機関が起業家のビジネスモデルにあーだこーだ言う会」です。

地域の起業家が行うピッチに対して各金融機関の方が順番にコメントをしていきます。

しかし、私が思うにこのスタートアップピッチには3つの問題点がありました。
 


①イベントの趣旨がよくわらかない

起業には「スタートアップ型」と「スモールビジネス型」の2タイプがあります。

crewwホームページより引用:https://creww.me/tips/startupventure

「スタートアップ型」は世の中にない新たなビジネスモデルを生み出し、急激な成長によって将来的な上場や売却を目指すモデルです。

「スモールビジネス型」は既にあるビジネスモデルの中で起業するタイプです。例えばラーメン屋、デザイン会社、エステ店など「子供が将来、○○屋さんになりたい」というのはほとんどがスモールビジネス型です。

スタートアップ型は急激な成長を目指す代わりにハイリスクになるため、「2~3年は売上がゼロです」ということも珍しくありません。

当然、企業が成長するためには「お金」が必要ですが、売上が立つか分からない事業に融資することは難しいため、金融機関による融資ではなく、投資家であるVCが出資をするのです。
 

そんな中で開催された「金融機関向けのスタートアップピッチ」
 

言うなれば「融資ができない金融機関にビジネスモデルの相談をする会(?)」です。

参加した金融機関の職員さんにインタビューしたところ「正直、ビジネスモデルの相談をよく分からない。お金の相談なら…」と言っていました。。

そりゃ、そうですよね……
 
 

②起業家がスタートアップを目指していない

行政主導で行われているスタートアップ創出の空気感。

地域を牽引するスタートアップが誕生してくれれば、新たな産業が生まれ、それに伴い新たな雇用も生まれます。人口が増え、地域が活性化し、より豊かな街へ。

そんな夢物語を描き、若手起業家に期待する気持ちは分かります。

実際に行政が主導で「スタートアップ推進協議会」なるものを組織し、インキュベーション施設を作り、スタートアップを目指す起業家が相談できる場所も準備しています。

そこでは、若手起業家が相談員に話を聞き、スタートアップを創出するためのビジネスモデルに関するご指導、補助金を活用した実証実験などを指南されます。
 

しかし、重要なことが抜け落ちています。
 

それは、〝起業家の気持ち〟です。

 
私は今回、スタートアップピッチに参加された起業家に質問をしました。
 

「将来的に、どこを目指しているのですか?」

「上場したいとか、大きくなって売却したいとか、そういう気持ちはありません。むしろ、金融機関さんで融資を借りて、地域の人達の課題を解決できればそれでいいと思っています。」
 

これが起業家の本音です。
 

行政主導で担ぎ上げられ、スタートアップピッチには登壇しているものの、決してスタートアップモデルを目指しているわけではありません。

彼らは、純粋に「目の前の悩んでいる人の手助けになりたい」という気持ちで事業に取組んでおり、スタートアップどうこうというのは望んでいないというのが分かりました。
 

彼らの気持ちに向き合わず、ビジネスモデルだけスタートアップらしく、どんどん複雑になっていく。
 

いくら補助金が出ると言っても、一部は自己資金で賄う必要がある。
 

わざわざ将来を志す起業家にそんな負担をかけてまで、「スタートアップ創出」と旗を振る必要があるのかと強く思いました。
 
 
 

③お金を貰うことに対して向き合っていない

これが今日の本題になります。

これは支援する側の相談員や金融機関の姿勢の話です。

実際にスタートアップピッチでは、事前に相談員に指導されたであろうビジネスモデルをピッチし、それに対して金融機関があーだこーだ言っていました。

詳細は省きますが、医療系のアプリを開発し、ユーザーは無料または一部有料で利用できる代わりに、病院や保険会社などからお金をもらうというビジネスモデルでした。

そのビジネスモデルに対して金融機関からは「なるべくユーザーではなく、他のところからお金を取った方がいい」「福利厚生で企業に導入してもらえればいいんじゃないか」などの発言がありました。
 

それって言うのは簡単だけど、めちゃくちゃ難しいって知ってますか?
 

なぜなら「お金を払う」というのは「価値の対価を支払う」という行為だからです。

原則論、課題を解決するためのサービスを利用する人がお金を払うのは当然です。

ユーザーとは別のヒトたちからお金を貰おうとするのであれば、その別のヒトたちの課題を解決しなければなりません。

だから、ビジネスモデルがどんどん複雑になっていくし、成功確率もどんどん下がっていきます。

実際にピッチをした起業家さんは「病院や保険会社に話を持っていっても、共感はしてくれるけど、お金は出してくれない」というお話をしていました。
 

申し訳ないが、それは当然の話だ。
 

共感だけでは、課題は解決できないからだ。
 

お金を貰いたいのであれば、お金を払ってくれるヒトたちにもっと向き合い、そのヒトたちの課題を解決する仕組みを真剣に考えなければいけない。

そんなシンプルなことさえ分からず、安易に「他のところからお金を取った方がいい」なんていうのは無責任すぎる。

もっとお金を貰うことにちゃんと向き合った方がいい。と思った出来事でした。
 
 

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