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【起業・創業】物件の探し方|中小企業診断士
皆さん、こんにちは!ようしゅう|中小企業診断士です。
本メンバーシップ【起業・創業のお悩み相談所】では、起業家を目指す方や創業したばかりの方に役立つ情報、私が普段実際に受けている創業相談の中からも皆さんに役立ちそうな実例などを紹介しています。
本日は、開業する際の「物件の選び方」についてお伝えします。
特に飲食店開業を検討している方の参考になればと思います。
銀行員時代によくあった創業相談
私は銀行員時代に起業・創業に関する融資相談を受けていましたが、既に物件が決まった状態で相談に来られる方がほとんどでした。
お金を借りに来るのですから、当然と言えば当然です。
しかし、こちらからすると…
「あれ、この物件、ついこの間取引先の飲食店が閉店したところだ」
「この事業であれば、こんなに広い物件じゃなくていいのに」
「一見、家賃は安いように見えるけど、内外装費が負担大きい…」
などなど、色々と思うところがありました。
もちろん同じ物件でも経営する人、業種、業態が変われば成功することだってあります。
しかし、少なくとも私の経験から、長続きする物件と短命で終わってしまう物件というのが存在するのではないかと思っています。
特に飲食店の場合、皆さんも「この場所、半年くらいでよくお店変わるよなー」という店舗を見かけたことがあるんじゃないでしょうか。
せっかく一念発起して「開業しよう!」と思っても、物件の選定で失敗してしまうと実にもったいないことです。
何をやるかよりも「どこでやるか」が大事
1年前くらいにある飲食店経営者が私のところに相談にやってきました。
その方は飲食店を5年くらいやっていたけど、思うように集客できず、自信を無くしており、「別の場所でお弁当屋さんを開業しようと思っている」とのことでした。
店舗のSNSを拝見すると、見た目も華やかで、とても美味しそうな料理が並んでいました。
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グーグルマップの口コミを見ると「★5.0」となっていましたが、口コミ数は2件しかありません。
そこで私は実際に店舗を見に行くことに…
地元の人にしか分からないような細道を何本も曲がり、カーナビが「目的地周辺に到着しました。」と役目を終えても店舗らしいものは見当たらない。
診療所のような建物の前を何度も通るうちに、その建物から店主が出てきてくれました。
なんと本当に元診療所であった場所を店舗として使用していたそうです。
聞けば、お金がなかった当時、知人に開業相談したところ、「お医者さんが診療所をやめたばかりで自由に使っていいよ」と格安で物件を貸してくれたそう。
そこから5年間、隠れ家的な店舗で地元の人たちの憩いの場にはなっていたが、それ以上は広がることがなく「このまま続けていてもダメかも…」という思いが芽生えたそうです。
しかし、深刻なのはそれによって「経営者としての自信」がなくなってしまったことでした。
「リスクを少なく、家賃の安い場所に移転し、お弁当屋さんを始めたい」という相談者さんに対して、私は「別の場所で飲食店をやりましょう」と提案しました。
それというのも実際に店舗に伺った際、来ていたお客さん全員にヒアリングをしたところ「何を食べても美味しい」「他の人には内緒にしておきたい」との声が多かったからです。
地元の人の憩いの場になっていたこともあり、グーグルマップに口コミをあげる人も少なく、口コミが広がらなかったのかもしれません。
「物件探し」は1年かける覚悟で
そこから相談者さんとの物件探しの旅が始まりました。
しかし、いきなり物件を探すのではなく、まずは「改めてどんなお店にしたいか?」というコンセプト設計から始めました。
これまで提供してきたメニューを書き並べ、それぞれの口コミや評価をもとに「どんな料理を誰に提供したいのか?」「それに合う空間はどんな雰囲気か?」「お客様になる人たちが多そうな場所はどこか?」を考えていきました。
顧客 :落ち着いてゆっくり食事を楽しみたい主婦
立地 :住宅街
利用目的:ランチ
時間帯 :平日~週末午後
価格 :少しぜいたくでもOK
また、これらの定性的な情報だけでなく、「平均単価×席数×営業日数」から月間売上高を仮定し、支出できる家賃の限界値も併せて設定しました。
こうして設定した条件を基に、実際に不動産業者や金融機関などを回り、物件探しが始まりました。
起業相談を受けていると「物件が全然見つからない」という声をよく聞きます。
しかし、私が「不動産業者どれくらい当たりました?」と質問すると、「2~3件は回りました」と答えられます。
ハッキリ申し上げると、物件はそんな簡単に見つかるものではありません。
私は「物件を探すときには1年をかける覚悟で探してください」と伝えています。
なぜならビジネスでも人の生活でもサイクルは1年間のため、年末にはなかったよい物件が、年明けには出てくることもよくあるからです。
大事なのは「焦って今ある物件の中から決めようとしないこと」です。
逆に言えば、1年間探してもよい物件が出てこない場合は探している地域では物件が見つからない可能性もあります。希望条件や探し方を再考することも必要です。
金融機関は「良い情報」を持っている!?
事業をされる方が物件を探す際にぜひ押さえておきたいのが金融機関です。
不動産業者というのは入居者を集うことが仕事ですので、入居後に儲かるかどうかは関係ありません。
しかし、金融機関は、紹介した物件で顧客が儲かる事業を行って、融資がある場合には返済してもらわなければ困ります。
その点において、儲かりそうもない物件を紹介することはありません。
また、意外と不動産業者が持っていない不動産情報を持っていることも多いです。
なぜなら金融機関は普段から取引先とコミュニケーションを取っているため「高齢によって事業を辞めるため、物件が空きそう」などという世に出ない情報を握っていたりします。
そのためには金融機関の担当者と関係性を作っていくことが大切です。
金融機関は「お金を借りる場所」と思いがちですが、昔と違ってお金を借りる前に行っても色んな相談に乗ってくれます。
不動産情報だけでなく、経営情報、補助金情報なども教えてくれるため、「これから起業しようと思っています」と、ぜひ積極的に顔を出し、担当者と関係性を構築していきたいものです。
飲食店経営者の結末は……
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