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⑤終わりのはじまり。

工事は無事終わった。
最終日の突然のキスと共に、私の恋が始まってしまった。あー、こんなに好きになってたのかぁ……久しぶりの胸が詰まる感じ。好きな人で頭がいっぱいになる感じ。決して惚れっぽい方ではなく、片思いや、付き合ったりも、長く続く方だ。なのに、私は、あっとゆうまに彼に夢中になった。

工事が終わった翌日、私と娘で実家に出掛ける電車内で、携帯が鳴った。
見ると、彼からメール。
「昨日はすみませんでした。衝動的にあんなことしてしまって、ごめんなさい。」と謝罪文。
私はなんて返したかな?忘れちゃったけど、そのあとのメールに
「俺、ママさん好きやねん」と。

吹き出しそうになってしまった(笑)。当時彼は私を奥さんからママさんと呼ぶようになっていた。横浜生まれ、横浜育ちの彼が、何故か関西弁で告白してくれた。おかしかったし、飛び上がるほど嬉しかった。
さぞかしモテたであろう顔面と、人並み外れたコミュ力が特徴の彼だったから、頭の片隅に「遊ばれてんのかな」とか、引っ掛けられてる感覚はあったのだが、「嬉しい」が勝ってしまった。その日は1日何度もメールのやりとりをしてすごく楽しかった。
うかれてたなぁ〜ほんと。羽が生えたみたいに。色々あった結婚生活で体調を崩してた私は、彼がくれる高揚感で一気に元気になった。恋愛パワーすさまじい。
それから何度かデートしたけど、手を繋ぐことはあっても、ただそれだけだった。
でも昼間の数時間のデートも、夜数分する電話も、すごくすごく楽しかった。
18歳の時から15年近く塗装工として経験を積んできた職人であることや、楽しくて明るい性格も、気が利いて男らしい所作も、声も容姿も大好きだった。
彼は私の話を良く聞いてくれたし、自分のこともたくさん話してくれた。昔、暴走族で悪かったことは、あまり気にならなかったけど、ただ1つ、少しだけ、気になったこと…それは、前科があったこと。

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