④埋もれて気付かなかった感情
さてさて、楽しかった工事にも終わりが来ます。そんなことは当たり前なんだけど、すっかり忘れていた。それくらい、Yと居る時間が自然なものになっていた。朝8時からきっかり夕方5時までの作業。お昼を入れて一日3回の休憩。その間に私たちは随分お喋りするようになっていた。職人3人で居る時は邪魔してはいけないとゆう思いから私は出て行かなかったけどYだけの時は気が楽で、娘の人懐こさも手伝って、よく話した。
仲良しの職人さんが出来て、またなんかあれば直接依頼できるなぁって計算があったので、Yに連絡先を聞かれた時はすんなり教えた。
「雨の日とか、連絡用に。」との理由だった。
実際工事期間中の連絡は家の電話ばかりで、メールは来なかった。
工程表はあったものの、雨だったり、追加が増えたりして日にちは伸びていたのでいつ終わるのかハッキリせず、ボケーッと過ごしていたが、ある日の朝、Yに呼ばれ玄関まで行くと、「一応、今日で作業終了しますので、後ほど全体確認して貰えますか?」と言われた。
あ、そうだ。この工事は終わるんだ。
当たり前のそんなことをいきなり実感した私は、ドアを閉めた途端一気に涙が溢れた。
は?
自分でもいきなり過ぎて訳が分からない。
こんな間際まで全く自分の気持ちに気付かないなんてあるんだろか?
庭を歩き回るYから、泣いてるのが見えないように、キッチンのシンクの前にしゃがんで泣いた。
もう会えないんだ…
しばらく泣いた。
しゃがみこんだまま、落ち着くまで待った。
しばらく経って、またYに呼ばれた。
「あの、勝手ながら、ドア塗ったんですけど、色大丈夫ですか?気に入らなかったら言って下さい」と、玄関ドアを支えて手招きされたので、指さされた場所を見あげようと彼をくぐるように近づいた時!!
見上げた私の顔面に、彼の顔が一瞬重なった。
ほんとに一瞬、唇が触れた。
あまりの衝撃展開に、私は声も出せずうしろにひっくり返った。彼はすぐさまドアを閉めて外に出て行った。
え?え?なに?
何が起きたか脳みそがバグりまくって、ノイズが聞こえたみたいにぐちゃぐちゃ。
顔が熱い
きっと真っ赤だろう。
心臓だけがドクドクと激しく飛び出しそうなくらい動いてた。
いきなりキスされたのに、全然イヤじゃなくて、むしろ、ドキドキと胸が苦しく高揚してることに驚いた。
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