【言語持たない族と口から生まれた族】後編
誤解があるといけないので言っておくが
「言語持たない族」が悪いわけでもダメなわけでもない
同じ部族同士ならお互いストレスなくやっていけるだろう
それはもう組み合わせの問題である
そしてたぶんだけど「言語持たない族」にも2通りある
話し合いとか苦手だけれどそれでも前向きにやっていこうと努力できる進化型ととにかく未知のことは怖いから逃げる原種型
で、うちにいるのは後者である
「う、う、う…しゃべりたい…」と心の中でつぶやきながらも
私が貝になりもう7年以上が経ってしまった
気がつけば思うように口が回らなくなっていた
あんなに早口で機関銃のようにぶっ飛ばしていた私が
「あ、あ、あ~~~~なんやったっけ」と
言葉が出てこなくなってしまった
そっちの方がよかったんちゃう?という意見もあるが
それは私の気持ちに反するので無視しておく
さて、言語を使って問題を解決したい女が黙ってしまうということは
問題はそのまま累積しているということだし
コミュニケーションなんかとれてるわけがないし
どこまでも逃げる相手に対して思いやりや理解が深まるわけもない
「もうこの人に期待するのはあきらめよう」
熟年離婚を考える奥さんはだいたいこの境地に達している
だがしかし、私にとってはこの環境、意外と価値があるのだ
うちみたいに色んな要素が極端なカップルの場合(一回り以上離れた年齢、都会と田舎、広告会社の経営者と米農家)、「言語」に関することだけでなく、ありとあらゆることが正反対だったりするし、ひとつひとつの事件が突飛すぎて、俯瞰的に見たらクソおもろい話になる
そう、ネタになるのだ
書くことを商売にしている私にとって毎日がネタの宝庫というのはありがたい
人生なにごともおもろい面を取らないと損ではないか
考えてみれば私のこれまでの順番メタメタな人生とか
3歳で両親からほりだされて親戚たらい回しの母の人生とか
母をほりだした超本人、銀幕女優だった祖母の人生とか
親子三代そろって人生波瀾万丈
小説3巻は書けるネタの宝庫
宮尾登美子みたいに誰かシリーズで書いてくれ
そう思うと旦那と言葉が通じないくらいなんのことはない
なんかしょぼいしょうもない小ネタな気がしてきた
でもこの小ネタがおもろいんだな
ともすればなんとなく過ぎてしまう毎日で
ちょっとした小ネタを見つけてはおもしろおかしく誰かに伝える
それを読んだ人も巻き込んでぼんやりした一日にちょっとだけ色がつく
特に今みたいに遠隔で人と会わずに仕事してる人が多い時は
小ネタ披露会が心の弾みになることもある
そう考えると絶えずネタを提供してくれる夫に感謝しかなくなるから
人間ってやっぱおもしろいのです