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「セクタムセンプラ!」

こんばんは。夢子です。挨拶とかしてる場合じゃねんだわ。
やべえことが発覚したからきいてくれ。夢子は大変動揺している。

時は昨晩に遡る。

夢子はいつものようにヲタフレンズと電話をしていた。その子のことは「ヲタク」とかいておこう。因みにギャルゲー好きのロリが好きなお姉さんである。
その時の議題は専ら「夢小説」「学園祭の王子様」だったような気がするし、「許斐剛」先生だった気もするし、全然別の、夢子の彼氏の話だったような気もする。

まあ、きっかけはなんでもいいんだ。

ヲタク「ちょっと、花摘みに行ってくらぁ」
夢子「おう」

......

沈黙の中、夢子は生チョコレートを齧っていた。ロイズの美味いやつ。

突如、その時は訪れた。


徐に椅子を弾く音。

ダイニングテーブルに手をつきながら夢子の横に腰を下ろして生チョコレートに手を伸ばす、彼女。

???「夢小説ねぇ......」


えっ。

???「アタシ、夢小説読むよ」


「......えっ」

???「晋助さまとかよく読んだわ〜」


好みが合わない。

そう。

夢子の妹である。


◯ユメコズシスター
夢子の5歳下の妹。現在は大学でイラスト、漫画、キャラクターデザイン等を専門に学んでいる。
夢子は、絵が描くのが好きな、にわかヲタクだとばかり思い込んでいた。
高校時代から付き合ってるイケメンのカレシがおり、地雷とかないみたいな顔をしていたので油断していた。ちなみに妹のカレシは電撃文庫を読み漁ってるらしい。いや、ヲタクじゃねーかよ。
「あんさんぶるスターズ!」
のアニメ主題歌「Stars' Ensemble!」パート分けが公式から出される前から、他の男は掠ってもいないくせに、愛した男のパートだけは全て聴き分けた夢子のことをキモヲタだと思っている。親に〇〇桁の課金額を内緒にしておいてくれる優しい一面も。

こんなことはさておき。

姉は混乱した。

あんなに夢子のことを「キモヲタ」「現実みたら?」「人間の彼氏作りなよ」「将来が心配」などとギッタンギッタンに罵倒し馬鹿にしていた妹が、夢女だったのである。

「そ...それで...アンタ一体誰の夢女だったんよ...」

重要である。

ヲタク「ただいま〜」

花を摘み終わったようである。

妹「ん〜〜〜よく読んでたのは......REBORN!!?」

夢子・ヲタク「「REBORN!! !?!?!」」


ヲタクは適応能力が高すぎるのである。

妹が、REBORN!!の夢女だった。

流石に絶句した。

そもそも5つ離れてる時点で、REBORN!!世代ではない。つまり、モロ夢子の影響を受けている。


妹「雲雀さんの夢女だった」

夢子・ヲタク「雲雀!?!!?!さん!?!」


オモロである。


敬称をつけるところでさえオモロである。

妹「雲雀さんとフォンさんに取り合われてたわ」

血は争えない。


私はこの瞬間、妹とはじめて、対等な友人になった気がした。私たちは、血よりも濃い絆で結ばれている。そんな気持ちだった。同じ腹から出てきたんだ。因みに私はフランの夢女だった。ゲロ。

妹「あとはワンピースとか」

夢子・ヲタク「ワンピース!?!!」


ヲタク「だ...誰の夢女だったんよ」

妹「んーーーー?誰とかなかった。逆ハー?」

夢子・ヲタク「逆ハーーーーーーー!?!?!?!!!??!?!!!?!!?!?!」


「逆ハー」なんて言葉を妹から聞く日がくるとは思わなかった。因みに知らない方に解説すると「逆ハーレム」のことである。夢主のことをみんな好きになるまさに女の夢が詰まっている夢小説のことである。

喉がやたら乾いた。生チョコレートが張り付くような感覚。

笑いと動揺と共感性羞恥で死にそうだった。


夢子「...あんた、他のジャンルは」

もうすっかり、Twitter気分である。
我が家とは思えんくらいの白熱。固唾を飲んで見守るヲタク。

妹「ハリーポッター」

夢子「ハリイ!!!!?!!?!!?!」

ヲタク「ポッタァ!!!?!?!!!!」


ハリーポッターである。

妹「うん。スネイプ先生の」

スネイプ。......?ん?スネイプって......。

ヲタク「スネイプ死ぬよね?」

妹「うん。転生トリップして助けに行った」


転生トリップ......

ヲタク「永遠の片想いすぎん?」

妹「そぉぉぉぉおおおおおおなんだよぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」


いきなりヲタクみたいになる妹!
驚き吠える愛犬!
電波越しのヲタクの節句!

大地獄である。


妹「つまんねー夢小説だとスネイプ先生コロっと落ちるんだよね〜」

ソムリエぶってやがる。


妹「アタシが何度も読み返すやつのあらすじはね〜」

読み返してやがる。


妹「原作に忠実に書きつつ夢を追求して欲しいってゆ〜か〜」

違うことなき、我が妹である。


妹「まあ、勧められたらBLも読むんだけど〜」

訂正する。テメーと私の間にあるのは血の繋がりだけだ。


......夢子はこの時思った。
スネイプか、と。

思えば妹と私はいつでも男の趣味は合わなかった。妹はキムタク派で私は慎吾くん派だった。夢子がSexyZoneを冷やかしてる時はきまってV6をガン見していた。神木隆之介が好きだったが妹は玉木宏が好きだった。まごうことなき、年上趣味の女である。どうしたらこんなに好みが真逆になるんだろう。高杉真宙の瞳を愛した私も綾野剛の瞳を愛した妹でも同じ腹から産まれているのである。

............
......
...

こうして、夢子と妹は19年の時を経て絆をさらに堅くしたのである。

妹「もうこんな時間じゃん、寝るわ」
夢子「おう...おやすみ...お姉ちゃん、妹が夢女だったなんて、知らなかったよ...」

「そう?アタシは小学生の時から勘づいてたけどね」


......
...

そんなバブな時から読んでるんかーーい!

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