失恋
「何に負けたの?かわからないことが悔しいだけ♪~」
”SWEET DREAMS” ー松任谷由美
YouTubeで久しぶりにこの歌を聴いた。
すっかり忘れていた曲だったが、たまたま見つけて聴いた。
20年以上前に失恋した時もたまたま聞いて、
自分の心を叫んでいるようなこの言葉に何度も涙したことを思い出した。
最初で最後の失恋だった。
苦しくて、苦しくて、
胸にぽっかり穴が開くとはこういう事なのか。
あの人と行った場所、あの人の言葉、思い出しては、
心が引き裂かれるように痛い。
連絡をくれなくなった。
まだ、スマホなどがない時代だった。
連絡手段はEmailかガラケー。
きちんと終わりの言葉さえも告げず、
逃げるようにあの人は消えようとした。
それを何度も電話をしたり、Emailをしたり、
追いかける私。
やっと会えた日、あの人は「もう会えない」とだけ告げ、
そそくさと去った。その後ろを追いかけた私。
凄くみっともない最後だった。
あんなに、私に夢中だったあの人がなぜなんだろう。
年下のあの人は将来にたくさんの可能性を追いかけたかった、私は安定がほしかった。
ケンカをしても、いつだってあの人から連絡をしてきた。
あの人が私から離れるわけがない、という過信をしていただけにショックは大きかった。
きっと戻ってくるだろう、という期待を何年もひきづったまま、毎日あの人からのEmailを待った。
デートのない週末、楽しそうなカップルをみては、
虚しさを何かで埋めようと必死だった。だからと言って、
新しい恋をする気も起らなかった。
そんな辛い最中に、追い打ちをかけるように、父の病気が見つかり、余命をつげられた。
頼りきっていた父が亡くなり、しっかりしなくては、とやっと現実と向き合い、戻っても来ないあの人をいつまでも待つのはやめようと思った。
前に進もうと決心した。簡単ではなかったが、まずあの人と連絡をとりあったプライベート用のEmailアドレスを削除し新しいアドレスを作った。彼からの昔のメールももうどうでもいいし、どうせ、あの人からのメールなどこないのだ。友人達には変更の面倒をかけたが、ガラケーの番号も変えた。
そんな時、ある男性と出会った。少し歳の離れた彼はやさしくて一緒にいると安心できた。
燃え上がるような恋ではなかったけど、
日を増すごとにこの人に惹かれていった。そして結婚した。
頼りない私を残して逝ってしまった父が心配して、「この男性ならきっと大丈夫だよ」と夫とめぐり合わせてくれたのではないか、と私は信じている。
20年以上たって、ふとこの失恋を思い出し、この経験から学んだことは、あれこれ詮索せずに離れていく者を追うなということだった。友人関係においてもそうすることにした。
もし、もう一度、あの人とのあの醜い最後の日にもどれるのなら、「さよなら、今までありがとう」と言って私があの人に背中を見せたい、と思った。 どうせ、どうあがいても、離れたいと思っている相手の心はもう戻らないのだから。
何に負けたのか、別れの理由など、どうでもいいことで、前を向いて、新しい恋を見つけ、そうすることで乗り越え、成長していくのだろう。