1-3.結婚は、リスク分散でもありリスクでもある
母が父を選んだ理由、それは公務員だったからだ。
母の実家は、飲食店を営んでいて、祖父が60歳の若さでこの世を去った。祖父が亡くなった後は祖母と母の兄が切り盛りしていた。自営業が、どんなに安定していないかを、祖母は痛感していたのである。
それ故、職業を何よりも重視しており、結婚の際は家長である祖母の承諾が必要であった。
母は、父の職業『公務員』に加え、デートに3日間連続誘われ一緒に時間を過ごし、4日目に父からのプロポーズ、恋愛経験のない母は、一瞬にして結婚を決めてしまったのである。
芸能人が交際0日で結婚という報道があるが、父と母の場合、友達の期間はなく、これが本当のまさにスピード結婚である。
母は、その4日間は幻の中にいたようだったと、後に述べている。
小さい頃、何度ともなく、父に『何で母を選んだの?』と聞いたことがあるが、はぐらかされてしまった。私の推測だが、おそらく、その当時、父は既に30歳を超えていたので、結婚に焦っており、簡単に結婚できそうな母を選んだのだと思う。
母はおしゃべりが好きで、父との出会いや結婚当時にいかに幸せだったかを事細かく話してくれた。小さい頃から、喧嘩する度、売り言葉に買い言葉の喧嘩を見る度に、同一人物か?と不思議に思う程であり、そんな2人を見て、こんな夫婦にはなりたくないと心に誓った。
恋愛と結婚は別だ。
一瞬ののぼせた感情や焦り、意地が選択を迷わせる。
人生100年時代、結婚はリスク分散でもありリスクもある。そんな大事な決意を、安易にしてはいけない。
心強いパートナーがいれば、自分が倒れた時や心が折れた時、支えてくれるだろうし、自分も相手が何かあった時にサポート出来るだろう。自分にも相手にとっても、人生ってにおいて危機に直面した時、助け合える存在で、リスクが分散される。
だが、互いに尊重し合えないパートナーは、リスクでしかない。お互いの意思が通らず、片方が一方的に優先されることが多い。
両親を見て、痛感してたはずなのに、自分はどうかというと、私の結婚生活は、決して安易に話せるものではない。後々書いていきたいが、客観的に結婚について書こうとすると、その当時のことを思い出し、追体験し、今でもダメージを喰らってしまうのだ。私にとって心の奥底で隔離しているパンドラの箱は、たまに無神経な夫が昔のことを語りだすと、箱から漏れ出し、その度に結婚生活の継続に危機感を感じるである。