見出し画像

大阪の新たなアートスポット、大阪中之島美術館に行ってきました!

2022年の2月2日にオープンした大阪中之島美術館に行ってきました! 

大阪の京阪本線の渡辺橋駅から地下街に行き、ダイビルを抜けて徒歩5分ぐらいの場所にあります。

大阪市立科学館と国立国際美術館のお隣です。大阪中之島美術館がオープンして、中之島は33つのミュージアムが立ち並ぶカルチャースポットになりました。

1990年に美術館準備室が設立されてから、開館するまで32年、 また、美術館構想が発表されてからは、なんと、約40年! 

長い道のりを経て開館した美術館です。

これまで、美術館の収蔵作品になるべく収集されてきたコレクションは、美術館準備室主催の展覧会でお披露目されたり、貸し出されたりして、その一部を私たちも見る機会はありました。

私も、モディリアーニ展やマグリット展で、大阪の新美術館準備室の作品が国内にあるものの中でも有数の作品だったことが印象に残っています。

そんな感じで、ポツンポツンと見る機会があった作品たちが、いずれも質が高く「大阪のコレクションはすごい、開館すれば国内有数の優れたコレクションを持った美術館になるだろう」と、長年期待されてきました。

ついに、そのコレクションが明らかになる時がきました!

というわけで、開館記念の展覧会は、もちろん、そのコレクションの全貌が見られるもの。

その名も

「超コレクション展 99のものがたり Hello Super Collection!」

美術館と展覧会を観てきた感想をレポートします!

1. 建物はブラック・キューブ! 上へ上へといざなわれます!

美術館の建物は一見したところ、真っ黒で大きな四角い建物です。美術館の入り口に向かうため、階段をのぼっていきました。

外観の様子:黒い四角い箱!
入り口の大きな看板
入り口に向かう階段

中に入ってチケットを購入すると、今度はエレベーターで上がっていきます。展示室は4階と5階なので、ひたすら、上へ上へと上っていく感じです。

のぼっていくところ、上から下に向けて撮った写真


エスカレーターを乗り換えて
どんどん上っていきました!

展示室がある4階にたどり着くまで、ひたすらのぼっていきました。

ふと、大阪中之島美術館とお隣の国立国際美術館が対照的な印象だなぁと思いました。

大阪中之島美術館は、ブラック・キューブ! ずっしりとした重量感を感じる外観で、中に入ると、上へ上へと上っていく感じ。

一方、お隣にある国立国際美術館は曲線を基調としていて、鉄とガラスからなる外観は透過性があって軽さを感じさせます。また、建物の中身は地下に潜っているため、館内に入ると、こちらはひたすらエレベーターでくだっていきます。

外観も中に入った印象も、この2つの美術館の建物は対照的です。

いよいよ展示室の階へ!
上から見るとかなり高いです! ひゃー!
4階展示室入り口です

大阪中之島美術館の展示室は、4階が1400㎡、5階が1700㎡、トータルで3100㎡の展示スペースを持った美術館です。訪れるのに、ちょうどいい規模だと思います。

この2つの展示室の大きさだったら、普段は常設展と企画展と使い分けて、大型の展覧会を開催するにも十分です。

関西地域で、大型の巡回展が開催できる拠点が増えたことで、新幹線代をかけて東京に行かなくても近くで見られる展覧会が増えるのはとても楽しみです。

いよいよ展示室へ!

2. 大阪市中之島美術館のコレクションにはどんな作品があるの?

今回、「超コレクション展 99のものがたり」で出品されていたのは約400点、かなりボリュームのある展覧会でした。

しかしながら、美術館のコレクションにある作品は全部で6,000点を超えるとのことなので、それでも展覧会に出品されていた作品はほんの一部です。

6,000点もどんな作品があるんだろう? と気になりますよね。

大阪中之島美術館のホームページによれば、美術館の収集方針として、次の5つをあげています。

・佐伯祐三を中心とする近代美術の作品と資料
・大阪と関わりのある近代・現代美術の作品と資料
・近代・現代美術の代表的作品と資料
・大阪と関わりのある近代・現代デザインの作品と資料
・近代・現代デザインの代表的作品と資料

大阪中之島美術館ホームページより
https://nakka-art.jp/collection/top/

大阪市が設置する美術館として、大阪にゆかりのある作家を顕彰していくということが大きな使命となっていることがよくわかります。

また、驚いたのは、近現代のデザインの作品や資料が充実していたことでした。2010年に閉館されたサントリーミュージアムのポスターコレクション(約18,000点)が寄託されているとのこと。それと合わせると世界有数のデザインコレクションになっているようです。今回の展覧会でも、デザイン分野の作品は展示スペースをかなり大きくとって紹介されていました。

では、いよいよ展覧会についてレポートします。展覧会は3つの章に分かれていました。それぞれの章の魅力についてお伝えします!

2-1.  第1章 Hello! Super Collectors

コレクターに焦点をあてた最初の章では、いくつかのまとまった個人コレクターの寄贈が、美術館構想のきっかけとなって大阪中之島美術館のコレクションがはじまったことが紹介されていました。

中でも注目すべきは、大阪生まれのパリを描いた夭折の画家、佐伯祐三作品のまとまったコレクションです。まさにこのコレクションの寄贈が美術館構想のきっかけとなったとのこと。今回の展覧会では佐伯祐三作品は8点が展示されていましたが、大阪中之島美術館では全部で約60点! も所蔵しているそうです。 今後、個展を含め特別展や常設展で展示されるのがとても楽しみです。

また、佐伯祐三とかかわりの深い荻須高徳の作品や同時代にパリで活躍していたマリー・ローランサンの作品も第1章で紹介されていました。

★ 展示室内は撮影禁止でしたが、一部撮影が許可されていた作品のお写真を以下に掲載しています

佐伯祐三《郵便配達夫》1928年
ささっと描いた風だけど、特徴を捉えているのがすごいですね!
直線を強調した描き方から、
この郵便配達夫の方の生真面目な感じが伝わってきます!
マリー・ローランサン《プリンセス達》1928年
なんとも優雅で華やかなプリンセス達です。華やかで軽やかで「あー、キレイ!」って思う一方で、知らない人にいきなりめっちゃプライベートに入られたというような、奇妙な違和感を覚える絵です。絵の中の人たちが、私を見かえしているからかな。しかもあっちは4人(と犬)!

そのほか、第1章では、大阪と関わりのある近代から現代までの作品も紹介されていました。

小出楢重や北野恒富など、日本の近代洋画や日本画を代表する作家をはじめ、近代から現代に至るまで、日本の(大阪の)美術史を彩ってきた作家たちの作品が展示されていました。

石崎光瑤《白孔雀》1922年
右側の白孔雀のふわーっと羽を広げたさまがなんとも美しい絵です。
画面いっぱいに描かれているので迫力あります。
アシンメトリーの構図は粋に見えます。

中でも、大阪のモダニズム写真と、吉原次郎と今井俊満の作品はまとまった形で紹介されていました。これらの作品も、今後、様々な展覧会の中で改めて紹介されていくのだろうと期待が高まります。

花和銀吾《複雑なる想像》1938年 
コラージュというかアッサンブラージュ写真 いろんなものが貼り付けられています。画面から強い視線を送ってくる裸婦の女性の体の半分は魚の鱗みたい、ということは、彼女は人魚?!長靴には目がつけられている。そして気になるのは手錠に見える金属の輪っか。彼女の足枷みたいなものを表現しているのかな・・・ 彼女の目からは涙が垂れているようにも見えますね。その横に置かれた突起物は何を表しているんだろう…… 
戦前の日本のモダニズム写真の表現、めちゃめちゃおもしろいですね!
今井俊満 《New York (C)》1981年
この作品、写真じゃわかりにくいんですが、めちゃめちゃかっこよかったです!
爆発しているけど、なんともたたずまいがあって。この作品が展示されているお部屋は黒い壁になっていてそれもかっこよかった!

これらの作品を見ていて、やはり地域の美術館がその地域にゆかりのある作家の作品を収集し、調査研究し、その成果を発表していくことは、その地域の文化が発展するためにとても大切なことだと感じました。地域の文化を残していくだけではなく、地域のアイデンティティ形成にも大きな役割を果たしていくことにつながると思います。

また、すでにこれだけまとまった形でコレクションができているというのも、素晴らしいです。やはり準備期間が十分にあったことが大きいのでしょう。今後、また調査・研究が進んでいくことで、さらに作品も集まってくることでしょう。やはり、地域の文化拠点の一つとなる美術館ができるというのは、文化を次世代に残していく上でとても大きな出来事だと感じました。

2-2. 第2章 Hello! Super Stars

第2章では、タイトルの通り、大阪中之島美術館が誇るコレクションのスーパースターの作品たちが紹介されていました。

とにかく美術史に燦然と輝く巨匠たちの作品がズラリと並び、しかも、それらがいずれも作家の代表作に並べられる超一級品ばかりというのが、とにかく圧巻でした。

モディリアーニの裸婦像の大作をはじめ、ジョルジョ・デ・キリコやマックス・エルンストにサルバドール・ダリ、ルネ・マグリットといったシュルレアリスムの作家たちの作品。ジャコメッティに、ハンス・アルプ、ジャン・フォートリエ、マーク・ロスコにフランク・ステラのブラック・ペインティング、ジャン=ミシェル・バスキア、ジョージ・シーガルに草間彌生。ゲルハルト・リヒターの映像のように描かれた絵画にチャック・クロース……。

名前をあげるだけで大物揃いとわかります。しかし、スーパースターたちの作品だというだけではありません。

例えば、モディリアーニの裸婦は日本国内にあるモディリアーニ作品の中で唯一の裸婦像とのこと。

ステラのブラック・ペインティングシリーズは、ミニマル・アートの代表的な作品、しかも、たった23点しか制作されていない中の1点です。

また、ゲルハルト・リヒターの「フォト・ペインティング」シリーズも写真や映像というメディアが表すイメージを絵画のモチーフにしたリヒターの初期の代表作です。

ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》1957年
マグリットの作品によく登場する、黒い帽子を被った男の人とボッチチェリの絵に登場する女性が背中合わせで描かれています。この女性は花の女神フローラとのこと。
背中の刺青に観音様を彫ってあるみたいな、そんなイメージに見えてきました。

これだけの作品を揃えられたのは、やはり1990年代に作品収集を始めていたということが大きかったのではないでしょうか。まず何より、当時の日本の経済力が、間違いなくこれだけ質の高い作品の購入力に繋がったはずです。また、購入当時はそこまでの値段ではなかったけれども、時間が経つうちに作家や作品の再評価が進み、今ではとても買えない値段になっているものも多いのでしょう。当時、収集に携わっていた方達の高い「目利き」力を感じます。

例えば、展示されていた草間彌生の《アキュミュレーション》は、1960年代に描かれた赤のネット(ドット)が描かれたかなり大きな作品です。作品の物語として、1990年に開催されたニューヨークの国際現代美術センターで開かれた草間の回顧展で展示され、その2年後に収蔵されたと紹介されていました。今では世界的に知られ、その評価がどんどん上がっている草間彌生も、90年代は、彼女の60年代の活躍が忘れられつつあり、再評価が始まったばかりだったはず。そう考えると、大阪中之島美術館のコレクションが90年代に始まっていなかったら、この作品は海外に流出していた可能性も高かったと思います。今、こうやって私たちが見に行ける場所に作品があるのはとても幸運なことだと感じました。

また、数年前に元ZOZOの前澤友作さんがオークションで123億円!という高価格で落札したと話題になったバスキア。大阪市中之島美術館でバスキア作品を購入した時は、バスキアが注目されはじめたばかりで、同時代の最先端の美術という位置付けだったそうです。

そのほかにも、森村泰昌がマネの絵に入り込んだ《美術史の娘(劇場A)》や、やなぎみわのエレベーターガールシリーズ《案内状の部屋》や杉本博司の劇場シリーズ《Marion Palace, Ohio》など、1980−90年代に新進気鋭の作家として美術界に登場し、今では押しも押されもせぬスーパースターたちです。

第2章では、スーパースターの作品をたっぷり堪能しました。

モーリス・ルイス《オミクロン》1960年
絵の中心が空っぽの巨大な絵。絵の具を垂れ流して描いていらっしゃるそうです。色の組み合わせがキレイです。絵の中心にひきこまれていくような感覚を覚えます。
現在のオミクロン株が猛威をふるっている状況下で、オミクロン作品を見ると、絵の中に見えないオミクロンの脅威まで感じそうで、新たな解釈を生み出したくなります。

2-3. 第3章 Hello Super Visions

第3章では、大阪中之島美術館が誇る200点ものデザインコレクションが紹介されていました。

アール・ヌーボーに、ウィーン分離派、未来派にデ・スティル、バウハウス、ロシア構成主義やアールデコと近代デザインから、1980年代にいたるまでのデザイン史を一気にかけぬけるような展示でした。

ポスターでそれらの時代のデザインが見られるばかりか、フォトモンタージュの作品やデザインの動きに影響を与えた絵画なども展示されていました。食器や家具といったデザインされた物の現物も展示されていて、この部分だけでも、一つの展覧会として十分すぎるほどのボリュームがありました。

倉俣史朗《ミス・ブランチ》デザイン1988年/製造1989年
美しくて優雅で、なんともゴージャス!
とにかくうっとりするような美しいデザインです

展覧会のテーマとなっている作品にまつわるそれぞれの物語について、インターネット展覧会として以下のサイトで楽しむことができます!https://nakka-art.jp/untold-99-stories/index.html


3. その他大阪中之島美術館の魅力

大阪市中之島美術館のお隣には国立国際美術館があり、さらにそのお隣には大阪市科学博物館が立ち並んでいます。ミュージアムが集まっているので、展覧会をはしごして1日中楽しむこともできます。

また、淀川沿いに建てられているため、展示室と展示室の間のパサージュからは、水の都大阪の風景を楽しめます。

ロンドンのテムズ川沿いにあるテートモダンを思い出しました!
この日は雨だったけど、晴れた日の景色はすごくキレイだろうなぁと思います!
椅子に座って景色を見ながらゆっくりすることもできます!
過去にコレクションの一部が紹介された展覧会のチラシが飾られていました!
ヤノベケンジ《ジャイアント・トラやん》2005年
4階展示室と5階展示室の間には、迫力のトラやんが!
美術館のグッズのバッグが超オシャレです!

春にはインテリアショップやカフェレストランに、アーカイブズ情報室なども追ってオープンされるとのこと、今後の展開も楽しみです。


新美術館のオープン、おめでとうございます! これから拝見しに伺えるのを本当にとても楽しみにしています!

4.大阪中之島美術館に行ってみよう!

大阪中之島美術館の魅力は、なんといってもそのコレクション。

開館記念の展覧会では、6,000点もの作品から選りすぐられた400点の作品に出会うことができます。

また、ミュージアムが立ち並ぶところに位置し、中之島は大阪の文化の拠点としてその魅力をますます発揮することになりました。

その後も、春には「モディリアーニ ー愛と創作に捧げた35年ー」をはじめとして、期待の展覧会が目白押しです。

・「モディリアーニ ー愛と創作に捧げた35年ー」 2022年4月9日(土)〜7月18日(月・祝)

・「みんなのまち 大阪の肖像」 【第一期】2022年4月9日(土)〜7月3  日(日)【第二期】2022年8月6日(土)〜10月2日(日)

・「展覧会 岡本太郎」 2022年7月23日(土)〜10月2日(日)

・「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」 2022年10月15日(土)〜2023年1月9日(月・祝)

・「すべて未知の世界へ ーGUTAI  分化と統合」 2022年10月22日(土)〜2023年1月9日(月・祝)

・「大阪の日本画」 2022年1月21日(土)〜4月2日(日)

・「サラ・モリス展(仮称)」 2023年1月28日(土)〜4月2日(日)

大阪市中之島美術館の展覧会スケジュールパンフレットより

ぜひ、お見逃しなく〜!

展覧会情報

「Hello! Super Collection 超コレクション展 ー99のものがたり」

2022年2月2日(水)〜3月21日(月・祝)

入場料

一般:1,500円



いいなと思ったら応援しよう!