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健康経営、喫煙所からお菓子所へ
2019年1月19日(土)付日本経済新聞夕刊一面には、次のような記事が掲載されていました。
以下一部転載。
「たばこを吸わない人に煙たがられ、オフィスから愛煙家の姿は減る一方だ。最近では勤務時間内の仕事の効率を高める働き方改革や、人手不足の中で健康な人材を確保する動きが、社内の全面禁煙に拍車をかけている。顧客や投資家の目も厳しく、仕事中の「ちょっと一服」はますます肩身が狭いようだ。…(中略)…一般的に、たばこを吸う人には「喫煙所での何気ない話が仕事のアイデアにつながる」との意見がある。だが自身もたばこをやめた小浜さんは「喫煙所の限られたメンバーで話すより、大人数での会話の方が生産性が上がる」と言い切る。…」
喫煙に関しての私の見解はこれまでに何度か述べさせて頂きました。例えば、拙書「100の企業で働いた男の仕事術(2011)」の焦点は仕事に合わせなければならない #11の項では、10分間の休憩時間を喫煙以外の時間に費やすことのメリットや喫煙はニコチンに対する依存症状を補う行動でしかなく気持ちを落ち着けることやストレス発散には繋がらないということについて書かせて頂きました。
しかしながら、喫煙というものには未だ、大別すると2つのメリットが残っていると言えます。1つ目は、「こまめに席を外す機会を作れる」ということ。2つ目は、「イノベーションの起点を作れる」ということ。
先ず、前者についてですが働きやすさランキングで上位に位置する企業では、業務における座り過ぎが労働生産性の低下や健康経営にとって悪影響を及ぼす事から、1日に最低何回以上席を外す事などを指定している企業があります。具体的には、離席の際には画面ロックが義務付けられており、その画面ロックの回数が記録され統計データとして管理者が定期的に確認できる体制となっています。離席の回数が少なすぎますと、もっと席を外すように指示が出ることもあります。
未だに一部の旧態依然の組織に残っているような、決められた時間内はただ単に席にじっと座っていれば仕事をしていると思い込んでいるような管理体制ではないということです。誰かに決められた時間内は、誰かに決められた座席にずっと座って、誰かに決められた仕事を、誰かに言われた通りにやるだけで、自らで責任は取ることを避けた上で可能な限り誰か他人の責任にしたがるような人たちによる旧態依然の組織ではないという事です。 このような旧態依然の組織では、T.T.(Thinking Time)の活用なども全く考えられないと言えます。T.T.(Thinking Time)とは、原田泳幸さん著「とことんやれば必ずできる」(2005)にて原田さんがマネジメントをする上で非常に重視されている時間として記述されています。多忙な業務においても、忙中閑有りで15分程度の考えるためのスキマ時間を定期的に確保することで、業務の全体像を把握することや反省の起点となり労働生産性の向上に繋がります。前述したような、誰かに決められた仕事を、誰かに言われた通りにやるだけの、日常で頭を使わない人たちには、労働生産性の視点やT.T.の概念すらないとも言えます。
次に、2つ目の「イノベーションの起点を作れる」ということに関しては、昨今では「喫煙所での何気ない話が仕事のアイデアにつながることや、業務では接点のない人同士の接点の場となりイノベーションの起点になる」ということを、革新的な企業ほど重視する傾向が強くなっています。そうは言いましても、何気ない会話や、業務では接点のない人同士の接点の場は、健康に悪影響を与える喫煙を促進する喫煙所である必要はなく、代替の場を用意するようになっているということです。例えば、フリースペースに社員が集まりやすいように屋台を作り一部を無料で提供する、或いは、お洒落なカフェスペースを併設する企業も増えてきています。
私も喫煙所は不要だと考えているのは変わりませんが、その代替方法としては手軽に導入可能な「お菓子所」を作ることを私は推奨します。「お菓子所」とは、気分転換のために気軽にお菓子やコーヒーを持ち寄り会話が出来る、ワークスペースとは隔離したスペースのことです。喫煙所が持つ業務にメリットを齎す機能的価値を代替することが可能になります。「お菓子所」が、異質の出会いの場となりのイノベーションの起点になることでしょう。
※こちらは2019年1月24日(木)のnakayanさんの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。
中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp
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