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遺品整理を請け負った時の話。その後の出来事。
この件から数年後の一月も終わりにさしかかった時だった。その年は例年になくとっても寒かったのを記憶している
父親には4つ下の弟がいる。お互い独り身なので一週間に一回は電話のやり取りで安否確認を取る事にした。と父から話は聞いていた
子供の頃、とっても可愛がってくれた叔父さんだった。
叔父さんの安否が確認出来ない。と連絡が来た。
電話をしても繋がらない。一週間前に電話で話した様だ、そして元気そうだったとの事。
携帯は持っていない。
旅行でも行ったんじゃないの?
いや、そんなことは無いな。出不精だから。と父
気になるなら家に行ってみたら?実家から自転車で20分位のところに住んでいる
そーだな。行ってみるか。と電話を切って数時間後。
ダメだ。死んでる。死んでるよ。。声が上ずってる父からだった
えっ?叔父さんが?
うん。死んでる。
えっと、まず、救急車?それとも警察?
どっちにも連絡したよ。到着するまでここにいる。
わかった。また連絡して!!
なんなんだ。この展開は。ひとまず落ち着こう。
救急隊の人に、亡くなって数日経ってる感じですよね。警察の到着を待ちましょう。と言われたとのこと。
直ぐに警察が到着。父親は事情聴取の為に警察へ行くと連絡が入る。
なんなの。一体何が起きてるのだろうか?
既往症があったと聞いたことがない。
まさか。事件?事故?んんん。自死なのか。
この先、私は何をどうすれば良いのだ?父親の連絡を待つしかないな。
夜の7時頃だったか、今から警察署に来てもらえないか?と父親から連絡が来た。叔父さんの身元確認を一緒にして欲しいとの事。
わかった。今から向かうね。と電話を切ったものの。
身元確認って,叔父さんに間違いないわけよね?
叔父さんの家に行って、人が死んでて、父は弟だと思って警察に電話したんだよね?
なのに、改まるの。改めるもんなの?
そっか。絶対叔父さんって事ないのか。違う人って事もあるのか。なんー。このサスペンスの感じ
船越英一郎を思い出してしまったじゃないか。いや、冗談言ってる場合じゃない。
なんだか。。。
叔父さんと対面するのが怖くてなって来た。
確認させられるって事はどんな状態なんだろうか?
あぁーーー。どうか、どうか。安らかであります様にと願わずにはいられなかった。
警察署の裏手側ある霊安室に案内される。
こんな場所にあるんだな。
真冬だったせいもあるが、とっても寒い殺風景な部屋で仏壇があった。
黒い袋の中に入れられている。では、確認してください。
〇〇さんで間違い無いですか?と袋を開ける
えっ?!っと声が出た。手で口元を押さえてしまった。
叔父さんなの?叔父さんだよね?
思わず聞いた。一週間で人間ってこんな状態になるんですか?
栄養状態が悪かったんだと思うんですよね。それと、住んでるお宅は北側にあってここ最近寒さも厳しかったのもあると思うんですけど
私の語彙力のなさを嘆いてしまうが、うまく表現する言葉が見つからない。
一言で言えば、ミイラの様だった。腐乱してる様でもなく、干からびてしまっている。
一週間で?信じられなかった。
他殺や自死ではなく病死であること、死因は心不全と説明された。
色んな手続きをし、荼毘に附した。
そこからである。住んでいた借家を明け渡さなければならない。
幸い、取り壊す事になってた市営の長屋だったので期限は特に言われなかったのが本当に幸いした。
これを業者に遺品整理と掃除を頼まなければならない。数件の業者の見積もりを取るも、料金はそれなりの金額になる。そりゃーそうだ
自分も体験済みである。普通の掃除とは訳が違う。
しかし、臭いが全くない。上に、汚れていないのだ。これはそんなに大変じゃないかもな。とも思った。
最後の業者の見積もりを上げてもらって、ちょっと聞いてみた。
これって、数人で時間かければなんとかやれますかね?実は、私、数年前に、遺品整理と掃除した事があるんです。ここよりももっと広い部屋で、臭いも酷い部屋を。なので、これだったら素人でも出来る様な気がするんですけど?
出来ますよ。この案件なら時間かければやれますよね。幸い、臭いもないですし、大概臭いは出るもんですけど、全くしないですよね?一度、経験した事があるならやれますよ。業者に頼むと値段かかりますもんね。
やられますか?ご家族で?
ええ。ちょっと話し合ってみます。
そこから、父親を交えて家族会議。
子供達にはそれなりのバイト代を支払う事を約束して、家族総出でやる事にした。
お金に変えられるものは、業者に引き取って貰い。←それ専門の業者がいらっしゃるの。
通販好きだったと見えて、四畳半一間に溢れるほどの品が無使用で積み上げられていた。
さては?叔父さん、買って満足してたタイプね?
あれこれ片付けていくと、と言うより発掘作業に近い。一人暮らしにしては相当なモノで溢れかえっていた。
吸引力が抜群で有名なあの掃除機が出て来た。殆ど使ってない感じよ?
いや、この掃除機の威力を発揮出来る状態じゃないわよ。この部屋。荷物が一杯で掃除機かける場所がないじゃないの。使っていたんだろうか?
冷蔵庫や台所には食糧が沢山詰め込まれた。
栄養状態が悪かった.と言ったたけど、食糧事情は我が家よりも潤っていた様に見えた。
何があったんだろうか? 今となってはわからない。
開かずの押し入れに取り掛かった時、アルバムが出てきた。叔父さんと父親の学生時代の写真やら会社員だった時代のもの。
手を止めて見入ってしまった。
あれ?これって私だよね。。写真の裏には父と母の名前と私の名前が書いてあった。
叔父さん、可愛がってくれたっけな。ちゃんと取っておいてくれてたんだ。
何かがこみ上げてきた。
叔父さんの思いに触れた気がした。ありがとう。愛されてたな。あたし。
一か月ほどかかっただろうか、軽トラで清掃工場に何度も往復して
片づけた。やれるもんだな。と言うより、やってよかった。
業者に頼んだとしたら、この写真はきっと捨てられていただろうし、こんな気持ちにもなれなかったと思う。そしてあの経験があったから、やってみよう。と思ったのだ。
まさか、自分の身に降りかかるとはあの時、想像もしてなかったけど改めてあの出来事に感謝した。
叔父さんの生活状況も把握できず、通販で買ったものが次々と届けられ、市役所やクレジットカード会社、公共料金、年金。。。手続きに翻弄されながら、この最中に父親が怪我をして入院の騒ぎになり、この手続きを一人でこなさなきゃならなくなり途方に暮れて時もあったけど、何とかなった。
物事ってなんとかなるもんだな。を経験した。
掃除機が壊れて買い替えなきゃな。と思った矢先だったもので、吸引力抜群の掃除機をも頂きました。ありがとね。叔父さん。