いきなり訪れる別れの覚悟。
人生には上り坂、下り坂、まさかの三つの坂があります。いつだったか?
瀬戸内寂聴さんがどこかの番組で言ってたな。
結婚式の祝辞での定番、三つの袋みたいなもんなのか?胃袋、お袋、給料袋だったっけ?知らないけど。
そのまさかの坂の話。
話が話だけに途中で切るに切れず
めちゃくちゃ長編になってしまった
先月の末、退院となった親父。、退院が嬉しいとの事で夜も眠れなかったとメールが届く。
なんだよ。可愛いじゃないか。
歳を重ねて来て素直な気持ちを言える様になったのだな。と娘ながらも目を細めた
しかしだよ。
山の行より里の行
シャバに出てからこそが本番。
減塩食に酒、コルセット着用なので動ける範囲が限られてる。
これらをケアマネと話し合い段取り付けて
朝イチにお迎えにあがった。
顔色が悪いだが?
黄ばんでるとでも言うのか?←
なんか嫌な気持ちになった。
そーいや先週も顔色が良くないなぁ。と感じたのだ.
年寄りは数ヶ月入院するとこんなもんなのか?陽も浴びてないし。なんだかザワザワとする。
病院のスタッフ総勢8名程にみおくられ
エレベーターに乗った途端
なんか足に力が入らないんだよな。と親父
えっ?
少し経つと大丈夫になるだよな。
長期入院するとそんな事にもなるのだろう。いや、でもなんか気になる
東京から妹も来てくれて、生活環境を整えて、食事の事やこの先の酒との向き合い方を家族会議。
酒は辞めたくない。量は減らす。朝からは飲まない。と断言しているけれど
一滴たりとものんではならぬ。と指導を受けている。食生活ももなかなかハードルも高い。酒もダメ、これもダメ、あれもダメ。なんだか切なくなるだろうな。
親父はノンアルのビールの存在を知らない。夕食の時についでみた。
美味いなぁ〜!とご満悦。
それ、ノンアルコールのビールだからね
えっ!と驚いてる。
そっかー。これでも美味いなぁ。とシミジミと味わい満足そうだ。
そんな夕食も終わりに差し掛かった時。トイレに立つ時も足に力が入らないと益々不安になる。
数年前に高カリウムで同じ症状があったのを思い出した。
まさかね。今日まで入院してたんだから
その日は早々に疲れもあってベッドに入ったのだった。
翌日、なんだかやっぱり力が入らないんだよな。おかしいなぁ。
少し経つとまた復活するの繰り返し
選挙には行かねばならん。と意気込んで
投票を済ませて帰って来た。
だめだ。やっぱりおかしい。
足どころか体全体が動かない様だ。
病院に連絡してくれ。と親父。
救急外来に電話して診察してもらう事になり、車に乗り込もうとした
その時
腕が上がらないんだよなぁ。と手を伸ばした手が痙攣し始めたのだ。
えっ?
お父さん?と声かけるも反応がない。
体が硬直して意識が飛んでる。目を見開いて体が動かない。
お父さん!!
救急車を呼ぶから!!と声をかけ家に駆け上がる。
幸い、我が家にはボタン一つで消防署に繋がる様になっている。
そして、幸い消防署は叫べば聞こえるほどの距離。
叫んだ方が早いけれど、ここで叫ぶわけにもいかない。
妹が居てくれたお陰で落ち着いて状況を説明、直ぐに向かいます。との事
直ぐにサイレンの音が聞こえて到着
しかし、そこからが長いのだ。
えっ?昨日まで入院していた病院には話が付いてますけど?
それが救急車で行く場合、受付方法が異なるんです。受け入れてくれる病院を当たってますから。
えっ?そのシステムの意味がわからないのだが?
なかなか救急車は動かない。こんな時、時間が長く感じるモノだ。
結局の所、受け入れは昨日の入院先になり私達は後を車で追う事にした。
いよいよなんだろうか?
意外と落ち着いている自分を感じるけれど、これは妹がいてくれてるからだ。
私一人だったならばパニックになってる気がしている。
そして
昨晩、久しぶりに家族三人で美味しそうに夕食を囲んだ親父の顔を思い出していた。と同時に、目を見開いて痙攣している親父の顔が頭から離れない。マスクをしていたから幾分まろやかではあるけれど。
病院に到着。
慌ただしくなる診察室。
心電図が運び込まれ、更には医療ドラマで見た事ある代物。山Pが使ってたやつ!胸に当てて、チャージとか言ってバン!って音がするやつ。あれなんて言うの?
呼び出されたのだろうか?
休日だった様で白衣を着ながら走って来た医師が一人診察室へ入って行った。
緊迫してる空気感。
そこへ医師が私達の元へ来て
危篤状態で、この三日間が山なので
覚悟してください。
高カリウム血症でこの数値まで上がると
心臓が回復するのは難しいです。
高齢ですから。
つーか?昨日まで入院してたんですよ?
その様ですね。今言えるのはここまでなんです。HCUに運びます。
ストレッチャーに乗せられ運ばれる親父
おや?顔色が良いんだけど?
しかも、こちらに手を振ってるけど?
高貴な感じなお手振りなんだが?
最後の力を振り絞ってるのだろうか?
病棟の扉が閉まる。
改めて、説明を受ける。
いつ心臓が止まってもおかしくない状態です。意識は戻って来たのでそれは少し安心材料なんですけど油断出来ないですね。
その話の流れから
前回の入院でカリウムのコントロールする薬が二か月ほど処方されてない事が発覚した。
なんでですか?
うぅーーーん。骨折で入院されてたんですね?入院当初血液検査はした様なんですがそれほど数値が高くなかったからだと思われます。
それは薬を飲んでたからでは?
カルテを見て貰ったら分かると思うけれど数年前に同じ症状で入院もしていたし、この疾患でここの病院でも定期的に診察してもらっていたんですよ?
お薬手帳も提出していたし把握してくれてたんじゃ?
うぅーん。と言葉を濁す担当医。
今、それを言っても始まらない。
後ほどゆっくり話をするとして
現状は兎にも角にも親父は危篤状態
それが現状だ。
あれこれ私の予定を組んでいたことも事情を話しスケジュールを組み直して貰ったりと迷惑かけてしまった。先が読めない数日を過ごす
携帯を片時も忘れず、いつ、どんな時
連絡が来るかもしれない。と思う日々はなかなかキツい。
そんな山を越えそうな4日目
音沙汰なし。便りの無いのは良い知らせ
とは言うけど
田舎から都会に行った息子ならいざ知らず、危篤と言われ、山だと言われ
今、どんな状況なのか?全く分からず
この状態待ってられるか!!
痺れ切らしてこちらから病院に向かう事にした。
親父に会う事は出来ないがHCU担当の看護師と話が出来ますと通された。
山が越えたとはまだ言えない状態なんですが,数値は落ち着いてます。食欲もあり、ベッドから起き上がって歩く事が出来ます。それとサインをお願いしたい書類がいくつかあるんです。
おーーーい!
サインが必要な書類がある。それに
山は超えずとも、安定してます。って
何故に連絡くれないのだ?
忙しいよね。そりゃそうだ。そーなんだろうけどもさー。
こちらもあれこれ考える事もあって、それなりにメンタルがヘロヘロのビッタビタだったよ。連絡欲しかったよ。
ともかく、生き延びてる様だ。
あっ。お父様に会われますか?
会えるんですか?
近くでは会えないんですけど
あのカーテンから顔出す事は出来ます
一応、見飽きた顔だけど、見ておきます。
カーテン越しからひょっこり現れた親父。
おっー!!生還したぞ!!
この先はおまけの様なもんだなっ!と叫んでる。叫ぶ元気がある血色もよろしい。
しかしだよ
ここは重篤な患者さんが入院されてるHCUである。相変わらずな親父に、看護師も私たちも思わず吹き出してしまった。
ここは笑って良い場所なのだろうか?
親父はあの世から返されたわけだな
生きてます。生かされてます。お陰様で
#生前整理 #父と娘#エッセイ
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