悪徳マルチに挑んだ親子の話②
息ってどーやってするんだっけ？
深呼吸するんだけど、吸ってる気がしない
最初のとっかかりはなんとなく想像つく。
学生時代の友達から連絡があって
会う事になった。とかの類だろう。
私だって、この年代の時に経験したネタでもある。入会する一歩手前まで行った経験がある。
中学時代にそんなに仲良くしてなかった友達から面白い話があるんだけど会いたい。って連絡来たの。
はい。だろーね。
ファミレスで待ち合わせして
そしたら、友達と見知らぬ人が一緒にやって来たの。
ええ。ですよね。ええ。目に浮かびますとも
大して仲良くなかった学生時代のクラスメートから会わないか？の誘いってロクな話じゃないから止めときな。と言われたんだけど
会う前から決めつけるのって嫌だな。って思ったんだ。もしかしたら、ただ私に会いたい。って思って連絡して来たのかも知れないじゃん。って。
会いたいって思ってくれた事が嬉しかったんだよね。
ええ。その助言をしてくれたお友達をハグしたい気持ちにかられてます。母は。
面白い話って件は気にならなかったの？
なんだろー？とは思った。
あー。そうなんだ。思わず天を仰いだ。
夢ってある？こんな事したいな。あんな事したいな。って事ある？って聞かれたの。
台本通りだな。おい
自分の好きなことや夢だった事とか
一人暮らししたい。とか話したの
ええ。で？それにはお金がかかるよね？と言いませんでしたか？その方。
うん。で、そのお金を楽しく稼ぐ方法があるんだけど。って
貴女のその叶えたい事を全力で応援するよ。
一緒に叶えようよ。って言ってくれた
絵に描いたような流れだな。
で？これはどんな仕事でどんな風にお金が稼げるの？
うーーーんと。外国為替で投資するんだって。
全く意味がわからない。もっとわかりやすく話して下さい。
貴女はそれに興味があったの？
てか、その投資とか外国為替ってなに？
上手く説明出来ないんだけど、それで稼げて、成功してる人が沢山いるんだよ。
元警察官の人とか、教師とかいるんだって
目眩がする。頭に血が上る。爆発寸前の域
聞くんだ。聞くんだ。まだ話は途中だ。
思わず、唇をギュッと噛んだ。
あのさ。それには先にお金払わないといけなくってさ。まぁ。投資って事なんだろうから
金額はいくら払った訳？
７７万円。
はい！ビンゴ！
ここまでの経緯、サイトに載ってた事と寸分狂わず同じだよ。
で？そのお金はどーしたの？貯金あったの？
ううん。ア○ムとレ○ク。
ヘンゼルとグレーテルみたいに言うな。
アンデルセン童話かよっ。←グリム童話らしい
連れて行かれたんだよね？
うん。一緒に付き合ってくれた
あ、まぁそーでしょね。
で？初めて会ってそれから何回目で契約したの？
一回。
えっ？一回？
親に相談してみようかな。と思わなかったの？
だって自分の事は自分で決めたいと思ったし、親に話してみても良いかな？と聞いてみたら
どーせ親に言ってもこの話は偏見もあるからやめておいた方がいいよ。って
聞く事の忍耐が限界値を超えそうだ。
事務所に行って、社員さんが居て
貴女の叶えたい事の為に人脈も必要だよね
この会社は新しいコミュニティが作れる上に
繋げることも出来るから。って言ってくれたんだ。
ディズニーランド行ったり、フェス開催したり
バーベキューしたり、その時の写真見せてもらって楽しそうだな。って思った
でさ？その投資だが為替だか知らないけどさ。それだけで稼ぐわけ？
友達を勧誘して。って話になったよね？それって結局、誰かを勧誘しないと儲からないって事なんだと思うけど？
初めはそんな話出なかったんだけど、お金払ってクーリングオフが過ぎた頃に
友達を紹介する事でお金が稼げる事も出来るからまず、友達に声かけてみて。って言われたんだ。
怪しいと思わなかったのか？
そんな簡単に稼げるとでも思ったの？
稼ぐ事は悪じゃないさ。だけどもさ
こんな話を本当に信じたの？
ありえない。本当にありえない。
娘の顔が強張り始めて
結局ママもそんな事言うんだね。偏見持ってるんでしょ？
やれる。やりたい。って思ったからお金払ったんだよ
もー。止められない。私のこの湧いて溢れる
この感情。情けない。本当に情けない
情けなくって涙が出てくるって。あばれはっちゃくのお父さんの気持ちが滲みるわ←昭和世代
サラ金に借りるって、しかもそんな大金どーするのよ。その大変さをわかってんの
なんでこんな簡単に騙されるのよ。騙された決定の話になってる。笑笑
あの決意は姿形もない。
なんとか説得して、一刻も早く辞めさせなきゃ
そればかりで娘の気持ちをこれ以上聞く余裕がなくなってしまった。
なんでそうやって決めつけるの？、これは自分で良いと思って、ちゃんと借りたお金も返せるって思ってしたんだよ。
ママが思ってる人達じゃないから
皆、良い人達だよ。私の夢を馬鹿にしないで聞いてくれたんだよ。嬉しかったんだよ。私の事を思ってくれてるんだよ
娘のやりたい事は歌手になりたいだった。高校卒業後、就職して、学校に行く為にお金を貯めて、それで行く。と言ってた。
目標金額が貯まったある時に、店が閉店する事になり、本店に行くか、はたまた地方の支店に行くか？と選択もあったけど本人希望で退社する事にした．
私はそのお金でてっきり学校に行くんだと思って居たけど
学校に行かずとも他の道もあると思うから
って娘は言ってた。歌が歌うのが好きならば
色んなツールもあるし、友達もバンド組んでるし、楽しむ事はできるもんね。と言ってたよなぁー。
反対した覚えはない。馬鹿にした覚えも全くない。けど
私が覚えていないだけでもしれない。
その借金出来るなら、そのお金で一人暮らしの準備だって出来るよね？
貴女の楽しむ為のことにも使えるわけよね？
なんで、そんな事に注ぎ込んだのよ？
情けない。の次は虚しい、悲しいの感情が湧いてくる。
そして、これが洗脳って事なんだろうか？
親よりもその人たちを信用している。
私の放った言葉が全く届いていないばかりか跳ね返ってくる。
急に寂しさも追加された。
信仰宗教に出家した子供たちを奪回すべく
あのテレビで観ていたあのシーンが過ぎた。親御さん達はこんな気持ちだったんだなぁ。
なんだか心底寂しくなって来た。
外が白白と明け始める。娘は今日も仕事。寝るから。と言って自分の部屋に行った
私は、アドレナリンが出まくったからなのか全く眠くない上にギンギンになってる。
あぁーーー。どーしたものか。
この先どーなるのか。
そればっかり。
きっと何か道はあるはず。と思えるにはもう少し時間が必要だった
思い詰めると、思い込むと次から次と悪い方向にしか目がむかなくなる。どっぷり不幸のどん底気分を味わい、おいおいと泣き崩れる。
外に出て朝日が登ってくるのをなんとなく眺めていたら
あれ？消費者センターってなんだっけ？と
ふと思ったのである。
人生初の消費者センター。どんな所なんだろうか。
続く