悪徳マルチに挑んだ親子の話⑩
弁護士との面談が次の日に控えた朝。
今日で仕事辞める事にした。本業の方ね
それで?
次の仕事はまだ決まってないけど、バイトしながら就職先を見つけようと思う。
帰りは遅くなると思うから、夕飯はいらない。と出勤して行った。
何も言うまい。
言わなくってもわかってるだろう。
いってらっしゃいと送り出した。
夜になり、雨風が強くってなかなか寝付けずにいた。いや、明日の弁護士の面談に思いを馳せていたからでは?もなくは無いがなんか眠れない。
時計に目をやると、午前3時を回っている
娘はまだ帰宅していない様子
えっ?朝早くに家を出る事は伝えてあるのに
まさかね。
なんだか気になり出したら益々眠れない
気がつきゃ夜も明け、朝になりましたけど?
一体、娘はどーした?
旦那と次女を送り出すも、まだ帰ってこない。
あぁーーー。なんなのよ。
まさかね。いや、そんな事ないわよね。
青年からもまだ連絡が来てる様だしなぁ
弁護士と面談することになった。なんて報告したのだろうか?
えっ?で?なに?誘拐?←本気
それとも、何もかも嫌になって、、、自ら、、
己の心臓の音が聞こえて来そうだ。
娘の携帯に立て続けに電話。切ってはかけて
を繰り返す。
出る気配が全くない。
私が躍起になってどーするよ。そーよ。どーにでもなったらいいわよ。と思いながらも
出発する予定の時間が迫る中
事務所に断りの電話しなきゃだよね。
許してくれるかな。あぁーーー。会いたかったな。めくるめく妄想を駆使して弁護士の姿を思い浮かべる。あぁ。残念
それと同時に、捜索願いってどのタイミングで出すもんなのかしら?と検索。
行方不明になってから24時間以内が良いらしい。成人した人でも、自ら家出をした可能性があるとしても
何か事件に巻き込まれた可能性もあるので躊躇わずに警察へ。と書いてある。
今度は警察に行くのかしら?とぼんやり眺めていたら。
ピコーン。とLINEが入った。
ごめんなさい。と娘から。
なに?どこにいるのよ。あぁ。生きてるとりあえず生きてる。
今から帰る。出発するまでには家に着くから。
もーーーーーー。私を殺す気かっ!
ダチョウ倶楽部上島竜兵の降臨である
なにやってたんだ?とか事情を聞く暇はないのでバタバタと支度してともかく家を出た。
睡眠不足の浮腫んだ顔で弁護士に会うことになるとは、しかし、この時期マスク着用が必至なのが幸いである。
1日のエネルギーを半分使い果たした感じであるが、ここからが本番。
事務所のあるビルに着き、エレベーターに乗り込む。
目の前に〇〇法律事務所の案内を見つけ
いざっ。
あなたから先にどーぞ。
いや、ママが先に入ってよ。
なに言ってるのよ、そもそもあなたの用件で来てるんだから、あなたが先に入りなさいよ。
ヤダ。ママが、いや、お前が、、
を、一通りやった後、扉を開ける。←なにやってるだろうか?
お待ちしてました。こちらへどーぞと会議室に通される。
法律関係の本がびっしりと並んである本棚を横目に中へ。
おっー。いよいよね。期待と期待で高まる
期待しかない。笑
会議室には二人の弁護士が待っていてくれた。
一礼して、席に座る。
えっ? あっ?
こちらが相談者の方ですか?と娘を指す。
えっ?そーですけど。(あら。私が娘に見えたのかしら?) いや違う。
娘の名前はよく男性と間違われる名前なので
てっきり息子だと思っていた様だ。
失礼しました。と笑う弁護士。
自己紹介しますね。担当弁護士の〇〇です
それと、今日はもう一人の先生も一緒に相談を受けさせてもらいます。
弁護士もマスク着用なので、鼻から上の様子しか見えないのが残念であるけれど
妻夫木聡風の目元が優しい印象。
メガネをかけている。おしゃれなメガネがステキだ。
もうお一方は私よりも年上であろう感じで、話し方がとても丁寧に声が優しい。
でわ、時系列を追って質問させて下さいね。
誰から、いつ、どんな感じで連絡が来たのか?
初めにあった日はいつなのか?
その時の会話、あった場所、居合わせた人数
細かく、聞いて行く。
名前や年齢。どこに住んでるのか?とか
この会社の矛盾してる所や最大の問題点を話して行き、一つ一つ娘に確認しながら、娘に聴取しながら、メモを取って行く。
うわー。テレビで見たことあるシーンだわ〜。と、エキストラ気分な母
ですけどね。
焦ったくなるんです。口を挟みたくなるのよ。
そんな説明じゃ弁護士さんはわからないでしょーが!!とか
私に話してくれた時はこんな事言ってたよね?とか、❌印のマスクを私にプリーズ
いかん。消費者センターと同じく席を外す事にした。
あの時と明らかに違うのは
センチメンタルになるどころか、不謹慎ながらも、電話の声の印象と違うな〜。から始まって
指輪してたな。そりゃーそーよね。モテるわよ。あの感じ。
イントネーションが西の人っぽいな。
こっちに住んで長いのかしら?脳内のおしゃべりが止まらない。
もっと他に考える事があるだろうに。
そろそろ、終わるかしら?のタイミングで戻って見たけど、まだまだ続く勢いだ。
何度も同じ質問をしながら、娘のその時の気持ちを聞いている。
その時である
学生時代の友達から久しぶりに連絡が来たんでしたよね?
その時、あなたが初めに感じた率直な気持ちを聞かせて下さい。
はい。その子とは一年と三年の時が同じクラスで、正直言うとクラスで嫌われていた子でした。特に仲良くもなく、悪くもなく、あいさつをかわす程度の仲でした。。三年の時にクラスで卒業式に歌を披露する事になり、ソロのパートは誰にするか?ってクラスで決める時があって。
おっ。その話始めて聞いたけど?それで?
弁護士も、興味深げに聞き入っている。
それで、自分にやらせて欲しい。と立候補したんです。
えっーーーーーーー。と思わず声がでた母
人見知りで、引っ込み思案な子だと思っていたのよ。娘の知らない一面を知った。
で?
でも、先生がもっと声量のある人が良い。と言ってて、違う子がやる事になったんです。
そんな時に、その子があなたの歌声好きだよ。
って声かけてくれて。とっても嬉しかったんです。今、仲良くしてる友達から特に仲良くもなかったのに連絡してくるなんてヤバイ話だからやめときな。って言ってくれてたんですけど
私には、その時の嬉しかった気持ちもあって、会ってもいないのに決めつけるのは嫌だな。と思ったんです。
あぁー。と声を出した妻夫木聡。いや弁護士さん。
私は涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。
そーでしたか。その子とは何回位会いましたか?
その子がここの会社に入った経緯を聞きましたか?
はい。何回あったかなぁー。覚えてないんですけど
その子は自分を変えたい。って言ってました。
なるほど。自分を変えたい。とは?具体的な話をしましたか?
おっー。これがどんな方向に向かうのか?
興味が湧いてくる。聞き入る私。
そして、貴女は友達を勧誘しましたか?
それは何人ですか?の質問になった。
正確には二人なんですけど、、、
けど?
もう一人の友達にもこの話をしたら
お前は騙されてる!!そんな甘い話がある訳ない。その77万円取り返してやるから!!って
会社の人と一緒に友達に説明していた時に乗り込んで来た友達がいました。
おおおおおーーー。良いお友達がいますね。
で、その友達はこの会社の人と話したんですか?
はい。こんな話で人を惑わすのはやめろ。って
言ってくれて、でもこの会社の人は一つ一つ説明してて、なんかそこで私も納得してしまったのもあります。説明が上手かったんですよね。
なんて事。ママはその友達を抱きしめたい気持ちです!!
そーですよね。良いお友達をお持ちですねー。
と笑いが溢れる会議室。
その時
あっ。元カレだからね?
イスからずり落ちそうになった。いや、あの、そー?
複雑な気持ちになる。母
元カレなんですかぁ?と弁護士も感慨深けだ。
でも、その人はなんでこの話が怪しいと思ったんでしょうかね?
周りの友達からこの様な話で相談を受けたりしてたらしいんです。
それで、絶対お前は騙されてる!!って何度も言われました。笑笑
笑ってる場合じゃない。と娘の後頭部に平手打ちを喰らわしてやった。
そこからまだまだ話が続き、一通り聴取が終わるのかと思った時
娘さんから何か話したい事や聞きたい事ありますか?って。
黙る娘。おいっ。大事な話を忘れてる
一番気になってた話があるだろう!!
と、娘のイスを二回蹴った。
えっ?と私の顔を見る娘
なんだっけ?と私に言うもんで、黙っていられない、既に黙っていなかったけど、勝手に口から滑り出す。
この一連の話を聞いて分かると思うんですけど脅されてお金を借りたわけじゃない。自分の意思で借りて払ったんですよね。
それなのに、上手くいかなかったからと言って
今更、訴える。って人として最低な事だと思う。と、娘が言ってるんです。
やっぱり、でしゃばる母親なのだな。お前は。
その話を聞いていた弁護士の顔つきが変わった
真剣な顔つき、いや、今までも真剣に聞いてくれてたけど、更に厳しい顔つきになった気がした。
なに、私、怒られるの?一瞬不安になった時
弁護士は話始めてくれた。
続く。