【マンガ】「アオアシ」感想 "考えろ。人間は考える葦である。"を教えてくれるサッカーマンガ
アオアシ 28巻 (2022年7月現在)
小林 有吾
ビッグコミックスピリッツ (小学館)
2015年〜 連載中
「アオアシ」というサッカーアニメがとても面白いです。2022年春アニメとして始まり、現在2クール目です。
先週はアシトがフォワードでの戦力外通告という挫折から新しい扉を開けようとするところで、これから首振り技術を獲得することによって自分の視野を広げていくのがとても楽しみな時期です。
アオアシは苦しい苦しい展開が続くけれども面白い
1年くらい前にマンガ好きの美容師さんに勧められて読みました。
マンガでも面白かったのですが、数々の挫折と克服、そして同期や先輩と少しずつ心を通わせる過程が丁寧に丁寧にアニメ化されています。
私は当時「ブルーロック」という異能力サッカーマンガ(「黒子のバスケ」を思わせる何かがあります)を読んでいた話をしていたところで、サッカーマンガとして「アオアシ」がどう面白いのかを聞きました。
高校サッカーではなく、プロサッカーチームのユースが舞台なので珍しい。ユース経験者への取材をしっかりしているから生活費や学費などのサッカー以外の生活事情もわかる。
サッカーの技術が理論や感覚としてわかりやすく学べる。サッカーボールを受けるトラップ技術やロングパス技術など、基本的な技術の説明が的を得ていて非常にわかりやすい。(その美容師さんは高校サッカー経験者で、現在小学生サッカーのコーチをやっている)
2については、出版社側も"読めばサッカーが上手くなる"というキャッチコピーで販売促進をしています。
挫折ばかりの主人公 青井葦人
アシトは中学生時代、愛媛県予選でベスト8のチームのフォワードとして活躍していました。主人公の経歴としては地味な方だと思います。
偶然試合を見た福田監督に才能を見出され、セレクションという入団テストを受けるところから始まります。なお福田監督はプロサッカークラブでユースチームの監督をしている人で、その時はたまたま里帰りで実家のある愛媛県に帰省していました。
そこからのアシトは、様々な問題と戦って挫折を繰り返します。サッカーマンガとして想像するよりも泥臭く不器用な物語だと思います。
プロサッカー選手になる覚悟
家庭の金銭的な事情
ジュニアユース出身者同期、先輩とのサッカー技術の差
ジュニアユース出身者同期との軋轢
自身のサッカー観の狭さ
戦力外通告とポジション変更
先輩との不和
身体能力という埋めることができない壁
同世代の日本代表選手
"自分でつかんだ答えなら、一生忘れない"
この言葉は福田監督の言葉です(アオアシ第38話など)。
何にでも通じることと思いますが、自分で思い悩んだ末に獲得した技術や知識は確実に血となり肉となり明日の自分のために役立ちます。今第一線にいる人は、それをひとつひとつ積み重ねてきた人たちなのだと思います。
福田監督は解答例を安易に提示せず、自分の力で解決するように促します。そして、この言葉は選手への強い信頼に基づいています。あいつならきっと乗り越えられるという確信。
アオアシは選手だけでなく、見守る大人達も魅力的です。
エスペリオンユースの福田監督、伊達監督。武蔵野蹴球団の佐竹監督。船橋学園の夏目監督。青森青蘭の成宮監督。選手時代の経験に基づく個性的な指導方針と自分を見出し引き上げてくれた監督と選手との師弟関係には、"たかがサッカー"ながら信念や信仰、人生をかけたイデオロギーの戦いなのかもしれません。
アシト(青井葦人)は「黒子のバスケ」で言うと誠凛高校の先輩である伊月俊が持つ"鷹の目(イーグル・アイ)"の能力を持っています。空間把握能力と瞬間記憶に優れていて、鷹が空の上から俯瞰するようにコート全体を見渡すことができるので、コート全体を使ったサッカー戦術を繰り出すことができます。
しかし、他は並レベルかそれ以下で才能を活かせていませんし、物語が進んでも技術が飛躍的に成長する訳ではありません。
「アオアシ」の魅力は、問題に対する解決手段・練習方法に納得感があることと、その地道な基礎練習に協力する周囲の人物の援助によって、主人公のアシトが成長するドラマにあると思います。その過程でアシト自身の家族や友人達への想い、大好きなサッカーへ取り組む姿勢がわかります。アシトはずっと困難を克服するための練習をしてもがいている、地道で丁寧な物語です。
フォワードとしてどう点を取るのかばかり考えていた自身のサッカー観は、周囲の人物によって視野がどう広がっていくのか。
部活ものでは同期や先輩との関係性が魅力となる作品は多いですが「アオアシ」もその周辺人物と心の通わせるところが面白いポイントだと思います。
同期の大友・黒田、先輩の中村平との関係が個人的にとても好きです。この場面がアニメでどう描かれるのか。これも楽しみのひとつです。
#マンガ #感想 #アオアシ