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【小説】転生したら、好かれるモブになりました。〈第17話〉

二度目の別れ

両親の秘密、光の出生の訳を聞いて、しゃがみ込んで落ち込む光。静流は、光の背中を優しく擦っていた。

「光、落ち着いたか?」

「高橋くん………。あなたは、どうなの?私のとは違って、あなたのお母さんは、きっとあなたの事を心配してるんじゃないの?」

ウルズ女神は、空間からピコハンマーを取り出し、静流の頭をピコッ!ピコッ!と殴った。

「いって!………て痛くない。」頭を擦る静流。

「この親不孝者!!ヴェルザンディ!この子の母親の姿、泉に映しなさい!」

ヴェルザンディ女神は、泉に手を触れると、病院の映像が泉に映った。

静流は、ベッドの上で酸素マスクをつけている。意識不明の重体のまま、昏睡状態に陥っていた。

「静流!静流!どうしてこんな事に!!」母親が父親に抱きしめられて泣いている。
長男の海斗、次男の大河がそばで立ち尽くしていた。
医者は焦って家族に説明をしてるようだ。
「こんな事は初めてのことです。睡眠導入薬だけでこんな風なることはめったにありません。」

「最近、お友達が亡くなってからぼーっとするようになって心配だったんです。眠れない日が続いてたようで……お願いですから何とか助けてください!」
母親は医者に頭を下げた。そして、父も兄弟も先生に頭を下げた。

光はホッとした。
「よかった!まだ死んでなかったみたい。きっと戻れるよ、高橋くん。」

「そりゃそうよ、静流の足元見てご覧なさい。薄く輝く銀の糸が見える?あれが、運命の糸よ。光にはそれがない。」

「「あっ本当だ!!」」
光と静流は同時に目を合わせた。

(もしかして………)
スクルド女神は、静流の運命の糸見るなり、空間から、ニョキッと眼鏡を取り出した。スクルドの眼鏡は見えない糸まで見えるのだ。

銀の糸にほんのり赤い糸が絡まってる。赤い糸は光の方へ繋がっていた。
(ははん、それで光を追っかけてたのか…)

スクルド女神は少し離れてから、空中ディスプレイをパッと出し、指で縦スクロールしたり、拡大したりしている。
しばらくそれをガン見して、頭をうんうん頷いて1人で盛り上がっていた。

ヴェルザンディ女神が、気になって声を掛ける。
「どうしたの?スクルド。」
すると、スクルド女神はニヤリと笑って、皆のもとへ駆け寄った。

静流は、静かに立ち上がり泉に背を向けた。
「嫌だ。帰りたくない。」
「え?」
「戻らない。お母さん、お父さん、兄さんたちには悪いけど。」
「何わがまま言ってるの?優しい家族じゃない。何が不満なの?こんな素敵な家族を泣かせる気?それこそ親不孝よ。」ウルズ女神が憤慨する。
「戻ってしまったら、もう光に会えなくなる」
「・・・」

ヴェルザンディ女神が間に入って話を止める。
「静流、光は別の星に転生する予定なの。この地球ではなくてね。そして赤ちゃんからまたスタートするの。あなたは光が天国に行くと思っている様だけど違うのよ。」

静流は、愕然とし肩を落とした。
「ハハッ、光とは結局離れてしまうんだ……。」
拳を握り、唇を噛んだ。

ヴェルザンディ女神は、泉に映像を流した。
それは、いくつもの地球に似た星の映像だった。
「地球とほとんど同じ条件で、
➀空気があること
②豊かな大地
③水が豊富なこと
④太陽のような恒星と星が適度な距離にあり、さらに星が恒星の周りを公転してること。
⑤その星が自転してること
⑥近くに月のような衛星があること。
⑦生命があり、異種族のパワーバランスが保たれてること

このような条件のある星は極めて少ないわ。特に星の平和が保たれているのは、ここにあるだけで13個しかないの。2000億兆個の星のうちの13個は、天上界では、奇跡の13星と言われてるわ。その13の星を私達、天上界が管理しているの。」

「光はその9番目の星へ行くの。同じ銀河系で比較的地球と近い方なのよ。大体300光年ぐらいかな?」

ウルズ女神は、手のひらから、雪の結晶をフワリと吹き出した。
「わぁ〜凄い!!」「魔法だ!!!」

「静流、そうよ魔法よ。こんな風に、そのほとんどの星が魔法を主軸とした世界が多いわね。魔法がなくてもちゃんと維持しているのは地球ぐらいかしら。それだけ地球はすごいってことなの。」

スクルド女神が近づいてきた。
「それより、まだ地球に戻れるんだから、早く家族の所に行ってあげなさい。それに、辛抱強く待てばあんたの未来にお楽しみがやってくるから。心配しないで!」

「お楽しみ?何だそれ?」訝しげに静流はスクルド女神を見つめた。

すると、スクルド女神は、静流に近づきコソコソ話をした。
しばらく考え込んだが、静流は決心したように、スクルド女神に頷いた。

「………俺、家に帰るよ。それしかないもんな。」

「その泉に飛び込めばあなたの本体に戻れるわ。」
するとヴェルザンディ女神は、泉に手をかざし、病院の中の映像を映し出した。

両親、兄弟、看護婦さん、お医者さん、みんなで静流の周りを取り囲んでいた。
ベッドサイドモニターの脈の音と、酸素マスクの音が深刻な雰囲気を漂わせていた。

静流は少し俯いたが、光の方へ歩み寄った。そして、光をぎゅっと固く抱擁した。
光の体温が急に上がった気がした。

「あっ、高橋くん……。」
「俺、強くなるから…。光、また変な男に捕まるなよ!」

そして、泉の方へ助走つけると、思いっきり派手にダイブした。
ドボーーンッ!!!

光は泉の水面に駆け寄った。光は心を込めて感謝した。
「ありがとう!静流くん!来てくれて嬉しかった。」

暫くして、泉には静流がベッドの上で目を覚ました映像が映っていた。家族みんなでわんわん泣いて静流をいつまでも抱きしめていた。









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