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【小説】転生したら、好かれるモブになりました。〈第7話〉

告白

 私は、人に対して「好き」という感情があまりなかった。なのに、中学1年でそれを体験するなんて思っても見なかった。
(しかも、川島先輩が私のことを知るとどんどん好きになってくるって、もう告白じゃん!!)

川島先輩に渡すドーナツを持って放課後、3年3組を訪ねに行った。『放課後、オレの教室で待ってる』と言われ頭の中で、もう何回も再生されている。

教室の前の廊下に立つと、川島先輩はそこにいた。
「先輩!あの…お邪魔します…」と言って教室に入ると、川島先輩は教壇のテーブルに腰を掛けた。

「あっ!オレの好きなドーナツじゃん!本当に作ってくれたんだね。ありがとう!」
ドーナツを手渡すと、とびきりの笑顔を見せてくれた。

(あっ!!好きかもしれない。)
光はモジモジしながら顔を赤らめ、頷いた。

「じゃあ、ドーナツありがとう!でも、まずは昨日の返事を聞いてからでもいいかな?」
真剣な川島の表情におもわず手に拳を作る。

「あの、先輩は私にとってとても大切な人です。なので、あのお返事、お受けしてもいいですか?」
勇気を振り絞る光。

「じゃあ、君の口から好きかどうか聞かせてよ。……俺のこと好き?」
光の手に触れ、近寄る川島。

「・・・好きです」
顔から火が出そうなぐらい、体温が急に上がるのを感じた。(光!良くやった!)

川島は、天を仰ぎ、ガッツポーズをした!!
「イェーイ!!俺の勝ちだ!!!あぁ終わった〜」

川島は、ベランダに大声をかける。
「おい!約束は約束だぞ!!賭けは俺の勝ちだ!」

「・・・・・。」
光は、川島先輩が何を言ってるのか分からなかった。(えっ?賭けって何?)

すると、ベランダから、田中 愛と、池村&山下、それに高橋 静流も出てきた。

「しょうがないわね〜賭けに勝ったんだから、ちゃんと例のものはあげるね、はい涼ちゃん」
田中 愛は封筒を川島に手渡した。

「はっ!これで大山翔平のプレミアム・チケットが俺のものに!!マジでこれ欲しかったんだよね〜。これ!」
光は、混乱していた。「どういうこと?」

「ごめんね、昨日言ったあれ!全部嘘なんだ〜。ドッキリだよ。こいつらがさ、お前のことをほれさせたら、チケットくれるって言うもんだから、オレ頑張ったんだぜ!」
川島は、テンション上げまくっていて、こちらの感情には目もくれない。

「私のこと、気になるとか、好きになりそうとか、アレは全部???」

「はっ!オレにだって選ぶ権利ぐらいあるんだぜ。お前みたいな女、好きになるわけがないだろ?考えてもわかることじゃん。」
川島が指で光の頭を突いた。
「それに、光ちゃんがあの暴力事件を先生にバラさなくて良かった〜〜。ハラハラしたぜ!」

田中 愛は話に割り込んできた。

「あんたなんか、好きになる人間なんかいないじゃない。何、浮かれてんの?バカじゃない。あの時、涼ちゃんが助けてくれたアレ、全部芝居だから。あなたに暴力振るったのも、罠を仕掛けるため。上手く引っかかってくれて、こちらは面白かったけどね。」

光は、高橋の顔を見た。高橋の表情は曇っていた。

田中は、光の頭を小突いた。
「生意気に恋すんなよ。キモいわ。(笑)」
池内と山下が更に追い詰める。

「セーの!泣ーけ!泣ーけ!泣ーけ!泣ーけ!」
田中、池村、山下は手拍子でコールする。手拍子が教室内に響き渡る。心の奥までも…………。

光の耳元で田中が囁く
『静流がさ、精神的に追い詰められてるあんたの泣いてる顔が見たいんだって。』

「えっ?………うそ。」

呆然と立ち尽くす光。なにか、冷たいものが体中から落ちてきて、震えが止まらなくなってきた。

諦めた目から涙がこぼれ落ちそうになった。

「泣いてる顔が、見たいだけか……」

(そうだよね……何勘違いしたんだろう……恥ずかしい。何を浮かれていたんだろう。理解してくれる人なんて一生いないはずなのに。あぁ、どこ行っても1人なのに……。恥ずかしい!!あぁ、ここから逃げたい!今すぐこの場から!!!)

突然、光は教室を飛び出し、走り出した!
「おい!ちょっと、待てよ!!」
高橋が後を追った。





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