水たまりの世界 (ショート)
(約500字)
雨の後、ふと水たまりを覗いた。
水たまりの中の世界を見た。
水たまりも条件がある。土壌が固くないと
作れない。
いずれ、地面に浸透するか、蒸発するので
儚いね。
水たまり眺めてるほうは、ゆったりなのだが
水たまりの中は、せっかち。
太陽の熱射で蒸発して、段々世界も狭まってくる。
水たまりの世界の中に一瞬入ってみる。
乾燥に強い生き物が話しかけてきた。
ミジンコ、カブトエビ、ホウネンエビ。
あなたは、住めないから、早く出てと
迷惑そうに言われた。
そうだね、早々水たまりの世界から出よう。
出たらこの世で、「水も滴るいい女」になった。
色艶の良い女となった。
ミジンコは栄養価が高い、ミジンコを
親魚や稚魚にエサとして与えられる。
ミジンコが水たまりに入った私に、早く出てと
迷惑そうに言われたのは、栄養価を少し
吸い取ったからだろう。
水たまりが消える頃、わたしは、栄養価が抜けて乾燥した女になった。
でも乾燥した女は、長持ちするから許してね。
そして、また静かで小さな水たまりの中の世界に無性にもどりたくなる。
期限付きの静寂を経て…
また地上に出てくる。
そして、水が滴るうちに、また新しい恋をする。
FIN
サブリナ