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冬の香り



#青ブラ文学部
#冬の香り
山根あきらさんの企画に参加させて頂きます。


             (本文約650字)




冬の香り



「散歩道」と言う広い公園で花が咲いていた。スマホは敢えて持っていかなかった。


「ここだよ」と優しく呼ばれた。
満面の山茶花だった。


濃いピンクの花びらが咲き誇り周りは落ちた花びらの模様が立ち姿を際立たせる。
でもいつもの山茶花と少し違うようにも見える、椿かと思った。でも椿は潔く花ごと落ちる。




ひとつの花を知るのに記憶する。
他の人がその花を見たら、全く違う風に記憶するのかも知れない。


次の日雨だった。


翌日またその花を見に行った。
スマホは持って行かなかった。


一昨日見た印象と少し違う。
鮮やかなピンク色で薔薇のようだった。
雨で花びらが散りピンクのグラデーション。
香りを嗅いでみた。


山茶花だ。
椿は香りがしない。





香りは山茶花のもの。

風が吹いた。
冷たい空気と草木と混ざり合うような密かな山茶花の香り。
花びらが舞い、散り、地面にピンクのグラデーション。地面と落ちた花びらの濡れた香りが加わり冬の香り



五感を研ぎ澄まし冬の香りを吸い込んだ。





花そのものの名前はもうどうでも良くなってきて五感だけが記憶に残る。



四季の香りは各々違う。空気、花、草木、地面から放たれ織りなすハーモニー。


香りはスマホには残らない。
表現するには言葉か文章で表現するしかない
私は自分が感じたことを表現できてきたのだろうか?





今日も「散歩道」に来た。

あなたは誰?
わたしに何を感じさせてくれるの?
今日はスマホの解禁日。


         (完)







    山根あきらさんの公募です

    よろしくお願いいたします。



                 サブリナ