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星は知ってるから 3ー1


手袋(ショート)      (1080文字)


初冬の夕暮れ、足早に帰途をいそぐ。
買い物をして帰ったら、簡単な夕食用意して
朝、昼たくさん食べてるから、夕は簡素なもので大丈夫。

さあ、塾の迎えに行かなきゃ。また車に乗り込む。今日は何時に寝れるのだろう。

迎えから帰ったら、洗濯しながら、今日はアイロンも確か必要だったな。

塾帰りの待ち時間にそんな事ばかり考えてる。




行き慣れた小さな公園の近くの塾。
車から降りて、薄あかりの外灯の中ベンチに座った。
冷ややかな風、鉄棒の匂い。ブランコにしばらく乗ってみた。こんなに低かったっけ。

近くの枝葉でけんけんぱの○印書いてみる。
誰もいない公園で、小石を投げてみるよ。
あの○に入れ、ハズレ〜。


今、待ってるあの子と自分が遊んでた事がリンクするね。




だれかの片方だけの手袋の忘れもの。

小さく名前が書いてある。

(ママ)と書いてある。
そっと、元の位置にもどす。
パパからかママへのプレゼントなのかな。
良くみたら、手作り?色褪せてるけど、水色で縁がピンク。

水飲み場で、もう片方の手袋を見つけた。

手洗いで落としたのかな?

色々考えてたら、車が一台止まった。
一目散に小学生ぐらいの男の子が走ってきた。

「あったね!良かったね」と手袋を手にして
叫んでる。後から父親らしき人も走ってきた。






父親が話しだす…
「この公園には、良く来てたんです。この子と
妻と。昨年、病で妻が亡くなりまして、
手袋は、妻の形見で、この子の宝物なんです。今日見当たらなくて、この公園だろうと探しにきて、見つかって良かったです。」


そう言うと、会釈して車に戻って行った。


気のせいか、少し周囲が明るくなった。
外灯の輝度がました?
雲が晴れて、星が一層きらめきいてるの?
それとも、潤んだ瞳のせい?




「さあ〜うちの子も、もう出てくるだろう」

何が待ってるのだろうね。これから先…

公園で遊んだ事忘れないね。
キラキラしてた、周りも。
あんなに大きく思えた公園は、こんなに小さくて。

君をこの小さな公園から、もっと大きな公園に。
そして、大きな世界を見せてあげるよ。

自分の手袋をベンチにひとつ置いた。
次、迎えに来た時あるかな?

遊んでくれてありがとう…
これから先は、わたし、ひとりで遊ばなきゃね。

小さく見える公園は、大きな思い出で溢れている。無数の星が「それでいいんだよ」と
優しくきらめいている。

塾からたくさん子どもが出てきた。星の数ほど。
「帰ろうか。早くご飯食べて、お風呂にしなきゃあ。」

手袋、来週あったらいいな。



          FIN  


続いていきます。ラスト3話で手袋の行方がわかります。お時間ありましたら、お付き合い頂ければ幸いです。


            ※フィクションです




                 サブリナ