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星は流れた    3ー3



ちぐはぐな手袋 (ショート)(1270文字)


ジュリは、朝が起きるのがとにかく苦手。
都内の高校生だ。ひとりっ子。
両親は共働きで忙しい。その代わり自由だ。


スマホのアラーム、母親から声高く起こされて、朝食にお弁当持たされ、バス停まで走る走る。

コンビニ通り過ぎ、四角曲がってやっと公園抜けたら、大通り。
バス停までもう少し。向かい側から、バスが
向かってくるのが見える。間に合うか!
やっと乗れた。

毎朝こんな感じだ。





ジュリは帰宅部。今日は塾の日だ。

夜、塾が終わって。

「いい香り…」

金木犀の香りに誘われて、公園に入って、ベンチに座った。「まだ来てない」母親の迎えを待つ。
ん?色違い、種類違いの手袋が置いてある。

可愛いい色合いだけど、誰が使ってたかわからないし、なんで片方ずつ違う手袋置いてるんだろう。

不思議に思い、眺めてた。




公園の向かい側から、ご年配の女性が出てきた。
「あなた、朝いつも走ってるお嬢さんよね?」


見られてたんだ…恥ずいな。
「はい、いつも寝坊して」

「もし自転車持ってたら、うちの庭に置いていいから、毎朝走るの大変でしょう?」

ジュリは、言われて少し涙が出そうだった。

共働きの両親は、優しいが、とにかく忙しい。自分の事は自分でやると決めていた。
自転車で…なんて思った事も無かった。


「お願いします」と自然に頭を下げた。




女性がベンチの手袋を見た。
「洗っておいてあげるから、明日、自転車のカゴに入れといてあげる。色違いでも可愛いいわよ。」


自転車漕ぐのに手袋いるから…
案じてくれる見知らぬ女性の気持ちが
嬉しくて。また、泣きそうになった。

堪えて夜空を見上げた。

星が綺麗だった。

公園の駐車場のライトが光る
「お母さんだ!」




ジュリが公園から出ると、
通りすがりのお姉さんが、「ありがとう」
と微笑んでくれた。
なんだろう?でも感じがいい。
振り返ってお辞儀した。


星が流れた。



       「彗星だ!」 



      「ほうき星が見れた!」

「ほうき星」(彗星)の様に突然現れる優った人に私もなりたい。ジュリは心からそう思った。

車に乗ると、母親から「少し広い世界見れた?
」と笑って聞かれた。

「うん、見れたよ」「明日から自転車で行く話しも自分でお願いしてきた。」


ダッシュボードの上に片方の手袋。あれ
さっきのと似てるけど…。

「まっ!いいか」
「ほうき星見れた…!」




             FIN



        後書き

 紫金山アトラス彗星(2024.10.15前後〜
 2024.10.20前後まで肉眼で見える。

 紫金山展望台(中国)で2023/1月に確
 認されたがそのまま確認できず、南アフリ  
 カ小惑星地球衝突開放システム(アトラ
 ス)が再確認し、両方の名前を取って名付
 けた。


 夜空にぼんやり輝き、地球に近づくと
 ほうきの様に長い尾をひく彗星は
   「ほうき星」とも呼ばれる。


 今回なかなか揃わない手袋、なかなか確認
 できなかった(紫金山アトラス彗星)の話
 しで創作してみました。



※フィクションです。最後の写真はデジタルミュージアムのphotoです。



読んでくださった方、誠にありがとうございました。             サブリナ